第19節に行われたFC東京と川崎フロンターレの試合は"多摩川クラシコ"として親しまれるようになっているが、FC東京が首位に立ち、リーグ2連覇中の川崎Fが追いかける状況は試合前からかつてない大一番の緊迫感を生み出していた。
実際に試合の強度は高く、コンタクトプレーも激しいものとなったが、守備では前からプレッシャーをかけ続け、攻撃では幅広くパスをつなぎながら、FC東京のディフェンスを外してボールを運ぶ川崎Fが優位に試合を進める。前半20分にCKから小林悠がJ1通算100得点目という記念すべきゴールをあげると、後半には川崎Fらしい鮮やかなコンビネーションから齋藤学が追加点。さらにカウンターの流れからセカンドボールを阿部浩之が狙いすましたミドルシュートで試合を決定づけた。
■先制点、追加点につながった田中碧のプレー
(C)J.LEAGUE
鬼木達監督が"ターニングポイント"と位置付けていた試合でチームとして首位のライバルを凌駕したが、その生命線となるボランチのポジションで攻守に渡る存在感を見せたのが20歳のMF田中碧だ。
連動した守備で相手の起点を封じるだけでなく、守備から攻撃への繋ぎ役としても重要な役割を担い、最終ラインまで下がって左右のサイドバックを押し上げたかと思えば、FC東京が築くブロックの間に入り、そこからのぞいてパスを引き出す。さらにマークを引き付けてスペースを生み出すなど、効果的なポジショニングとシンプルなボールタッチを繰り返した。
この試合に向けて準備をしていたというCKから見事な先制ゴールが決まり、試合が動いたわけだが、このCKにつながる流れで大きな仕事をしたのが田中だった。
先制点のCKにつながるシーンでは、スローインからペナルティエリアの横でボールを受けたナ・サンホに田中が襲いかかり、激しいデュエルからボールを奪ってロングカウンターにつなげた。最後は齋藤がクロスを上げようとしたところを室屋成にカットされる形で得たCKだった。
さらに、その齋藤が決めた2点目も自陣からのスローインにプレッシャーをかけて田中が相手のボールロストを誘い、そこから素早く正確にパスをつないだことで生まれたゴールだ。
前回紹介した横浜F・マリノスの喜田拓也にも通じる部分だが、田中もどちらかと言うとゴールシーンの主役になるポジションの選手ではない。これまでリーグ戦は12試合に出場、そのうち11試合で先発しているが、アシストは第3節の横浜FM戦で記録したのみで、シュートも8本。1試合に1本も打たない結果となっている。
しかし、ボールを奪ってのファーストパスやボールを引き出す動き、周囲に時間とスペースを与える仕事など、守備と組み立てのタスクをハイレベルにこなして2列目から前のタレントたちを生かしている。
■スケールの大きなプレーが川崎Fを支える
(C)J.LEAGUE
川崎市で生まれ育ち、小学校3年生からU-12、U-15、U-18とフロンターレ一筋の田中は「止める・蹴る」の基本技術を磨き、U-18ではチームの10番を背負った。日本代表としては大会中に16歳の誕生日を迎えたAFC U-16選手権で堂安律(現・フローニンゲン)、冨安健洋(現・ボローニャ)らとともに戦ったが、準々決勝で韓国に0-2で敗れ、世界への扉は閉ざされてしまった。
そこから当時の仲間が上のカテゴリーでも日の丸を背負い、U-20ワールドカップで世界を経験したが、田中にチャンスは訪れなかった。しかし、川崎Fでトップ昇格を勝ち取り、昨年の9月にJ1デビューを果たすと、主力の怪我などで苦しむチーム事情の中で、着実に経験を積み、信頼を高めてきた。田中の持ち味は「止める・蹴る」のスキルに加えて、1つ1つのプレーに力強さを出せることだ。
それはアンダーカテゴリーの日本代表として久々の招集となったトゥーロン国際トーナメントでも発揮された。まずボールを失わず、相手の守備を外してフリーの味方に展開する。必要なら前に持ち上がり、高い位置でチャンスの起点となる。守備では周囲と良い距離感を作りながら、機を見てボールを奪う。
南フランスにあるトゥーロンは地中海のコートダジュール(碧い海岸)に面する街だが、名前の通り碧い海のようにスケールの大きなプレーは海外メディアをも驚かせた。最後はブラジルに敗れて優勝はかなわなかったが、準優勝の立役者として大会ベストイレブン、優秀選手の3位に選ばれた。しかし、そうした評価よりも国際舞台で得た手応えと課題が帰国後のプレーにも大きな影響を与えているようだ。
「普段チームでやっていることが世界に対しても通用した部分が多かったのは間違いないです。ただ、普段やっているものだけじゃ全く手も足も出なかった部分もあったので。個人としても強さや速さはまだまだ足りないと感じた」
守備ではボールを奪い切り、攻撃ではいかなるプレーも意図を持ってやり切る。そうした1つ1つのプレーにこだわる意識は現在のプレーにもつながっているようだ。ただし、さらなるスケールアップを目指すならば、チャンスと見ればより積極的にボールを運んでゴールに迫るようなプレーを増やして行くことが必要になってくるかもしれない。
川崎Fの強みであるコンビネーションによる崩しを生命線として支えながら、さらなる強さを加えていけるか。それが大島僚太や守田英正といった日本代表クラスの選手を擁する川崎Fの中盤でより主軸としての重要性を高めて行くこと、そしてタイトル獲得の立役者となって行くことにもつながって行きそうだ。
取材・文=河治良幸
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