■熊谷アンカー、柔軟性ある布陣に
なでしこジャパンは、6日間の国内トレーニングキャンプを国内組中心に行い、残る欧州組が現地で合流して2日間で初戦を迎える。合わせる時間は少ないが、女子ワールドカップ（W杯）のメンバーが中心であるため、共通理解や描くサッカーはしっかりしている。負傷のため不参加となった藤野あおば（日テレ・東京ヴェルディベレーザ）に代わって追加招集された中嶋淑乃（サンフレッチェ広島レジーナ）が加わったが、攻守にアグレッシブなサッカーには変わりはない。
一番の懸念材料は1週間で3試合の過酷な日程だ。大胆なターンオーバーや早い時間帯での選手交代なども必要になってくるだろう。池田太監督は「中2日で3試合、疲労やバランスを見ながら選手を考えていこうと思います」と話す。GKを含めて柔軟に交代枠を使いながら連戦を制したいところだ。
システムはW杯で戦ってきた3－4－3から、4－3－3に変更する予定だ。9月23日のアルゼンチン女子代表との国際親善試合では、DF熊谷紗希（ASローマ／イタリア）がアンカーの位置に上がり、センターバックには南萌華（ASローマ／イタリア）と高橋はな（三菱重工浦和レッズレディース）が入った。中央での守備が強化されてボール奪取しやすくなり、展開力に優れた熊谷が一つ高い位置に入ることでチャンスボールを自在に配給するだろう。状況よっては、3バックに変更することも容易にできる柔軟性を持ち合わせた陣形だ。
■ボールを持った中で何ができるか？
Getty Images今回、なでしこジャパンが対戦する3チームはいずれもFIFAランクが大きく下回るいわば、“格下の相手”だ。主導権を握ったなかでどう戦うかが見どころになるだろう。指揮官も「相手に合わせるのではなく、日本の良さを出していく。ボールを持つ時間が長くなるかもしれないが、相手の思い切ったカウンターやチャンスを作らせないようにしたい。攻撃の部分ではチャンスをスコアにつなげるよう、決定機の精度を高めたい」とした。守備的になる相手に手こずる時間帯もあるだろうが、ゴールショーを見せてくれるだろう。
初戦のインドについて池田監督は「一人ひとりハードワークするチーム。初戦でもあるので、しっかりゲームに入りたい」という。2戦目のウズベキスタンは、先日のアジア競技大会で4位になったチームだ。多人種国家でロシア系のフィジカルが強い選手もいる。湯郷ベルや長野パルセイロで指揮を執った経験を持つ本田美登里監督が昨年2月から率いている。3戦目のベトナムは、アジア競技大会で対戦して7－0で日本が勝利しているが、その試合に出場していた中嶋は「対人も結構強かったです」と印象を語った。
■リオ五輪、アジア最終予選での悪夢
Taka Nishinaまた、来年2月に行われる最終予選である3次予選の組み合わせも気にしながら戦わなければならない複雑さもある。レギュレーション（※）が複雑であり、W杯ベスト4のオーストラリアやアウェイで厳しい戦いが予想される北朝鮮と対戦する可能性も含んでいる。
池田監督は「3次予選でどこと当たるかが、2次予選の結果で決まる。3試合目（対ベトナム）は他のグループの結果をみながら、どう戦うのかを準備する必要がある。いずれにしても3次予選に繋がると考えて臨んでいたい」という。
2016年に行われたリオ五輪のアジア最終予選では、前年のカナダＷ杯で準優勝したメンバーを中心に擁しても、3位に終わって出場権を逃した苦い経験もある。アジアのパリ五輪出場切符はわずか2枚。厳しい戦いが待っている3次予選に向けて、攻撃パターンを増やしながら経験を積み上げる3試合になるだろう。（取材・文＝砂坂美紀）
※パリ五輪予選レギュレーション
今回の2次予選では以下12チームが3チームずつ3組に分かれて総当たりで対戦。
グループA：オーストラリア、チャイニーズ・タイペイ、フィリピン、イラン
グループB：中国、韓国、タイ、朝鮮民主主義人民共和国（北朝鮮）
グループC；日本、ベトナム、ウズベキスタン、インド
各組1位と、2位チームのうち成績最上位チーム、計4チームが3次予選に進出。3次予選では4チームが2チームずつ2組に分かれて来年2月にホーム＆アウェイで対戦、各勝者のみが本大会に出場決定する。