リーガ・エスパニョーラ第10節延期分、バルセロナとレアル・マドリーによる今季最初の“クラシコ”は、スコアレスドローで決着した。
試合は猛然とプレスをかけるレアル・マドリーが序盤に主導権を握り、バルセロナは苦しみながらもリオネル・メッシを中心として徐々にチャンスを作っていく。それでもジェラール・ピケ、セルヒオ・ラモスという両チームの守備の要が決定的なクリアを見せ、マルク・アンドレ・テア=シュテーゲン、ティボー・クルトワの両守護神も奮闘。熱戦となったが最終的にネットが揺れることはなく、17年ぶりにスコアレスに終わった。
この一戦について、スペイン大手紙『as』で試合分析を担当するハビ・シジェス氏は「クラシコは決定的に変化した」と評している。そう語る理由はどこにあるのだろうか? 世界最高レベルの一戦では、一体何が起こっていたのだろうか? スペイン屈指の分析官に紐解いてもらった。
文=ハビ・シジェス(Javi Silles)/スペイン紙『as』試合分析担当
翻訳・構成=江間慎一郎
■決定的な変化
Getty Imagesクラシコの趣は、今回の一戦で決定的に変化した。これまではバルセロナが主導権が握り、レアル・マドリーがどうにか耐え凌いでやり繰りする、という帝国軍と反乱軍による争いが行われてきたが、両者の役割は入れ替わることになったのだ。ただ二チームの現状に鑑みれば、直接対決における様相の変化は当然の帰結だろう。どちらもまだチームとして完成されてはいないが、現状で一方(バルセロナ)はゴールを決めることに特化し、また一方(マドリー)はフットボールに興じることに特化している。
ジダンのマドリーは素晴らしいパフォーマンスを見せているが、アトレティコやバレンシアとの試合でもそうだったように、それをゴールに昇華するまでの攻撃プランを構築できていない。対してバルベルデのバルセロナは、以前のように中盤から攻撃を繁栄させるのではなく、そこがいかに大切であったのかを忘却してメッシと両ペナルティーエリア内のプレーだけに依存している。今回のクラシコは両者の軌跡をものの見事に反映していた。
■マドリー優勢の要因
Getty Imagesマドリーの優勢ぶりには、様々な要因が存在していた。ジダンは中盤ダイヤモンドの1-4-4-2と1-4-3-3の変則システムを採用。ハイプレッシングが見事にはまり、バルセロナ陣地でプレーを進めていくことができた。フランス人指揮官は各選手のポジションニングに細心の注意を払って、バルセロナのビルドアップを妨げることに成功していたのだ。
マドリーのハイプレッシングは、エイバル、オサスナといったその種のプレッシングのエキスパートであるチームが駆使するものと類似しており、それはGKテア=シュテーゲンがボールを蹴り出す度に繰り返された。ベンゼマとベイルはピケとラングレを追い回し、ときに相手を交換していたがイスコはラキティッチ、フェデ・バルベルデはデ・ヨングをマーク。一方でクロースはセルジ・ロベルトにつき、さらにカルバハルとメンディは距離こそ開いていたがセメドとジョルディ・アルバのオーバーラップを警戒し続けていた。
バルセロナは、この前からかけられる圧力を継続的にかわす術を持ち得なかったが、それはバルベルデが率いるようになってから抱え続ける問題でもある。彼らはアグレッシブなハイプレッシングに苦慮することを常としており、試合直前に熱を出したブスケッツがいなければ、問題はさらに深刻化してしまう。前半に見つけた唯一のハイプレッシング克服法は、テア=シュテーゲンからトップのルイス・スアレスに出されるパス(4回ほどあった)だったが、最初こそマドリーを驚かしたものの、次第にヴァラン&セルヒオ・ラモス、そしてカバーに入るカセミロに無効化されている。バルベルデは後半からラキティッチを両センターバックの間に位置させ、デ・ヨングもビルドアップにもっと関与させようとしたが、これも大きな効果を得られず。マドリーの圧力が少し緩くなろうと状況は変わらなかった。
