高卒1、2年目の若手が公式戦のピッチに立てず、試合勘を鈍らせてしまうケースは多々ある。90分間フル出場するチャンスはごく限られたプレーヤーのみで、ゲーム体力は必然的に失われていく。しかし、ピッチに立てば、選手は結果を残さなければならない。U-20日本代表を率いる内山篤監督はその難しさを抱えながら、チーム結成当初から強化を図ってきた。そして、集大成となるU-20ワールドカップが5月20日に韓国で幕を開ける。誰を残し、誰を落すのか。篩に掛ける作業は最終局面を迎えており、17日から2日間に渡って行われた千葉合宿は最後の選考会だった。

今回は中山雄太(柏レイソル)や冨安健洋(アビスパ福岡)など、所属チームでレギュラーを掴んでいる選手は未招集。出場機会を得られていない選手にとっては、試合勘を取り戻せるかがカギだった。その思惑は内山監督の言葉からも見て取れる。
「チーム事情はあるが、一番不安なのはゲームを90分やっていないこと。本大会は3人しか交代できず、中2日の連戦なので、選ばれた人間がある程度90分ゲームができる状態で入りたいと思っている」
18日に実施されたジェフユナイテッド千葉との練習試合(30分×3本)の注目ポイントもまさにそこだった。
その中で強烈なデモンストレーションを見せたのが、ジュビロ磐田で出場機会が少ないFW小川航基だ。
「自分はここで結果を残せていますけど、チームでは結果を残せてないので、焦っている気持ちはないけど、どんどん選手が入れ替わってもおかしくないくらい競争が激しいと思うので、毎回こういう練習試合でも結果を残してアピールすることが大事」
結果を残す作業を第一目標に挙げていたプロ2年目のストライカーは、試合開始から並々ならぬ意欲でピッチに立った。すると、立ち上がり早々の8分。相手GKの状況を見極めてミドルシュートを突き刺してみせる。1点だけでは満足しない男は同点に追いつかれて迎えた49分。町田浩樹(鹿島アントラーズ)のフィードに合わせて、タイミングよく最終ラインの背後に飛び出す。これを正確にコントロールして、冷静に右足でシュートを流し込んだ。3本目はお役御免となったが、60分間をプレーして2得点。ゴール以外にも精度の高いポストプレーなどで攻撃の起点となり、試合勘が鈍っている中でもしっかりと答えを出してみせた。まさに4−1で勝利を収めたチームにあって、”この世代のエースは俺だ“と言わんばかりの活躍ぶりである。
ただ、2得点の活躍に満足していないのが、エースと呼ばれる所以だ。
「チャンスは逃さないことがFWに取って大事だと思っているので、結果が出たことは良かった。ただ満足はしていないです。他のところでも自分で強引にシュートを打ってみたり、シュート数を増やしたり、そういう中で3点目を取りにいくことが大事だと思っていた。満足したら終わりだと思うので、まだまだかなと思う」
一瞬でも気を抜けば、他の選手に取って代わられてしまう。常に危機感を抱きながら、小川はピッチに立ってきた。だからこそ、クラブで結果を残せなくても、日の丸を背負えばゴールを積み重ねる。結果で示す小川を信頼し、内山監督がチーム発足当初から一貫して代表に呼び続けるのもそのためだ。

「良い意味で21名を最後まで悩みたい」と内山監督は総括したが、エースのコンディションを確認できたことこそ今合宿の収穫だ。今季は所属クラブで出場機会を増やしており、身体のキレも上がりつつある。「毎回こういう練習試合でも結果を残してアピールすることが大事」とは小川の言葉。本大会に向けて、調整は順調に進んでいるのは確かだ。
文=松尾祐希
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