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「年をとっても失いたくない」35歳長谷部誠の衰えぬ情熱。変わらぬ熱さがフランクフルトにもたらすもの

■欧州の第一線で戦うクラブと長谷部

2019-03-08-makoto-hasebe(C)Getty Images

ドイツ、フランクフルト。ヨーロッパリーグラウンド16ファーストレグ。インテルをホームに迎えた長谷部誠は、アンセムが流れるなか、ピッチを囲むスタンドに目をやる。コメルツバンク・アレーナを埋めた4万人を超える観客の熱をじっくりと味わっていた。

「ホームのこの雰囲気というのは力になる。ホームのというか、サポーターですね。アウェーの試合にもたくさんのサポーターが来てくれるから。ヨーロッパリーグの上にはチャンピオンズリーグがあります。チャンピオンズリーグ常連のビッグクラブなら、ヨーロッパリーグではモチベーションを上げるのが大変というチームも多いかもしれないけど、僕ら、アイントラハト・フランクフルトにとって、この街にとって、ヨーロッパリーグは非常に大きな大会です。僕らアイントラハトがこういう大会のこの場所にいて、名のあるチームを相手にしてもいい戦いができている。自分たちがやっていることは、すごくやりがいはありますね」

昨季、バイエルン・ミュンヘンを破り、ドイツ杯(DFBポカール)を獲得したフランクフルトだが、ここ数年はブンデスリーガでは下位に甘んじることも多く、2015-16シーズンには入れ替え戦も経験した。そのとき指揮を執ったニコ・コバチ監督は、翌シーズン、長谷部に新たなポジション、リベロを与える。そして、ドイツに渡り10シーズンを戦うベテランにとって、この変化は新たなる成長のきっかけとなった。先ごろ発表されたドイツ誌『キッカー』の今季前半の採点平均値ランキングDF部門トップに輝いたのは、長谷部の進化を示している。

■インテル戦でも垣間見えた情熱

2019-03-07-hasebe(C)Getty Images

今年1月、35歳になった。

この日のインテル戦で先発した両チームの選手のなかで最年長だったことでもわかるように、欧州の最前線で、30代半ばの選手が活躍する例は少ない。それでも平均年齢20歳前半の若いチームの中で、もっとも重要な選手として、長谷部はそこに君臨している。年齢を感じさせないばかりか、誰よりもアグレッシブでエモーショナルなオーラを放っていた。

開始早々は、インテル優勢で試合が進み、自然とDFラインが押し下げられる。なんとかピンチを凌ぎ、ゲームが止まるゴールキックの場面になると、「もっと前へ行け。押し上げろ」とでもいうように、大きなジェスチャーで手を振る。それでも改善されないとみると、自分自身が真っ先にハーフウェーラインにポジションを上げる場面もあった。

しかし、22分にチームはPKを与えてしまう。それをGKのケヴィン・トラップが好セーブで止める。力強いガッツポーズを見せたのは長谷部だった。握りしめる右手に彼のアドレナリンの高さが感じられた。小競り合いが起きれば、後方から猛ダッシュでそこへ向かい、相手選手と言い合う。19歳のフランス人DFオビテ・エヴァン・エンディカがバックパスすると、叱責するように怒鳴る。そんな長谷部の熱が相手を圧倒し、確実にチームメイトを後押ししていた。徐々にフランクフルトがチャンスを引き寄せたが、ゴールは決められず、0-0で前半が終了。

「立ち上がりもそうだったけれど、前半のフランクフルトはコンパクトじゃなかったし、インテルに対してリスペクトしすぎているなと感じた。でも、僕らのほうがいいチームだと思っていたから、ハーフタイムでもそれを訴えた。監督も『恐れる相手じゃない。勇気を持て』と。インテルのクオリティーも10年前のチームとは違っていた。確かに守備陣は手ごわかったけれど」

53分には、PKかと思われたプレーが流されると、誰よりも早く審判の元へ走り、抗議し、長谷部はイエローカードをもらう。すさまじいほどの熱が感じられた。

「勝ちたいという気持ちは、僕は人一倍強いし、僕の年齢的に考えても、こういう(ヨーロッパリーグでの)チャレンジを何回もできるわけじゃない。だから自分が今ここでどれだけできるかを知りたいし、やりたい。そして若い時から変わらず、ピッチの中では情熱を持っていたい。35歳になっても変わらずに。今日もレフェリーに突っかかって、イエローもらいましたけど、そういうところは昔から変わらないから。こういう情熱というのは、自分がサッカーする上で必要な要素なので。もちろんある程度はコントロールしているけれど、(年齢を重ねて今)より失いたくはないものだから」

そんな熱血漢ぶりは、浦和レッズ時代から、実は長谷部の代名詞のようなものだ。しかし、ドイツという場所では、並みの熱血漢では通用しない。日本代表の不動のキャプテンも出場機会に恵まれないこともあった。チームの背骨となるボランチのポジションをつかむまでには、相当の年月を要した。不遇といっても過言ではない時間を乗り越えられたのもその情熱があったからだろう。

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3月2日のブンデスリーガ第24節ホッフェンハイム戦。89分に同点ゴール、アディショナルタイムに逆転弾を決められたホッフェンハイムの指揮官は、監督会見で長谷部の言動について苦言を呈し、「あの品行方正な長谷部が」とドイツ、そして日本にも衝撃が走った。

「もめるもめないというより、はっきりいったらサッカーの中の一部分というだけのことです。ああいう負け方をしたホッフェンハイムが、なにか言いたいという気持ちもわかるし。でも。僕が向こうの監督に言われた言葉もまた、受け入れられる言葉ではなかった。でも、それに対して僕は何も言わない。なぜなら、それもまたサッカーの一部だから」

その騒ぎはなんの影響も及ぼさなかったと、冷静に語った。

■スコアレスにも自信を失わない

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17本ものシュートを打ちながら、ゴールが遠く、試合はスコアレスドローで終了。ホームで引き分けたこともまた、トーナメントを勝ち抜くうえで、不安になる要素ではないという。

「手ごたえも感じたし、アウェーゴールを決められなかった、無失点で終えられたというのは、守備陣としてはよかった。もちろん、セカンドレグは向こうのホームだし、タフな試合になるだろうけれど、ミラノにも1万人近いサポーターが来てくれると聞いていますから」

インテルの10番を背負う、アルゼンチンの新鋭ラウタロ・マルティネスとの攻防は90分間続いた。21歳のストライカーにしてみれば、フランクフルトのゴールを守るために立つ長谷部は老練で厄介な存在だったに違いない。メンタル面でプレッシャーをかけられ、プレーも委縮したはずだ。相手の動きを先読み、つぶしてくる。裏を抜かれても、的確なスライディングで、ピンチの芽を摘んだ。たとえ、長谷部がボールを奪いきれなくても、こぼれ球をチームメイトが拾った。後半はインテルにチャンスらしいチャンスも与えていない。

周囲を動かし、1対1の場面でも負けないだけでなく、ミスがほとんどないプレーは、35歳の今だからこそ、表現できるのかもしれない。『キッカー』はこの試合の採点で、長谷部には最高となる「1」をつけた。

「決勝を考えるのはまだ早い」という。しかしきっと、周囲からの期待は感じ、それに応えたい、使命を果たしたいという思いの高まりが、長谷部を熱くし、その熱がチームに自信をもたらしている。

35歳の挑戦は面白い。

取材・文=寺野典子

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