■カップ戦でのタイトルを狙う
フランクフルトが、新たなる歴史を刻むときが来た。
1899年にクラブ創設。1963年から始まったドイツ・ブンデスリーガには初年度から参加するも、フランクフルトはいまだにマイスターシャーレ(リーグ優勝)を得たことはない。今季も第24節終了現在で首位・ドルトムント、2位・バイエルンとは勝ち点差14の5位でリーガ制覇は厳しい状況となっている。
一方で、このクラブには幾多のカップ戦で神通力を発揮してきた輝かしいキャリアがある。記憶に新しいのは昨季のDFBポカール(国内カップ戦)で、フランクフルトは首都・ベルリンのオリンピアシュタディオンにて“盟主”バイエルンを3-1で下してクラブ史上30年ぶりの美酒に酔った。これでフランクフルトは通算で5度目のDFBポカール制覇。また、彼らはヨーロッパシーンでも1979−80シーズンにUEFAカップ(現・UEFAヨーロッパリーグ)を獲得したことがあり、それなりの実績は築き上げている。
しかし過去を振り返ってみても、これほどこのクラブへ期待の念を抱き、選手一人ひとりのプレーに心酔する時代はあっただろうか。それほどまでに、今季のフランクフルトには充実した気配が漂う。
■各ポジションに安定感

現在のフランクフルトの好調ぶりは強力3トップの存在抜きに語れない。たとえ対戦相手が守備を固めても、セバスチャン・アレ、ルカ・ヨヴィッチ、アンテ・レビッチの3人が個人の力で状況を打開してしまう。アレは空中戦、ヨヴィッチは決定力、レビッチはドリブルと、3人が三者三様の持ち味を発揮するから、対戦相手が対策を施しても様々な手立てでゴールを打ち破れる。
ただ、いかに攻撃陣が豪華でも、チーム全体のバランスが適切に保たれなければ結果を導くことなどできない。その意味では、今のフランクフルトは中盤、ディフェンスライン、そしてGKも含めて盤石の布陣を築き上げている。ミヤト・ガチノヴィッチとフィリップ・コスティッチという2人の攻撃的MFは献身的なランニングとパワフルな前への推進力で味方3トップをフォローし、懸案だったボランチは今冬にドルトムントからセバスティアン・ローデをレンタルで獲得して補完に成功した。
バックラインにもブンデスリーガでの経験が豊富なオーストリア代表DFマルティン・ヒンターエッガーをアウクスブルクからレンタルで獲得したことで、キャプテンのダビド・アブラームがベンチに追いやられるほどに戦力が充実した。そして自陣ゴール前にはドイツ代表歴があり、リーグ・アンのパリ・サンジェルマンからレンタルで古巣へと戻ってきたGKケヴィン・トラップが鎮座している。
そんな中で、長谷部誠は絶対的なチームリーダーとして仲間を牽引している。アディ・ヒュッター監督から任された3バックのリベロは今や、彼の個性を際立たせる適任ポジションとして認知されている。若き頃から責務を負ったミッドフィールダーでの経験を最後尾で生かし、相手の激しいプレス&チェイスにも一切動じずに長短・広角にパスを駆使する長谷部のプレーには威厳が漂う。安易な選択に陥らず、チームの攻撃を促進させる最善手を模索し続ける長谷部のプレーアクションに呼応して、味方のプレーレベルも極限まで高まっていく。
■多国籍軍で安定感もたらすのは日本人
Getty Imagesまた『多国籍軍』とも称される今季のフランクフルトを長谷部が心身両面で統率している点も特筆すべきだ。例えば2月21日のUEFAヨーロッパリーグ・ラウンド32のシャフタール・ドネツク(ウクライナ)戦(○4-1)で先発したメンバーの国籍はセルビア3人、ドイツ3人、フランス2人、そしてアルゼンチン、オーストリア、日本がひとりずつだった。11人の平均年齢は26.2歳で、30代は長谷部(35歳)、そしてキャプテンを務めるアブラーム(32歳)のふたりだけ。しかも最近はアブラームがベンチに回ることが多いため、その平均年齢は下降の一途を辿っている。
そんなチームの中で、長谷部の影響力はますます増している。象徴的だったのはブンデスリーガ第24節のホッフェンハイム戦での出来事だ。後半終盤までに1-2とビハインドを負う中で89分にFWアレが同点ゴールを決めて自己を誇示するようにゴールパフォーマンスを行おうとすると、長谷部が全速力でアレに駆け寄って『まだ試合は終わってない! もう1点取って勝つんだ!」とばかりに彼の体を引き寄せ帰陣させた。キャプテンマークを巻く長谷部の闘志に共鳴して踵を返したアレの所作を見ても、このチームのリーダーが誰なのかは明らかだった。
