■アルゼンチンのフォーメーション
(C)Goal■ブラジルのフォーメーション
(C)Goalまただ。もう何度も、何度も繰り返されてきたことが、また繰り返された。このフットボール界は、メッシによる、メッシのためのもの――たとえ馬鹿げていようとも、そんな言葉が実を伴う可能性はずっと、ずっとあった。だが、彼のアルゼンチンがタイトルを手にすることはない。過去のデータに基づくと、メッシが代表チームで優勝する確率は0%のままなのだ。
メッシはこのブラジル戦、このコパ・アメリカを通じて最も汗を流していたし、ともすれば血を流す覚悟すらあった。しかし、結果として追い求めたものにはやはり届かなかった。代表チームでのタイトルどころか、ブラジルホームの公式戦も、結局未勝利のままとなっている。
対して、派手なカナリア色はそのままに、チッチが率いて以降は控え目なチームとなり、なおかつネイマールも不在のブラジルは、決勝の舞台まで上り詰めた。この一戦でとりわけ輝いたのは、疲れ知らずのダニ・アウヴェス、鋭敏なフィルミーノ、ガブリエル・ジェズスである。
この試合ではスターティングメンバーからニュースが存在した。ただ、それは予想できなかった類のものでもない。アルゼンチンはじつに40試合ぶりに同じ11人を2戦連続で先発させて4-3-1-2を使用。飛翔を果たしたベネズエラ戦の勢いを継続しようとした。
片やブラジルもスタメンはアレックス・サンドロをフィリペ・ルイスに代えるだけで、4-3-3と同じフォーメーションを使用。つまり両チームともその戦い方を継続したわけだが、よりうまくいったのはブラジルだった。何よりも、ダニ・アウヴェスのフットボール的なインテリジェンスが、そうした流れを引き寄せている。
■違いとなったのはD・アウヴェス
(C)Getty Imagesアウヴェスは相も変わらず、そのほかと一線を画す選手だ。チッチ率いるチームでも、パリ・サンジェルマンやバルセロナで示してきたように、右サイドバックなんてものではない右サイドバックであることを誇示している。彼はピッチの中央でも、サイドでプレーするのと同様の判断力と均衡を崩す力を備え、対戦相手の守備システムを困惑させる。
サイドではなく中央から攻めるサイドバックを相手にすれば、一体どんな対応をすればいいのか? スカローニ監督はラウタロ、またはアグエロにアウヴェスを警戒させ、アクーニャ、パレデス、タグリアフィコがアルトゥール、コウチーニョ、G・ジェズスに対応できるよう仕向けた。が、無駄だった。アウヴェスが高い位置を取る度に、アルゼンチンは深刻な問題を抱えることになったのである。
右ウイングのG・ジェススがサイドに開いたままになると、左SBのタグリアフィコが継続して彼を追い、左インサイドのアクーニャも注意を払う必要が生じる。するとアウヴェスは、ラウタロかアグエロに追われ続けなければ、フリーで内のレーンを走ることが可能に。フリーのアウヴェスにはアクーニャ、さらにはアンカーのパレデスが対応するわけだが、そうなればアルゼンチンの重要な守備スペースに穴が生じることになる。
総じて、水色と白のチームは守備面において、見当違いの戦いを仕掛けていた。ブラジルの動きに冷静に対応しなければいけないところを、前進してくる相手選手に立ち向かおうと、すべてのボールを奪おうとしたのである。
ブラジルが1-0とした場面は、アウヴェスが生み出した優位性でもって説明がつく。この右サイドバックはまずアクーニャとのデュエルを制し、次にパレデスにも同じく敗北を味わわせた。そこからサイドに開いていたフィルミーノがボールを受けてクロスを送ると、G・ジェズスが枠内にそれを押し込んでいる。彼らは各々の役割を何度も交換していたが、これが見事的中。とりわけアウヴェスが、その戦術の鍵を握っていた。
■重すぎたタスクをこなしたメッシ

しかし、おどおどしていたアルゼンチンもその後、スコアをひっくり返すには十分な攻撃を見せている。メッシというコンパス、ラウタロのセンス光るボールタッチがレジスタンス運動の契機だ。ここまでの試合では少し冷淡にも感じられた10番の尽力は、この大一番で期待されていたことでもあった。メッシは中盤ダイヤモンドの頂点から後方へと下がり、自ら攻撃の組み立てに関与。そのプレービジョン、ボールの持ち出し、相手を引き寄せる磁力は、アルゼンチンの攻撃の仕掛けを目に見える形で向上させた。
