2019-05-07-pique-busquets(C)Getty Images

【徹底分析】“奇跡”を起こしたリヴァプールの信念――。恐れ錯乱したバルセロナ

文字通り“奇跡”が起こった。

ファーストレグは0-3の完敗。ホームでは最低でも3ゴールが必要な状況で、大黒柱ロベルト・フィルミーノとモハメド・サラーが欠場。まさに絶体絶命だった。それでも、8分のディボック・オリジのゴールを皮切りに、後半途中出場のジョルジニオ・ワイナルドゥムが2ゴール。そして79分、意表をついたCKからオリジが値千金の決勝弾。4-0の勝利、2試合合計スコア4-3でリヴァプールが2季連続の決勝進出を果たした。

2005年のチャンピオンズリーグ決勝イスタンブール、2016年のヨーロッパリーグ準決勝第2戦、これらに続き、リヴァプールは3度目の“奇跡”を起こした。一方のバルセロナは、昨季に続いてファーストレグでの3ゴール差をひっくり返されての敗退。今季掲げていた最大の目標であるビッグイヤーは、目前でその手から滑り落ちていった。

では“アンフィールドの奇跡”はなぜ起きたのだろうか? 今回はスペイン二大紙の1つである『as』の試合分析担当ハビ・シジェス氏に、大逆転劇の裏で何が起きていたのかを紐解いてもらった。

文=ハビ・シジェス(Javi Silles)/スペイン紙『as』試合分析担当
翻訳=江間慎一郎

■自信とインテンシティー。恐れと競争心の欠如

アンフィールドがバルセロナを貪り食った。バルベルデのチームは1年前のローマ戦で露見した性格が結局なおっておらず、今季最大の目標を誰にも予想できない形で逃してしまった。

このノックアウトラウンドの結末は、リヴァプールの自信とインテンシティー、バルセロナの恐れと競争心の欠如で説明がつく。そして恐らくだが、カンプ・ノウを舞台としたファーストレグでバルセロナが手にした圧倒的な結果は、彼らが苦しんでいたという事実を覆い隠してしまっていた。あの3-0の差はやはり、現実のものとしてそこにあったわけではないのだ。今回、バルセロナはリヴァプールのプレーリズムについていけず、ほぼすべてのデュエルに敗れていたし、かてて加えてベンチから解決策がもたらされることはなかった。

■打開策

2019-05-07-pique-busquets(C)Getty Images

前半と後半の立ち上がりに、あらゆる災難がバルセロナに降りかかった。リヴァプールの研ぎ澄まされたプレッシングは、ファーストレグと同様にバルセロナのボールポゼッションを阻害。アルトゥーロ・ビダル、ジョルディ・アルバ、ラキティッチのボールロストはリヴァプールの速攻へと直結し、J・アルバのヘディングでのパスミスからオリジの先制点が生まれることになった。

バルベルデも一応は、リヴァプールの圧力から逃れるための策を用意していた。ビルドアップ時、ブスケツはファーストレグとは異なり、ピケ&ラングレの両センターバックの間に入ることなく、そのまま5番のポジションをキープ。彼の相手ゴールに背中を向けたプレー、その判断力を信頼したのである。実際、ブスケツは窒息しそうなバルセロナに酸素を送り込んだ唯一の存在だった。ミルナー、またはヘンダーソンの寄せをものともせず、メッシ及びサイドにボールを送りながら15分から30分の時間帯に60%のポゼッション率を記録させている。

メッシがリヴァプールのMF&DFのライン間でボールを受け取れば、バルセロナのトランジションはうまくいき、打撃を与えることに成功する。ファビーニョの背後を取るメッシはJ・アルバのオーバーラップ、(効果は薄いものの)コウチーニョの相手を揺さぶる動き、ルイス・スアレスの飛び出しを生かそうと試みた。しかしながら、今回はファーストレグにはあった決定力が伴わず、GKアリソンがその存在感を大きくしている。

