■卓越した跳躍力と空間認識力
北海道コンサドーレ札幌とのホームゲームで、リーグ戦4連勝を目指すベガルタ仙台の先制ゴールをもたらしたのはセンターバックのシマオ・マテだった。
蜂須賀が獲得した右のCKから一度シマオ・マテがマーカーの鈴木武蔵との競り合いを制してヘディングすると、ボールはキム・ミンテにクリアされて今度は左からのCKに。永戸勝也が左足でボールを蹴り、ニアに仙台の選手たちが走り込む向こう側でタイミングよく鈴木を外しながら跳び上がったシマオ・マテがヘッドで合わせると、GKク・ソンユンの反応を破ったボールがゴール中央に突き刺さった。
「勝也から素晴らしいボールが来て、練習通りに決めることができて本当に嬉しい」と振り返るシマオ・マテは第3節のヴィッセル神戸戦でも、やはり永戸の左足からCKのゴールを決めている。180cmと特別に大柄なサイズではないが、卓越した跳躍力と空間認識力が空中戦の強さにつながっているようだ。
試合はクロスに鈴木が折り返し、アンデルソン・ロペスに押し込まれて同点となるが、後半19分に道渕諒平のボール奪取からショートカウンターで関口訓充のゴールに結びつけ、そのまま粘り強くリードを守りきった。仙台は4連勝で一時は降格圏に足を踏み入れていたところから10位まで浮上した。
その最初は名古屋グランパスに3-1で勝利した試合だったが、渡辺晋監督がシマオ・マテをセンターバックとして起用し始めたタイミングだ。もちろん彼の活躍が勝因の全てではないが、相手のターゲットになる選手を空陸のデュエルで封じ、従来ボランチで使われていた選手らしい組み立てで攻守に良い効果を生んでいる。
最近の結果について「全員が本当に戦って、同じ方向を見ているので、その成果だと思います」とシマオ・マテ。札幌戦も185cmの鈴木、190cmのジェイ、185cmのアンデルソン・ロペスという"トリプルタワー"の圧力を前面に押し出して来たが、シマオ・マテと相棒の平岡康裕が両サイドバック、ボランチと協力しながら跳ね返し、防ぎきれないところはGKシュミット・ダニエルがカバーした。
■上位浮上のキーマン
ギリシャの名門パナシナイコスやスペインのレバンテでプレーし、モザンビーク代表としても豊富な経験を持つシマオ・マテはカタールのアル・アハリを退団後にフリーで仙台に入団した。第2節の横浜F・マリノス戦で[3-4-2-1]のボランチとして初出場。そこから3試合連続でスタメン出場するもチームは良い結果が出ず、その後は第6節のサガン鳥栖戦で終盤に登場したものの、そこから6試合にわたり出番がなかった。
激しい打ち合いの末に敗れた第13節の清水エスパルス戦で後半25分から投入されたが、結局3-4で敗れてしまった。そこから渡辺監督はテコ入れを図り、名古屋戦でセンターバックに経験豊富な平岡、そしてシマオ・マテを抜擢した。
J1でも抜群の攻撃力を誇る名古屋に対して粘り強く守りながら少ないチャンスをものにして3-1と勝利すると、代表ウィーク明けの松本山雅FC戦にもそのまま平岡とシマオ・マテのセンターバックでディフェンスラインを形成し、リーグ戦では9試合ぶりの無失点勝利を飾った。そして首位のFC東京を相手に快速2トップを封じるなど、ディフェンスの踏ん張りを象徴するような2-0の勝利で軌道に乗り、札幌戦につなげた。
全ての試合で完璧な対応をできているわけではない。実際に札幌戦の失点もシマオ・マテのポジショニングがややギャップを作ったところで鈴木とアンデルソン・ロペスに入られており、周囲の選手にも影響した部分はあった。しかし、そこから平岡とマークを受け渡しながらジェイ、鈴木、アンデルソン・ロペスを代わる代わる、特には近い距離でゴール前に襲いかかる大型ストライカーを相手にしのぎきり、勝ち越すゴールにつなげたのはシマオ・マテの奮闘によるところが大きい。
好調を続けてついに一桁順位を狙えるポジションまで来たが、度重なる好セーブで札幌戦の勝利にも貢献したシュミット・ダニエルがベルギーのシント=トロイデンに移籍が決まり、仙台でのプレーはラスト2試合。相手は浦和レッズ、さらに鹿島アントラーズとなるが、ベガルタにとっては上位進出への軌道に乗せられるかの正念場。ここまでチームを支えて来た守護神とともにシマオ・マテの活躍にも期待がかかる。
文＝河治良幸
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