JFLからJ3、J2そしてJ1。4カテゴリで開幕戦ゴールを記録し、一躍時の人となった大分トリニータFW藤本憲明。その経歴を見ると、”苦労人“と言う形容をしてしまいたくなる。佐川印刷で梱包の仕事をしながらサッカーを続け、いま日本のトップカテゴリに上り詰め、得点ランクトップタイに立つ。しかし、本人はどのカテゴリでも昔からまったく変わらず「周囲と合わせるだけだと思ってひたすらやり続けた」だけだと言う。そんな29歳の素顔に触れるべく、話を聞いた。【聞き手:ひぐらしひなつ】
■サッカー部が解散、でも辞めるつもりはなかった
――いま、これまでの人生で一番取材が殺到していると思います。
そうですね。いろんなメディアから取材していただいてます。こんな状況は想像したこともなかったですね。年代別代表に呼ばれたこともなかったし。
――大学卒業後、サッカー選手としてのスタートがJFLでした。
佐川印刷(※)のサッカー部に入りました。いくつか進路の選択肢はあったんですけど、お金の面でもカテゴリーの面でもここが一番だなと考えて選びました。
※佐川印刷SC、2015年にSP京都FCにチーム名変更
――サッカー部の活動以外に、会社で仕事をしていたんですよね。
朝からトレーニングして、それが終わってから午後は会社で印刷物の梱包の仕事をやっていました。自分で言うのもなんだけど、結構手際がよかったんですよ。同じ部署にサッカー部が二人いたので、どうやったら効率よく片付けて早く帰れるかをつねに考えていました(笑)。
――佐川印刷で4年間プレーして、2016年に当時J3の鹿児島ユナイテッドに移籍します。
会社の事情で、2015年限りでサッカー部が解散になったんですよ。ちょうど個人的にも結果を出し始めていた時期だったし、サッカーを辞めるつもりはなくて、どこかよそのチームに行こうとは思っていました。そうしたら、シーズン終了後にいくつかオファーをいただいて。シーズン中に(JFLで)対戦した鹿児島がJ3に昇格するにあたって声をかけてくださったので、そこに決めました。
――その年にいきなり15ゴールでJ3で得点王になって、さらに翌年は24ゴールで2年連続J3得点王に。
それまではサイドアタッカーやトップ下でプレーすることが多かったし、高校時代はサイドバックもやったんですけど、鹿児島に行ったら、得点することが自分にとって一番なんだなと思って。いわゆるストライカーになったのは、鹿児島に行ってからです。
――その活躍が認められて、2018年にJ2の大分トリニータからオファーが届いたんですね。
当時は鹿児島がJ2ライセンスを持っていなかったこともあったし、チームを昇格させることができず、個人昇格という形になりました。
――その年の大分では12得点を挙げて、J1昇格を決めます。今度はチームとしての昇格でしたね。
大分はちょっと特殊な戦術で戦っているので、フィットするのが難しかった時期もありましたけど、自分とチームメートとの理解を深めたことで結果を出すことができました。
――珍しい経歴を見て「のし上がってきた苦労人」とか「シンデレラストーリー」とか言われていますが、自分としてはどう思っているんですか。
あまり意識したことはないですね。いつも、どんな状況に置かれても「なんとかなる精神」でやってきましたから。
©J.LEAGUE■鹿島戦は特別な印象に残る一戦
――開幕前に、「J1のビッグスタジアムでゴールを決める」と言っていましたが、開幕戦であるアウェイの鹿島アントラーズ戦でいきなり有言実行でしたね。
あの鹿島戦は多分、一生のうちでも特別に印象に残る一戦になりましたね。J1開幕戦で、相手はアジア王者。終わったばかりのときはそこまで感慨はなかったけど、いま思えば、という感じです。
――あのゴールを決めた後は。
すごかったですよ。LINEとかメールとかでお祝いのメッセージをたくさんもらって。数年ぶりに連絡が来た友達とか、「お前誰やねん」くらいひさしぶりの知り合いからとか。あのとき「今後はもうゴールを決めるのが普通になって、こんなにお祝いメッセージが来ないようにしたい」って思ったんだけど。
――あれから7試合で6得点決めて、第7節終了時点でJ1得点ランキングトップ。状況は変わりましたか。
もうメッセージは全然減りました。ゴールを決めるのが普通になって、(第7節の)札幌戦なんて全然メッセージは来なかったです(笑)。
――無名だったストライカーの突然のブレイクで、だいぶ注目されましたが、ストレスとか快感とかは。
まったく気にならないですね。意識していないです。
■プライベートはイクメン
――最近、青森山田高時代の選手名鑑の写真がSNSで出回って「イケメン」と騒がれていましたね。人気があったんですか。
そうなんですか、全然知らなかった(笑)。全然そんな人気ないですよ。
――初恋はいつ?
