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岡崎慎司、愛されたレジェンドの退団。新天地は…「欧州に残りたい。プレミア残留も」

レスターでの最後の試合を終えた岡崎慎司は背番号20のブルーのユニホームを脱ぎ、紺色のスーツに着替えてから、ミックスゾーンと呼ばれる取材エリアに姿を見せた。顔は笑っていたが、どこか複雑そうな表情だった。

「この4年、最後まで契約をまっとうしたことは、素晴らしい経験だった。(2015-16シーズンに)優勝したという歴史は残せた。恰好いい言葉ばかりを並べれば美談になるけど、自分のなかではほとんど悔しいことばかり。ストライカーとしていい結果が残せなかった」と心の内を語り始めた。こんな日ばかりはよそ行きの言葉で飾ればいいはずなのに、岡崎はそうしなかった。

■レスターのレジェンド

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5月12日、プレミアリーグ最終戦でレスターはチェルシーと無得点ドローで引き分け、今季9位を確定したあと、本拠地のキングパワースタジアムでシーズンを締めくくるセレモニーが行われた。9カ月間にわたる長いシーズンを終えたレスターの選手たちは、家族やスタッフらと一緒に場内をゆっくり歩いて一周する。スタンドのファンからは惜しみない拍手が送られた。

なかでも契約満了により今季限りで退団する岡崎慎司とダニー・シンプソンには熱い拍手が送られ、名前が繰り返しコールされた。岡崎は長男とともに歩きながら、スタンドに何度も手を振る。場内の大型のスクリーンには各選手からの岡崎とシンプソンへの惜別のメッセージ動画が流された。盛大な送別会のようだった。いかに岡崎が、クラブとチームメート、ファンから愛されていたか改めて思い知らされた。

イングランドでサッカーに少しでも興味のある人で、「オカザキ」を知らない人はまずいない。2015-16シーズンに奇跡の優勝を果たした主力メンバーだったからだ。休まず相手に猛プレッシャーをかけ、体を投げ出してタックルを仕掛け、ボールを絡め取るプレースタイルもよく知られている。他クラブのファンのなかには「ディフェンシブ・ストライカー」、「60分ストライカー」と揶揄する人もいるが、レスターのファンでなくても大抵、「彼こそ本物のファイター」とか「奇跡の優勝の真の功労者」と呼ぶ。

クロード・ピュエル前監督が指揮していた今季前半、レスターにはシーズン終了時に契約を満了する選手が4人いた。岡崎とダニー・シンプソンのほか、主将のウェス・モーガン、クリスティアン・フックス。全員が奇跡の優勝の主力メンバーである。2月にブレンダン・ロジャーズ監督に代わり、モーガンが契約を1年延長。先日、フックスも契約を1年延長した。

一方、岡崎は指揮官から、「これまでの方針通り、契約延長はしない」、「残りの試合で全力を尽くしてくれ」と伝えられた。のちにロジャーズ監督は、岡崎に契約延長のオファーを提示しなかった理由について、「33歳という年齢を考慮した。シンジはセカンドストライカーではなく、ストライカーとしてプレーを望んでいる。残念ながらレスターでは、それは限定的になってしまう」と明かした。クラブは生き物。常に新陳代謝が必要で、世代交代を図らなければならないからだ。

指揮官からこの「最後通牒」を言い渡されると、岡崎はさらにモチベーションを上げ、出場時間は限られていたがレスターのために全力を尽くすことを決意した。実際、練習では誰よりもよく走り回り、ゲーム形式の練習ではよくゴールも決めたという。だからほかの攻撃的な選手を押しのけて試合のメンバー入りし、時間は限定的だったが途中出場でプレー。こうした岡崎の常に全力を尽くす姿に、ロジャーズ監督は「人としてすばらしい。いつも笑顔を絶やさない。試合だけでなく、練習のときからいつもタンクが空になるまで走る」と大絶賛した。これは決してお世辞ではなく、日本人記者へのリップサービスでもなく、本心だろう。