現在、ドイツメディアを賑わしているホッフェンハイム戦での長谷部の所作についても問題視する必要などない。主審が真横で控える中で治療する相手選手や医療スタッフに対してピッチ外へ出るよう促すのは死力を尽くして闘う者の通常の行為だし、後半アディショナルタイムに逆転ゴールを決めて歓喜するのも選手が振る舞う当然の所作だろう。相手側からすればフランクフルトのキャプテンの一挙手一投足に気分を害したかもしれないが、フランクフルトにとってはむしろ、チーム最年長にしてこれほどまでに勝負に執着する主将の姿勢に頼もしさを覚えたはずだ。
■インテル戦は長谷部のポジションが肝に
(C)Getty Images一方で、ここ数試合のフランクフルトは緊急事態に陥り、チーム編成の再考を余儀なくされている。最も悩ましい事象は今季開幕から人材難を抱えていたボランチの選手が負傷で戦線離脱を余儀なくされている点だ。負傷中のルーカス・トッロに加え、後半戦に入ってからはチームの屋台骨を支えていたジェルソン・フェルナンデス、そして新戦力のローデも一時負傷で欠場を強いられた。そこでヒュッター監督が先述のシャフタール・ドネツクとの第2戦でボランチに指名したのが長谷部だった。
バックラインには19歳の新進気鋭・エヴァン・エンディッカに加えて新戦力のヒンターエッガー、そしてアブラームも控えているために人材は整っている。そこでヒュッター監督は歴戦の猛者で、中盤でチーム全体をコントロールできる長谷部の能力に全てを託し、窮状からの脱却を図ったのだ。
長谷部のボランチ起用はここまでシャフタール戦、ブンデスリーガ第22節・ハノーファー戦、同第23節・ホッフェンハイム戦で3連勝を記録したことからも成功と言える。ただ長谷部自身はチームの現状をしっかり認識していて、特に過密日程を強いられるリーガとELの両輪を見据えた戦いの中で課題を見出している。アウェーのハノーファー戦(○0-3)後のミックスゾーンで、彼はこんな私見を述べていた。
「今日は今シーズンの中でも最も内容の悪いゲームでした。ELのゲームから中2日で、チーム全体の動きも鈍かったですね。自分もボランチとして2戦連続のプレーでしたが、やはり運動量が求められる中盤は厳しい(笑)。でも、それでもこのポジションを任されているわけですから、課題を克服する努力は積み重ねないといけません」
今回のUEFAヨーロッパリーグ・ラウンド16のホーム・インテル(イタリア)戦で長谷部に与えられる役割は今のところ不透明だ。3月2日のホッフェンハイム戦からは中4日と、今回はそれなりにインターバルを得られている。
また負傷中だったMFフェルナンデスが全体練習に合流したことで、長谷部が再びリベロを任される可能性もある。そもそも今季のフランクフルトは最後尾でタクトを振るう長谷部の影響力がチーム全体のレベルを引き上げてきた事実がある。ホッフェンハイム戦の試合終了間際にアレヘ通したスルーパスは見事の一言で、中盤での彼の存在感が高まっているのも確かだが、その攻撃特性はリベロの位置でも十分に生かせる。
直近で長谷部がリベロを務めたのはリーガ第22節のボルシア・メンヘングラードバッハ戦だが、このときの彼は右にヒンターエッガー、左にエンディッカを従えて守備を安定させていて、リーガ3位の相手との真っ向勝負に臨んで1-1のドローに貢献している。長谷部のリベロ起用はやはり攻守両面でチーム力を促進させると捉えるべきで、その最適解を崩すべきではないと考える。
今回のUEFAヨーロッパリーグの相手はイタリア・セリエAでユヴェントスの独走を許しつつ4位に付けるインテル。相手は確かに古豪だが、今のフランクフルトが臆することもない相手だ。ここでも代表での国際経験が豊富な長谷部の力が生きるだろう。まずはホームの『コメルツバンク・アレーナ』で先勝、そして第2戦の『スタディオ・ジュゼッペ・メアッツァ=サンシーロ』での戦いをしのげば、フランクフルトにとって39年ぶりとなるヨーロッパでの戴冠を視界に捉えられるだろう。
取材・文=島崎英純
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