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「戻るスピードが美学」「次は止まらないから!」。酒井高徳×加地亮。骨太のサイドバック論

  DAZNではシーズン前のキャンプ情報をお届けする『プレシーズンニュース』を配信中だ。ここでは、ヴィッセル神戸の沖縄キャンプに潜入した元日本代表DF加地亮氏が酒井高徳とサッカー観をぶつけ合った。日本サッカー史にその名を残してきた二人のサイドバック。クラブで日本代表でサイドを駆け上がった二人のマニアックトークをお届けする。

■利き足、利き目。ボールの置き方

加地 「SBとして一番大事なことって何やと思う? オレは戻るスピードやと思う。攻撃に行って戻るスピードがSBの一番の美学。どれだけ早く帰れるかをポイントに置いてきたから」

酒井 「僕は調子悪いときとかに『SBだけどディフェンダーだから。まずはいい守備をしろ』ってよく言われたんですよね。だから割り切って『守備でやられなかったら攻撃はできなくていいや』くらいに思っています。うまくいかないときこそ良いポジションを取っていい守備をしよう。そして無理しない」

加地 「そこが原点なんですね。位置取りは?」

酒井 「相手SBとサイドハーフの位置を見ながらやっています。どちらが出るのか把握しながら。ちょっと高過ぎてSBが出てきそうなときには2mくらい下がって。受け渡すタイミングがちょうどないとき」

加地 「これ話していて(映像を見る人が)分かるかなぁ~(笑)」

酒井 「そう思うんですよね~(笑)。サイドハーフが首を振れていなくて。分かります?」

加地 「細かいんや、オレは分かるけど(笑)」

酒井 「僕、首見てるんです。(相手)SBとサイドハーフの首」

加地 「細かい! オレの考えているより細かかった(笑)」

酒井 「テレビ用の会話じゃなかったですね(笑)」

加地 「左と右、どちらが利き足なの?」

酒井 「右利きですね」

加地 「左で(上げるの)も遜色ないやん」

酒井 「いやーまだへたくそですね」

加地 「左の持ち方ってすごく開ける。タッチライン際にボールが置けるやないですか。でも右利きってまっすぐか内側にトラップする。(左利きの選手は)体の向きや開きの向きでボールが打ち込める。なんでそれが右利きはできへんのやろ、って」

酒井 「加地さんは開いて持って、打ち込むイメージでしたよ」

加地 「いやー開くというより自分の体を移動してた。できないから。ボールをまっすぐトラップして自分の体を(左に)ずらして(右足でボールを)出してた。最初からここ(右側)には置けなかった」

酒井 「でも難しいですよ、流れたりするし」

加地 「怖いよね。でも、左ではできるでしょ」

酒井 「左ではできます。細かい話になっちゃうんですけど“利き目”があるんで。僕は右目より左目のほうが視野が広いから、ラインとの間隔が分かりやすい。だから開いたときに視野がいいんでしょうね。そういう練習もドイツではあるので。利き目じゃないほうを鍛えるトレーニングですね。片目を隠してトラップする練習とか」

■中田英寿、イニエスタ

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 自分を「使う」パサーの存在もSBにとって大切だ。

加地 「ある時、ヒデさん(中田英寿)にダイレクトではなく、2タッチで出してしまった。それで怒られて。次はダイレクトで出したらヒデさんもその先、ボールをうまく散らせた。『ダイレクトで出したらこういう展開になるでしょ』と言われて。『は、はい』って答えたけど、そのときは何言われているか分からんかった(笑)。でも、後々考えたら分かった。

 DFとDFの間に立っているヒデさんにダイレクトで打ち込むと、ヒデさんもその先の展開がしやすい。でも、2タッチしてしまうと相手DFが絞ってしまう。当時はもういっぱいいっぱい(笑)。へたくそやし、走るしか能がなかったから(笑)」

酒井 「うらやましいですね。ヒデさんが持っていた感覚ってどんなんだったんだろうな、って」

加地 「キラーパスやで。追いつけない(笑)」

酒井 「自分だったらちょっと速く走ってみようかな、とか思いますね。人に合わせるのが好きなんですよ。今アンドレス(イニエスタ)とやっていると、意味分からないタイミングで出てきたりするんですよ。『ああ、そのタイミングがあるのね!』って」

加地 「中村シュンさん(俊輔)もそうなの。だから走り切っておかないと」

酒井 「アンドレスからは、自分が走り終わって止まった瞬間にボールが出て来るんですよ。だから『あ、そこまで走っていいのね』ってその瞬間、うれしくなります。自分の知らないサッカーが見られる。それでアンドレスに『そのタイミングで出して! 次は走るから!』って言うんですよ『次は止まらないから』って(笑)。だからヒデさん(のパスを受けた経験)はうらやましいですね」

加地 「その考えすごいね」

酒井 「人から学ぶことが大好きなんです。ずっと代表見ていましたし、加地さんとか三都主さんとか。見て勉強していました。自分の引きしを増やすことが武器になると思っていたので、知らないことはすべて吸収したい、あれもこれも、って」

 あくなき探求心と向上心を持つ酒井高徳。今シーズン大きな飛躍を誓う。

酒井 「天皇杯王者として終わったこともあって、周りからの評価や期待が高まっているとは思うんですけど、1シーズン通して良い戦いができるチームが本当に強いチームだと思うので。しっかり自分たちのやることをやって、苦しいシーズンを過ごしたからこそタイトルを獲れるんだよ、そんなメンタリティーが神戸に備わったらいいなと思います」

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