■契約延長も見えていたが…

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実は、岡崎はレスターから契約延長のオファーがもらえたかも、というチャンスが一度あった。昨シーズンのことだ。2017年12月13日、敵地で吉田麻也もフル出場したサウサンプトン戦で2ゴール。これでこのシーズン通算6得点となり、ストライカーにとって契約の見直しの対象となる1シーズン二桁ゴールが見えた時期だった。

「あのシーズンの自分は、そこに手が届きそうだった。中盤からハイプレスをかけながら、ゴール前にも顔を出して二桁ゴール。前半戦が終わったとき、確実にプレッシングサッカーの肝になれるって実感した。手応えはありました。でも自慢できるだけの活躍はできなかった。タラレバですね…」

レスターでの最後の試合のあと、岡崎はその1年半前、セカンドストライカーとして相手にプレスをかけ、守備に貢献しながらゴールも奪うという、独自のスタイルの確立に手ごたえを得ていたことを初めて明かした。

ところが2018年2月、岡崎は練習中に右ひざを負傷。3月に入って戦線復帰したが慢性的に痛みがあり、かつてのような輝きを取り戻すことはできなかった。結局、このサウサンプトン戦以来、約1年半にわたってゴールを決めていない。すでにひざの負傷は完治し、今季21戦(1先発、20途中出場)でプレー。時間にして269分間プレーしたが、無得点に終わった。極端に出番が減ったことと、かつてのような得点感覚が取り戻せなかったことが原因だろう。岡崎がシーズンを通して無得点だったのは、清水エスパルス時代のプロ1年目と2年目以来。もう12~13年前の話だ。ストライカーとしては屈辱的なシーズンを送り、契約更新のオファーも届かず、レスターを去ることになった。岡崎には忸怩たる思いがあったから、この4年間をよそ行きの言葉で飾りたくなかったのだろう。

■欧州に残留し、再び輝きを

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プロ選手たるもの契約がなくなれば退団するしかない。だが、その去り方は様々だ。冷酷な監督やクラブの場合、その去りゆく選手がたとえ功労者であろうと、愛情のかけらさえ感じない送り出し方をする場合がある。監督も記者への返答に気を使わないから、メディアで「退団」、「戦力外通告」といった報道が先行する。こうしたケースでは、選手は人知れず、さみしく私物をまとめて去って行くことが多い。

だがレスターは違った。シーズン終盤、ロジャーズ監督は岡崎が契約満了により退団することを明らかにしたうえで、「岡崎はこのクラブをチャンピオンにした。クラブ史の伝説として生き続ける」、「彼の笑顔、熱意、クオリティーは、このクラブのすばらしい歴史の一部となった」と最大級に称えた。最終戦後にスタジアムで行われた盛大な「送別会」もまた、心温まるイベントだった。

来季について岡崎はいう。

「もしかしたらプレミアに残る可能性もあると思う。そうなればこの悔しさを晴らしたいと思う。(こっちから)チームを探さなくちゃいけないという立場。ただ欧州に残って、自分が一番ワクワクする場所でやりたい。4大リーグでやることもそうだし、フランスだって化け物クラスのFWたちがいる。自分の本能の赴くところに行きたい」

いまは日本へ帰るつもりはなく、欧州5大リーグ(イングランド、ドイツ、スペイン、イタリア、フランス)でのプレーを希望した。まだ打診程度で、具体的なオファーはまだないようだが、「ゴールに向かう気持ちをもう一度、燃やせるようなところで、生きるか死ぬかの勝負をしなきゃ、僕は終わっていくと思う」と語気を強めた。

本来のセンターフォワードとしてか。それともレスターで確立できなかったプレッシングをかけながらゴールも奪うセカンドストライカーか。33歳のストライカーは来季、欧州のどこかで、もう一度ゴールを量産したいと考えている。

取材・文/原田公樹

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