2019_5_2_messi2(C)Getty Images

【徹底分析】バルサは支配していない。それでも快勝したのは…リヴァプールの弱点と降臨した『D10S』

バルセロナはレジスタンスとしての活動でもってリヴァプールとのファーストレグを3−0で制し、スペイン首都マドリーで行われる決勝へと近づいた。しかしながら、リヴァプールのハイプレッシングを中心とした急流のような勢いにかつてないほど苦しんだのは明らかで、それは完全無欠の結果をもってしても隠すことができない。バルベルデのチームはボールの扱い方を忘れてしまい、それに伴いゲームを管理し損なってしまった。が、それでも両ペナルティーエリアで獰猛だった。

文=ハビ・シジェス(Javi Silles)/スペイン紙『as』試合分析担当
翻訳=江間慎一郎

■バルセロナのスタメン

2019_5_2_barcelona

■リヴァプールのスタメン

2019_5_2_liverpool(C)Goal

■フィルミーノ不在の影響

2019_5_2_liverpool2

このような大舞台であっても、リヴァプールの意思の強さは揺るぎなかった。クロップは、たとえバルセロナの速攻を許すリスクがあるとしても、自チームにいつも通りのプレッシングを実行させている。万全の状態ではなかった偽9番フィルミーノの代わりには、ワイナルドゥムを起用。ブラジル人のような繊細な攻撃は期待できなかったが、その献身性は確かなものだった。

以下に続く

リヴァプールはDFラインを中盤まで押し上げ、言葉通り一枚岩となり、ワイナルドゥム、マネ、サラー、ミルナー、ケイタ(後にヘンダーソン)が前からガツガツとバルセロナに圧をかけていった。その中でファビーニョは、60分くらいまではあまりアグレッシブに行かなかったが、それはメッシのゲームメイクへの関与を阻害すること、バルセロナの速攻を食い止めることを目的としていた。

対してバルベルデは、リヴァプールのハイプレッシングの回避方法として、従来通りの駆け引きを実践。ブスケッツがピケ&ラングレの間に入って第3のセンターバックとなり、リヴァプールの3トップ(サラー、ワイナルドゥム、マネ)と数を合わせるやり方である。

そのメリットはもちろん、ビルドアップにおけるパスコースを増やせること、万が一ボールを失った際にカバーに回れる選手を増やせること。しかし、今回のリヴァプールの急追を前には効果が薄かった。ビダルとラキティッチはリヴァプールのインサイドハーフにがっちりマークされ、ボールを受ける際にはゴールに背中を向けることになり、前を向くことがかなわず。二人合わせて、じつに26回もボールを失うことになった。この鬱血したような状態において、テア・シュテーゲンの高い位置を取る両サイドバック、またルイス・スアレス&メッシに送るパスのみが有効な手段となっていた。

バルセロナは守備時に4−3−3から4−4−2となり、ブスケッツ、ラキティッチが中央を固め、ビダル、コウチーニョがサイドを守った。だがサラーとマネへの対応に苦慮し続けている。彼らがサイドから攻め込む際、セルジ・ロベルト、ジョルディ・アルバの両サイドバックがサポートを受けられないことが間々あり、1対1の状況を強いられた。

リヴァプールはサイドからバルセロナを攻略し、とりわけロバートソンの出来は素晴らしく、試合を通じて15本ものクロスを放ったが、ボールがペナルティーエリア内に届けられる度にフィルミーノを懐かしむことにもなった。ブラジル人選手はサラーとマネにとって最高のパートナーでもあり、壁パスやゴール前最後の数メートルで決定的なスペースを生み出せる。リヴァプールはゴールを生み出すために有効なプレーを確かに実行していたが、フィルミーノ不在も響いてフィニッシュフェーズで失敗し続けたのだった。