ただ、ジダンのボールなしで実行した勇敢なプランには代償も伴っている。バルサは彼らのプレッシングからほとんど逃れることができなかったが、メッシがある程度のスペースを享受しながらボールを持ち、1対1に臨めるのならば劣勢は優勢となる。アルゼンチン人FWは、自チームが中央で行き詰まっている状況を受けて右サイドに流れ、そこから改めて中央へアプローチすることを試みていた。カセミロが捕捉できずにいる彼は、ダイアゴナル・ランからマドリーの組織をかき回している。特に前半はそのプレーが当たり、カルバハルの背後を取るJ・アルバとの連係からチャンスを創出。バルセロナは今日のチームの在り方通り、メッシがいることで前へと進み、ゴールに近づくことができた。だがグリーズマンとL・スアレスはフィニッシュフェーズでの決断が鋭敏ではなく、かてて加えて鋭い読みを見せるヴァランの存在によって、エースの奮闘はゴールまで届いていない。
■哲学から遠ざかるバルサ、哲学を構築するマドリー
Getty Imagesその一方でマドリーも、今季ここまでの重要な試合で勝利を逃してきた理由が、この大一番で再び顔を出している。プレッシングや後退のタイミング、ビルドアップからフィニッシュフェーズまでの移行は見事に計算されているものの、攻撃の詰めにおけるプレーのバリエーションがやはり乏しい。確度の高いチャンスを手にするためのパスワークによる崩しや個人突破がほとんどなく、サイドからボールを放り入れるような運頼りのフィニッシュがこの試合でも目立っていた。負傷離脱中のアザールがいるならばまた違うのだろうが、現時点ではその進歩したパフォーマンスをゴールに繋げられていない。ベンゼマの気の利いたプレー、またはフェデ・バルベルデの勇敢さに頼るだけに終始しており、しかしそれだけでは強敵に対して十分な手段となっていないようだ。カンプ・ノウで起こったことも、ここまでの例に漏れない。マドリーのゲーム支配はアタッキングサードまでとなり、そこでおしまいだ。
クロース、フェデ・バルベルデ、イスコ、ベンゼマは、それぞれのやり方でマドリーの攻撃を押し進めている。クロースはセルジ・ロベルトを引きつけるとともに、メッシが介入することができない絶妙なポジショニングから、長短のパスを通していった(成功率88%)。フェデ・バルベルデは広大な範囲でパスをつなぎ、ドリブルを仕掛けて常にアクセントになり続けていた。イスコはライン間でフィニッシュフェーズにつながるプレーを見せるほか、サイドに流れるとメンディがオーバーラップするスペースを確保するべくセメドを引きつけていた。ベンゼマはペナルティーエリアから離れ、ピケ&ラングレの追跡から逃れて、ビルドアップに積極的に関与していた。そのすべての自動作用がマドリーを機能させ、バルセロナの守備を崩すことにつながっていたが、そのレールは決定的なチャンスを生むラストパスや個人技にまで連結されてはいなかった。ポジショナルな攻撃の流れは最後でせき止められ、決定機は結局セットプレーやカウンターに限られていた。
マドリーのポジショナルな攻撃は大体が害の少ないクロスで終わり、それは圧巻たるピケという壁に跳ね返されるのが定番のオチに。中央での壁パスによる崩しやサイドバックの切り込みもないために、バルセロナのペナルティーエリア内がマドリーのゴールアイデアにあふれることは、ついになかった。バルベルデとクロースがエリア近くまで顔を出す回数が増えても効果はなく、ベイルのプレーも精力的ではあったが爆発的ではなかった。
今回のクラシコは、バルセロナとマドリーの状態を忠実に表していた。バルセロナは自分たちを再発見することができないままで、あれだけの多くの成功を導いたトータル・フットボールというアイデアからどんどんと遠ざかっている。今はすべてがメッシ次第で、動的ではなく反動的だ。対してマドリーは、確実に成長の途上にいる。ジダンは確立すべきフィロソフィーと、そのフィロソフィーを確立できるだけの集団を手にしている。が、それはまだ攻撃の創造性を欠いているために、ほかのチームとの決定的な違いを生み出すものには至っていない。現在のバルセロナと同じく、まだ見え透いたチームのままである。
▶ラ・リーガ観るならDAZNで。1ヶ月間無料トライアルを今すぐ始めよう
【関連記事】
● DAZNを使うなら必ず知っておきたい9つのポイント
● DAZN(ダゾーン)をテレビで見る方法7つを厳選!超簡単な視聴方法を紹介
● DAZNの2019年用・最新取扱説明書→こちらへ ┃ 料金体系→こちらへ ※
● 【簡単!】DAZNの解約・退会・再加入(一時停止)の方法を解説 ※
● 【最新】Jリーグの試合日程・放送予定一覧/2019シーズン
● Jリーグの無料視聴方法|知っておくと得する4つのこと
「※」は提携サイト『 Sporting News 』の提供記事です





