「成長も感じた」長谷部誠の冒険。今季示したのは誰も真似できないリベロとしての新境地

コメント()
(C)Getty Images

■序盤は苦戦

2018-10-05 Hasebe Frankfurt

忘れてはならないのは、2018-2019シーズンの長谷部誠が苦境からスタートしたことだ。

2018年のロシアワールドカップ・ラウンド16のベルギー戦で逆転負けを喫した後、長谷部は日本代表から退くことを表明した。2010年の南アフリカ、2014年のブラジルと合わせて3大会に渡りキャプテンの任についてきた彼は一つの区切りをつけ、今後は所属元であるドイツ・ブンデスリーガ、アイントラハト・フランクフルトでのプレーに専心することを決めた。

ただ、ロシアでの激闘は確実に彼の身体を蝕んでいて、シーズン始動後のキャンプに途中合流してからは調整が遅れていた。折しもフランクフルトはニコ・コバチ監督のバイエルン・ミュンヘン監督就任に伴ってアディ・ヒュッター監督を新たな指揮官として招聘して再スタートを図る最中だった。ここでヒュッター監督は、スイスリーグのヤングボーイズを率いていたときに採用していた4バックの導入に着手している。そしてシーズン幕開けのドイツ・スーパーカップ・バイエルン戦(●0−5)、DFBポカール1回戦・SSVウルム戦(●1-2)を前任者の遺産とも言える3-4-2-1で戦って内容、結果ともに完敗すると、ブンデスリーガ開幕節のフライブルク戦で初めて4-2-3-1を用いて勝利を果たす。この間、長谷部はバイエルン戦、ウルム戦で3バックのリベロを務めたものの、システム変更に踏み切ったフライブルク戦ではベンチ外を強いられ、チームはこの試合で今季初勝利を飾った。

その後の長谷部は第2節・ブレーメン戦(●1-2)でもベンチ外、第3節・ドルトムント戦(●1-3)には帯同も不出場と不遇を強いられる中で、フランクフルトはチーム全体が問題を抱えていく。序盤戦での低調はシステムの是非云々ではなく、単純に主力選手たちのコンディション不備が起因していたのである。

■原点回帰で息を吹き返す

2019-05-19-hasebe-mar

ヒュッター監督の聡明な点は、ここで自らの理念を鞘に収め、主力選手たちが慣れ親しみ、かつ特徴を発揮しやすい3-4-2-1への回帰を図ったことだ。開幕から公式戦1勝4敗で迎えたUEFAヨーロッパリーグ(EL)・グループステージ第1節のマルセイユ戦で昨季の主戦システムに戻したフランクフルトはルーカス・トッロとルカ・ヨヴィッチのゴールでアウェー戦を制し、ヨーロッパの舞台で白星スタートを切った。長谷部はマルセイユ戦で先発に返り咲き、3バックのリベロで獅子奮迅の働きを見せて輝きを放った。

この試合を踏まえてヒュッター監督は悟った。長谷部のゲームコントロール力、統率力がいかにチームを支え、攻守両面で多大な影響を及ぼしているのかを。今季のブンデスリーガで6番目の年長者となった長谷部がトップリーグで主力を張れた最大の要因は、35歳にして自らを高く評価してくれる指揮官と巡り会えたことに尽きる。

その後の長谷部の活躍は周知の通りだ。フィールドプレーヤーの最後尾に立ち、攻撃面では安定したボールキープ力と広角な視野を駆使してパス起点となり、守備面では的確な戦況把握力でバックラインを統率してスピードではなく“読み”で相手の侵入を防いだ。彼がバックラインの中央で異彩を放ったのは、卓越したボールコントロール力を自陣深めの位置で実践できた点にある。

対戦相手はある時期からフランクフルトの攻撃が長谷部を起点としていることを見抜いてプレス&チェイスを強めたが、それでも彼が相手プレッシャーに屈する場面はほとんどなかった。スピードとパワーを備える相手を軽快にかわしてチームをリードする姿は“カイザー”と称され、試合を重ねる毎にその希少性を高めていった。

