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コパ デル レイ

不可能な戦いに勝つ時、何よりも輝く――。創立100周年バレンシア、永遠に満足しない反乱者

14:10 JST 2019/05/25
valencia

不可能にも思える戦いに勝利するときこそ、フットボールは何よりも輝く。クラブ創立100周年にコパ・デル・レイ決勝に臨む今季のバレンシアは、それを何よりも体現しているのではないか。

100年という日々すべてを実感できる人間などほとんどいないとしても、バレンシアの選手たち、コーチ陣、ファンにはその言葉がちらつき続けた。たとえシーズン中にどれだけつまずこうと、それを大々的に祝うところまでこぎ着けたのである。バレンシアにとってコパ決勝進出は、じつに11年ぶりのこと。最後にそこまで到達したのはロナルド・クーマン率いるチームであり、そのときには優勝(最後のメジャータイトル獲得でもある)も果たしたものの、クラブ周辺はそれを喜ぶどころではなかった。

クーマンは24試合で4勝しか収めることができなかったばかりか、ミゲル・アンヘル・アングロ、サンティアゴ・カニサレス、ダビド・アルベルダを戦力外扱いとしたために大きな喧騒を生み出し、コパ優勝のわずか3日後に解任された。彼は解任された直後に「バレンシアはこれから5年間、どんなタイトルも勝ち取れない」と吐き捨てたが、バレンシアはその倍以上の年月を経て、創立100周年に新たな希望を見たのだった。

■危機

今季のバレンシアは、何度もタオルを投げられるべき局面を迎えている。リーガ前半戦の成績は4勝11分4敗と、とりわけ得点力不足(19節まではわずか17得点)が響いたことでチームは沈んでいった。マルセリーノ・ガルシア・トラルはそうした不振に陥った理由について、「得点する状況は生み出していたが、ポストや相手GK等々がそれを阻んだ。点を決めなければ、もちろん試合には勝てない。勝てないことで、選手がどんどん自信を失っていくという負の連鎖が導かれてしまった」と振り返っている。

この不調の中、引き分けの山の中で、会見に出席するマルセリーノの顔は睡眠不足と疲労を色濃く反映するようになったが、彼が解任される可能性は実際あった。トリガーは、引かれる寸前だったのだ。

しかし、目の下に隈が刻みつけられたこの男も選手たちも、その目は死んでおらず、危機的状況を乗り越えるためあがき、あがき続けた。象徴的であったのは1月12日に行われたメスタージャでの第19節バジャドリー戦だ。1-1とまたも引き分けに終わったその試合で、ゴールを決めた主将パレホはマルセリーノに駆け寄って、二人は抱き合った。この抱擁はパレホ、ひいては選手たちの「彼を解任してくれるな」というメッセージだったのだが、その思いはゼネラルディレクターのマテウ・アレマニーにはしっかりと響いている。

クラブ会長のアニル・マーシーはマルセリーノをギロチンにかけようとしていたが、アレマニーは彼にチームを任せ続けるべきだとの考えを固辞し続けた。そしてオーナーであるシンガポール人投資家ピーター・リムは、マーシーよりもアレマニーの考えに信用を置いたのだった。

■復活

スペインのクラブ、ことバレンシアにおいて、危機的状況の中での監督解任は当たり前のことだが、この100周年のシーズンには慣例に習おうとしなかった。その結果として現れ出たのは、まるでスターウォーズのようなフエルサ(フォース)である。チームはシーズン後半戦に入ってから、見事再起を果たした。リーガ後半戦の成績は11勝5分け3敗でチャンピオンズリーグ出場圏4位でフィニッシュし(今季4位に位置したのは37節と最終節のみ)、コパでも準々決勝でヘタフェ、準決勝でベティスを下して決勝までの階段を駆け上がった。

パレホは最高のパレホとなり、ロドリゴは点取り屋としての嗅覚を取り戻し、ガメイロもかつてのような輝きを放ち、負傷の影響をひきずっていた怪物グエデスも復活……。リーガ後半戦の得点数は、前半戦の2倍となる34得点を記録するに至っている。とりわけコパ準々決勝ヘタフェ戦のセカンドレグは、皆の心に深く刻まれるものとなった。敵地でのファーストレグを0-1敗戦で終えていたバレンシアは、開始1分にホルヘ・モリーナの先制点を許したものの、ロドリゴがその後にハットトリックを達成。逆転弾と追加点はそれぞれ91分、94分と、まさに劇的な時間帯に決まった。

あの逆転勝利の喜びは何物にも代えがたいものだった。試合後、マルセリーノはピッチ上で涙を流し、メスタージャの観客は歓喜はとどまることを知らず、何千にもの人々がスタジアムから去るチームの面々を待ち受けた。マルセリーノはこの試合を境に、チームがようやく上昇気流に乗ったとの確信を得ていた。「あの試合で、選手たちは5000人以上のファンから1時間以上に渡って喝采を送られ続けた。それは選手たちの気持ちを一新させ、自分たちを信じるきっかけとなった。それがパフォーマンスのレベルと結果、いや、パフォーマンスはほとんど変わっておらず、何よりも今後手にする結果に影響を与えることになった」

■支持

メスタージャに住まうバレンシアニスタたちは要求が何よりも厳しく、しかしチームとともにあろうとするときには、スペイン、ひいては世界最高の情熱を放出する。そして今季の彼らは、後者の側にあろうとしていたように思う。ピーター・リム到着後も迷走を繰り返してきた中でファンは理解を示していたし、加えてパレホとマルセリーノの抱擁はアレマニーのほか、彼らの心にも届いていたようだった。

「1月から、私たちは各試合に命を捧げてきた。私たちはひどく不安な日々を乗り越えてきたんだ」。ベティスとのコパ準決勝を突破した後、私に対してそう語ったのはマルセリーノとは切っても切り離せない相棒である助監督ルベン・ウリアだったが、実際的にそこからバレンシアは止まらなかった。ヨーロッパリーグでは準決勝でアーセナル相手に敗れはしたものの、あきらめずに戦い抜く姿勢は、クラブ創立100周年にふさわしいものだ。コパ決勝のバルセロナ戦は、そうしたチームへの褒賞そのものである。

■褒賞

「僕たちは解放されたんだ」。グエデスはこのバルセロナとの一戦前にそう語ったが、それが現在、チーム全体が手にしている感覚だ。重い石を背中に乗っけていたバレンシアは、それを川に放り投げた。もう、重圧はない。不安はない。あるのは希望とフエルサである。

もちろん、マルセリーノは今季の最後の一戦で勝利を狙う。「自分が見逃しているディテールは常に存在する」と、この1週間、エルネスト・バルベルデ率いるチームのプレー映像を何度も何度も見返している。今季、バルセロナとのリーガでの対戦は2試合とも引き分けに終わったが、決着をつけることはできるのだろうか。

クラブの精神が体現されるべき創立100周年のシーズンは、まだ最後の仕事が残っている。もちろん、メッシ相手に勝利できるならば、どんなシーズンでも盛大に祝うべきだ。が、創立100年で成し遂げるのと101年に成し遂げるのでは、やはり手にする感覚は異なる。ビッグクラブの中のスモールクラブ、アウトサイダーの中のビッグクラブという曖昧かつ納得のいかない定義に抗い続ける、永遠に満足することができない存在、バレンシア。反乱者として、最後に強烈かつ痛快なカウンターを決めてほしいものである。

ケ・ラ・フエルサ・テ・アコンパニェ(フォースと共にあらんことを)。

文=ディエゴ・ピコ(スペイン『マルカ』バレンシア支局)
企画・翻訳・構成=江間慎一郎

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