セルジ・ロベルトは逆サイドからボールを送られる際、中央に寄せることをしなかったが、それを理解していたマネは彼とピケの間に入り込む動きを繰り返した。しかし、やはりシュートを的中させることはできず。そうして60分、バルベルデは右サイドの守備の問題を解消するために、コウチーニョとの交代でセメドをピッチに立たせている。1列前でプレーすることになったセルジ・ロベルトはロバートソンに対応して、スピードあるセメドがマネを制止する役割を担うことになった。またサイドでは、ビダルがサラー相手に苦戦していたJ・アルバに手を差し伸べている。

■リヴァプールの弱点

2019_5_2_messi2(C)Getty Images

この試合のバルセロナのポゼッション率は48%と、継続的に攻撃することはかなわなかった。とはいえ断続的な攻撃でもリヴァプールの守備を崩し切れている。それはサイドの守備こそが、リヴァプールの弱点であることを理解していたためにほかならない。

サラーとマネの両ウィングがあれだけ前に出てしまえば、両サイドバックが孤立することは必然である。彼らをサポートする役割を担うのはインサイドハーフとなるが、いつも間に合うとは限らない。スアレスが26分に決めたバルセロナの先制点では、ヘンダーソンが駆けつけることができなかった。

あのゴール場面で、バルセロナは至極単純なサイドチェンジによって優位な状況を生み出していた。リヴァプールはJ・アルバのオーバーラップに誰も対応することができず、ヘンダーソンが急いで寄せようとしたものの、時すでに遅し。バルセロナの左サイドバックは、スアレスに良質なクロスを通すための十分な時間を獲得していた。

この先制点を含めて、前半のバルセロナの攻撃はJ・アルバが深いところまで入り込むオーバーラップ、スアレスのダイナミズムに支えられている。スアレスはファビーニョの背後を狙い、ポストプレーで自チームを呼吸させ、またセンターバック&サイドバックの間も突いた。

片やJ・アルバは、コウチーニョとの連係が光った。コウチーニョがサプライズで起用されたリヴァプールの右サイドバック、ジョー・ゴメスを中央に引き寄せることで、同サイドのレーンはさながらJ・アルバの高速道路となっていた。

そして試合終盤は、まるで爆竹が鳴らされたかのような展開に。リヴァプールに亀裂が入り、メッシがその姿を現したのだ。バルセロナが75分に決めた追加点では、クロップ率いるチームのさらなる弱点が暴かれている。これだけアグレシッブにプレッシングを仕掛けるチームであれば、いつか後方にスペースが空いてしまうものだ。安定を図り続けていたファビーニョが、後方にメッシがいるにもかかわらず前へと出てしまい、ブスケッツに彼への縦パスを通された。相手のDF&MFのライン間で前を向けたメッシにとって、自分に吸い寄せられるDF陣と味方の飛び出しの動きは、あまりに簡単なパズルでしかない。

その解はS・ロベルトに対する絶妙なタイミングでのスルーパスであり、S・ロベルトからパスを受けたスアレスのシュートがバーに当たると、跳ね返ったボールをメッシ本人が押し込んだ。その7分後、メッシは直接フリーキックから2点目を決めたが、これについては「プレイステーションの選手」「世界最高の選手」「D10S(※スペイン語で神を意味する“Dios”と背番号10を組み合わせた造語)」などと言っておけばいいのだろう(どうせ、どんな形容をしても陳腐なものにしかならない)。

総じて言えば、バルセロナはゲームを扱い切れてはいなかった。だが少なくとも、フットボールにおいて最も肝要な場所である、ペナルティーエリアを支配していたのだった。

▶UEFAチャンピオンズリーグ観るならDAZNで。1ヶ月間無料トライアルを今すぐ始めよう

【関連記事】
DAZNを使うなら必ず知っておきたい9つのポイント
DAZNが「テレビで見れない」は嘘!6つの視聴方法とは?
DAZNの2019年用・最新取扱説明書→こちらへ ┃料金体系→こちらへ ※
【簡単!】DAZNの解約・退会・再加入(一時停止)の方法を解説 ※
【最新】Jリーグの試合日程・放送予定一覧/2019シーズン
Jリーグの無料視聴方法|知っておくと得する4つのこと
「※」は提携サイト『 Sporting News』の記事です

Goal-live-scores
広告