チームもELのグループステージを無敗で1位突破し、決勝トーナメントではシャフタール・ドネツク(ウクライナ)、インテル(イタリア)、ベンフィカ(ポルトガル)といった各国の強豪を次々に撃破して準決勝へ進出。そしてリーグではウインターブレイク明けから11戦無敗(7勝4分)を記録して来季UEFAチャンピオンズリーグ出場権獲得圏内の4位へとランクアップした。

■終盤失速も長谷部の功績は色あせない

2019-05-03-frankfurt-makoto-hasebe

一方で、リーグ戦とELの両立は選手層に不安のあるフランクフルトに多大な負担を強いた。それはELでの躍進と反比例するようにリーグ終盤戦で成績が停滞したことからも分かる。ベンフィカとのホーム&アウェーの間に行われたブンデスリーガ第29節・アウクスブルク戦で逆転負けを喫してウインターブレイク明けからの無敗がストップすると、第30節・ヴォルフスブルク戦、第31節・ヘルタ・ベルリン戦では連続ドロー。そしてチェルシー(イングランド)と雌雄を決したEL準決勝、ホームでの第1戦の後に戦った第32節・レヴァークーゼン戦では前半だけで6失点して敗北するなど、主力選手たちの疲労は顕著だった。

この間、長谷部は来季のCL出場権獲得とEL制覇の野望を隠さなかったが、彼自身もフルタイム出場を続けることでプレーパフォーマンスの低下を自覚していた。EL準決勝第2戦のロンドン、スタンフォード・ブリッジで壮絶なPK戦負けを喫してひとつの目標を失った際にはさすがに落胆の表情を見せ、挑んだ夢への道のりの厳しさを痛感してもいた。

それでも今季の長谷部が示した功績は素晴らしい。35歳にしてキャリアハイのデータを残した表面上の事象だけでなく、彼がバックラインから攻守を活性化させることで引き出されたチームの潜在能力はドイツ国内に留まらず、ヨーロッパ各国クラブの脅威となった。リベロというと旧式に捉えられがちだが、フランクフルトで長谷部が担った役割は現代サッカーの最先端を行く、誰もが真似できない傑出したポジションだった。

今季最終節。眼前でバイエルン・ミュンヘンのマイスター獲得を見せつけられた1−5のゲーム後。長谷部は今季の“冒険“をこう評している。

「いろいろな思いが入り混じっています。リーグ戦ではチャンピオンズリーグの出場権、ヨーロッパリーグではタイトルと、そのふたつを追い求めた中で、ひとつも獲ることができなかった。ただ、そのふたつに挑戦した結果、(7位に入って)ヨーロッパリーグの予選から出られることになったのは、それに挑戦したご褒美なのかなって」

「1年を振り返れば充実していました。良いときも悪いときもあったけど、自分の成長も感じましたしね」

30代半ばにしてさらなる高みを目指した長谷部誠の2018-2019シーズン。彼はここで満足はしないだろう。「いつまでもサッカーをしていたい」という彼の究極の夢への道程は、まだその途上にある。

取材・文=島崎英純

▶サッカー観るならDAZNで。1ヶ月間無料トライアルを今すぐ始めよう

【関連記事】
DAZNを使うなら必ず知っておきたい9つのポイント
DAZNが「テレビで見れない」は嘘!6つの視聴方法とは?
DAZNの2019年用・最新取扱説明書→こちらへ ┃料金体系→こちらへ ※
【簡単!】DAZNの解約・退会・再加入(一時停止)の方法を解説 ※
【最新】Jリーグの試合日程・放送予定一覧/2019シーズン
Jリーグの無料視聴方法|知っておくと得する4つのこと
「※」は提携サイト『 Sporting News』の提供記事です

Goal-live-scores

閉じる