中学時代ですかね。あまりそういう方面に積極的なタイプじゃなかったです。サッカーやってたし、限界がありますよね(笑)。
――プライベートの時間はどんなふうに過ごしてたんですか。
映画に行ったり服を買いに行ったりしてました。服はそのときの流行りで、リーバイスとかエドウィンとかのジーンズにいろんなTシャツを合わせたり。
――サッカーを見に行ったりはしなかったんですか。
試合はあまり見なかったですね。ハイライト映像とか、「やべっちFC」とか「スーパーサッカー」とかしか見ていなかったです。
――その「やべっちFC」に、こんなに出演する側になるとは。
そうですね。すっかり準レギュラーくらいですよね(笑)。
――JFL時代に、すでに結婚されていたんですよね。
はい、1年目に、1年弱くらいおつき合いした相手と。特に結婚への決め手があったとかではなく、流れで。あまり深く考えてなかった気がします(笑)。
――育児が趣味ということですけど。
5歳と3歳と1歳の、3人の女の子のパパです。七五三のとき大変です。全員パパっ子だけど、いちばん上の子はもうテレビとかネットの映画やドラマとかを一人で見るようになりました。2番目の子は僕の姿を見るとすぐに寄ってきます。
――似てるんですか。
顔は似てると思いますね。あと、外面がいいところ(笑)。家では全然そんな感じじゃないのに、幼稚園ではめちゃめちゃいい子にしてるみたいで、先生からも「本当に手がかからない娘さんですね」って言われる。僕が子供の頃はそんなんじゃなかったのに……いや、やっぱりその頃から外面はよかったかな。
――ご家族ではよく出かけたりするんですか。
よく買物に行ったりしますよ。
――社会人からJリーガーになって家族と一緒にいられる時間も増えたでしょう。
練習から帰ってゴハンを食べてちょっとゆっくりしてたら、すぐに子どもたちが帰ってくるし、結局、忙しいのは同じだなと思い知りました(笑)。

■一緒にプレーしてみたいのは久保建英選手
――サッカーはもちろんですけど、何に対しても反応が早いですよね。
そうかな。何かありましたっけ。自分ではそんな自覚ないけど。
――クラブ公式ツイッターが間違えて怒りマークつけてツイートしたとき、真っ先にそれを拾いましたよね。
ああ、あれね(笑)。いや、あれ見て「何これ面白いやん」って思ったから。ストライカーの資質とかとは全然関係ない部分ですね。
トリニータに来てからに限らず、JFL時代から僕は笑いにシビアなところがあったんですよ。チームメートに完成度の高いものを求めてた。そういうとこですかね。
――日本代表でプレーすることを目指してますか。
最近それ、めちゃめちゃ訊かれるんですよね。でも今まで年代別の代表にも選ばれたことがないから、意識するも何も…という感じです。雲の上の存在だったから。入るなんて考えたことさえない。みんな代表、代表って言ってるけど、本人は「そんなにですか?」と思ってます。
――J1という日本では最高のステージまで上ってきて、ここから先、目指すのは。
とりあえずまだ、トリニータを残留させることしか考えていないですね。トリニータはJ1のチーム、というのが定着するまでには時間がかかるかもしれないけど。
――Jリーグの中で一緒にプレーしてみたい選手はいますか。
久保建英選手。見ていて「どんだけうまいの!」って思います。なんであんなにうまいんかな? あと、マリノスの仲川(輝人)選手は足が速いし、三好(康児)選手もうまいですよね。うまい選手とプレーしてみたいです。
取材・文=ひぐらしひなつ
ゴールを決めたときに見せる「LT」ポーズ。その意味は「LOVE TRINTA」。大分トリニータは、4月27日第9節をセレッソ大阪とヤンマースタジアム長居で、5月4日には第10節をサガン鳥栖とホーム・昭和電工ドームで戦う。
Profile
FW 10藤本 憲明(ふじもと・のりあき):1989年8月19日生まれ、29歳。175cm/69kg。大阪府出身。ガンバ大阪堺ジュニア-ガンバ大阪堺Jrユース-青森山田高-近畿大-佐川印刷SC-佐川印刷京都SC-SP京都FC-鹿児島ユナイテッドFCを経て今季大分トリニータに加入、J1通算8試合出場6得点、J2通算26試合出場12得点、J3通算57試合出場39得点。
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「※」は提携サイト『 Sporting News』の記事です