リヴァプールはいつも通り、アクションではなくリアクションのチームだった。高い位置でのボール奪取数は12回を数え、そこからわずかなタッチ数と圧倒的な勢いでの速攻を繰り返している。サイドでボールを奪い、サイドから襲いかかるのがリヴァプールのやり口で、マネがサイドバックとしては守備に不安が残るセルジ・ロベルトに突っかかっていくことによって、バルセロナの最終ラインを切り崩した。ビダルはミルナーの飛び出しを警戒していたことで中央に寄り過ぎてしまい、ピケがS・ロベルトが突破されたサイドのカバーに回らざるを得なかったのである。

またオリジも、ブスケッツの背後でマークを外す動きを見せてバルセロナに打撃を与えている。このベルギー人FWは繊細なプレーを特徴とする選手ではないが、それでもボールをしっかりとコントロールし、サイドにも開いてクロップのアイデアを助長させていた。バルセロナは前半の内に守備の問題を修正していったものの、しかしリヴァプールの爆竹に火がつくのは、その後だった。

後半開始からの15分、リヴァプールが再び窒息死させるようなプレッシングを見せて、スコアはタイに戻った。ホームチームは相手陣地で腰を据え、凄まじいプレーリズムによってバルセロナを周章狼狽させている。バルセロナはもう、ブスケツが指揮棒を振るっても彼らのプレッシングをかいくぐれず、速攻の機会を待つ2トップのメッシとL・スアレスは完全に孤立した。

■信念の勝利

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リヴァプールが、バルセロナを食らった。たとえボールを失っても、強烈な希求とでも形容できるような勢いで持ってそれをすぐさま奪い返した。その攻撃において特に力強かったのは、負傷したロバートソンに代わって出場したワイナルドゥムである。左サイドバックとなったミルナーに代わってインサイドハーフとしてプレーしたこのオランダ人MFは、ラキティッチとブスケツを幾度も出し抜いて、フィニッシュゾーンまで侵入。クロス中心の攻撃を見せていたリヴァプールの中で、さらなる9番としての役割を担っていた。

リヴァプールの仕事ぶりは、バルセロナの選手個々のミスによって補完される。2-0となった場面ではラキティッチとJ・アルバの連係ミスが仇となり、3-0の場面ではラングレがワイナルドゥムのマークを外してしまった。両得点とも、戦術というよりバルセロナの個々人のミスである。

バルセロナにとってはバルベルデの手腕が問われる展開だったものの、修正が得意なはずのこの指揮官は、ピッチ上のリヴァプールのように完璧なリアクションを見せなかった。コウチーニョを使い続けるという執着は、その薄い効果性に鑑みれば理解することは難しい。ブラジル人MFはすべての時間帯で存在感がぼやけていたばかりか、アレクサンダー=アーノルドがオーバーラップしても、J・アルバの助けになろうともしなかった。バルベルは同点とされてから彼を引っ込めてセメドを起用したが、たとえ守備的な采配であるとしても、もっと前にそうすべきだった。加えて、リヴァプールのインテンシティーに唯一付いていくことができたビダルを下げた意味も分からない。確かに、状況的にはアルトゥールの起用で試合を落ち着かせたかったところだが、代わりにピッチを後にすべき選手はビダルではなく、2失点に絡むなどいつもの調子ではなかったラキティッチだったはずだ。いずれにしても、今回の交代策はすべてが後手に回っていた。

79分、リヴァプールの一向に変わらない飢餓感と、バルセロナのひどくなるばかりの精神錯乱が、偉大なる(恥ずべき)逆転劇を現実のものとした。不安だらけで焦点の定まらないバルセロナと、アレクサンダー=アーノルドの抜け目ないCKとオリジのフィニッシュは、これ以上ないコントラストである。リヴァプールは最高の2選手であるサラー&フィルミーノ抜きに、ファーストレグの結果が不当であったことを証明したのだった。

リヴァプールの成し遂げたこと、それは“奇跡”と称しても差し支えないものだろう。だがしかし、チーム全体でバルセロナよりも8キロ多く走るなど、懸命に汗を流したからこそ奇跡は生まれたのだ。リヴァプールが果たしたのは、信念の勝利。バルセロナが味わったのは、挫折である。

文=ハビ・シジェス(Javi Silles)/スペイン紙『as』試合分析担当
翻訳=江間慎一郎

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「※」は提携サイト『 Sporting News』の提供記事です

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