中盤に下がったメッシには、インサイドハーフのアルトゥールやコウチーニョが対応したものの、彼らのプレスは抑圧を感じさせるものにはならず、またアンカーのカセミロは中盤の守備のバランスを崩すわけにはいかず、彼を追えなかった。
ただし、高い位置でボールを奪われたブラジルはすぐさまボールを奪うことを試み、その場合にはカセミロがメッシを急追している。もちろん、ブラジルはそこでリスクを冒していた。もしメッシがワンタッチでカセミロをかわしたとしたら、もれなく守備のコントロールがきかなくなってしまう。つまりは、レアル・マドリーが何度となく苦しんできた状況が生まれるわけだ。メッシが自陣から個人技を見せて、アグエロに優位な状況でシュートを放てるようにした場面こそが、その際たる例として挙げられる。
しかしながら、アルゼンチンが攻撃の展開において、最初のパス出しでメッシを必要としていたということは、それはすなわち中盤の才能、アイデア不足を露呈していた。パレデスのゲームメイクは不十分で、アクーニャはインサイドハーフとしてそこにおらず、ロドリゴ・デ・パウルは開かれたピッチでこそ、そのダイナミズムを発揮できる……。アルトゥール、カセミロの背後に位置するメッシに対しては、彼らの誰もボールを出すことができなかった。その役割を背負ったのはメッシ自身であり、アグエロ&ラウタロと壁パス、反転を繰り返してゴールまで迫ることを試みている。ただアグエロはゴールはもとよりプレーには生産性がなく、ラウタロの方がメッシとの相互理解力があり、彼ら二人がチームの攻撃を伸長させた。
■姿を現したブラジルが牙をむく
(C)Getty Imagesまた、このメッシを中心としたアルゼンチンの攻撃は、ブラジルの順応主義とも称せる姿勢が呼び起こしたものでもあった。チッチは組織立ったチームをつくり上げはするが、保守的だ。ゴールを決めると後方に下がって相手のボール保持を許し、カウンターを狙う。問題は、狙い通りに試合をコントロールできなかったことにあり、その理由はボール保持を許したからではなく、ラウタロとメッシを囲い込めなかったことにある。メッシがアルトゥールとコウチーニョを一度抜いてしまえば、カセミロはメッシとラウタロに1対2の状況をつくられた。カセミロはセンターバックのどちらか一人がラウタロに対応するのを確認するまでメッシに襲いかかれず、ただ後退りしながら動きを遅らせる以外に選択肢がなかった。
こうしてアルゼンチンは引き分けに届く寸前までいったが、枠とアリソンにそれを阻まれている。スカローニは賭けに出ることを選択してディ・マリアとロ・チェルソをピッチに立たせたが、この交代策は後退して守る際に不都合を生じさせ、ブラジルが念願だったトランジションからの攻撃を実現。そして後半から対面するフォイスを相手に効力のなかったエヴェルトンの代わりに左ウイングを務めたG・ジェズスが、アルゼンチンにとどめを刺した。彼は確信に満ちあふれたドリブル突破から、フィルミーノに先制点の返礼となるお膳立てをして、ペッセッラとオタメンディのセンターバック2人を赤面させている。ペッセッラはデュエルにさも簡単に屈し、オタメンディはファウルしようにもタックルが届きもしなかった。
2-0となったのは、71分。アルゼンチンは時間に迫られながらも、今大会無失点を貫くブラジルにさらなるゴールを決められたことで、ついに自信を失ってしまった。ブラジルはメッシがようやくその姿を表した一戦、アルゼンチンの今大会最高の一戦で、効果的という形容に尽きるパフォーマンスを誇り、決勝の舞台に両足を踏み入れたのだった。
アルゼンチンはまたも立ち上がらなければならないが、この試合のようなパフォーマンスを繰り返していけるならば、メッシとともにタイトルを勝ち取る確率は過去のデータに基づくような0%にはならないだろう。それに前例を覆してこそ、感動は強まるのだから。怒りに満ちたメッシの目は強烈で、ぎらぎら輝く瞳とプレーは、たとえ負けようとも勝利のシンボルそのものである。
文=ハビ・シジェス /『as』試合分析担当
翻訳・構成=江間慎一郎
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「※」は提携サイト『 Sporting News』の提供記事です

