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「不可能じゃない」 野戦病院化&ポグバ不在のユナイテッド…PSG相手の逆転突破へ一筋の光明

「難しい山登りだ。だが、不可能ではない」

オーレ・グンナー・スールシャールは、パリ・サンジェルマン(PSG)とのチャンピオンズリーグ(CL)ラウンド16ファーストレグ終了後、相手が「違うレベルにあった」と認めつつも、セカンドレグでの逆転に意欲をのぞかせた。

だが、ユナイテッドの逆転突破は絶望視されている。ファーストレグで退場となったポール・ポグバは母国への帰還が叶わず、アンデル・エレーラ、ネマニャ・マティッチと合わせて中盤はレギュラーが不在。アントニオ・バレンシア、マッテオ・ダルミアン、フィル・ジョーンズ、フアン・マタ、ジェシー・リンガード、アントニー・マルシャルに加えて、直近のサウサンプトン戦で負傷したアレクシス・サンチェスも遠征メンバーからはずれた。

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それでも、スールシャールの姿勢は変わらない。終盤のロメル・ルカクのゴールにより3-2で逆転勝利したサウサンプトン戦後、ノルウェー人指揮官は「私がいた頃の、かつての日々が戻ったような戦いぶりだった。サポーター、チーム、クラブは自信と信念をもって試合に臨めている。PSG戦でも同じだ。困難なタスクだが、我々はその仕事ができる」と、その一貫した態度を崩すことはなかった。

とはいえ、「違うレベルにあった」PSGを相手に、“自信”や“信念”だけで対抗することはできない。野戦病院化する中、スールシャールはフランス王者相手に戦う準備ができる状況なのだろうか。

■災い転じて福となす

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普段ならば極めて重要な先発の人選だが、スールシャールが持つカードは限られている。サウサンプトン戦からメンバー変更はほとんどないはずだ。ダビド・デ・ヘア、ビクトル・リンデロフ、ルーク・ショー、アシュリー・ヤング、スコット・マクトミネイ、アンドレアス・ペレイラ、マーカス・ラッシュフォード、ルカクが当確。カギは、レギュラー3選手がいない中盤の構成だ。

サウサンプトン戦では、サンチェスを“偽9番”としてトップ下に置く、中盤ダイヤモンド型の4-4-2を採用。ラッシュフォードとルカクはそれぞれ、左右のウイング兼ストライカーの役割を担った。

スールシャールは就任後、トッテナム戦(第22節)、リヴァプール戦(第27節)、アーセナル戦、チェルシー戦(ともにFAカップ)といったプレミアTOP6とのビッグゲームすべてでこのシステムを採用。3勝1分けの成績を残した。

PSGとのファーストレグでは、このシステムは採用しておらず、ラッシュフォードを純粋なセンターフォワードとする4-3-3を選択。しかし、インサイドハーフのポグバはマルキーニョスの徹底マークで封じ込められ、ラッシュフォードも百戦錬磨のチアゴ・シウバと身体能力の高いプレスネル・キンペンベを一人で相手にする酷な状況下で精彩を欠いた。

セカンドレグでは中盤ダイヤモンド型の4-4-2での再戦が期待されたが、現在の状況では中盤の枚数が足りない。これまで、“偽9番”を務めたのはリンガードとマタの2人。彼ら二人の欠場は決定している。

さらに、サンチェスも、サウサンプトン戦の52分に負傷のためプレー続行不可能となり、ジオゴ・ダロットと交代。だが、このアクシデントがサウサンプトン戦だけでなく、PSG戦に向けた光明を見いだすことになったのだ。

■PSG戦への好材料

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ダロットを右ウイングとして起用したスールシャールは、ペレイラをトップ下に移し、ポグバとマクトミネイの2センターに。2トップの一角であるラッシュフォードには、守備時のみ左サイドをケアさせつつ、積極的に最終ライン裏を狙わせた。すると、この采配が契機となり、停滞していたユナイテッドの攻撃が活性化。そこから3ゴールを生み出したユナイテッドは、スールシャール体制下のリーグ12試合での成績を10勝2分けとした。おそらく、スールシャールはポグバをフレッジに変更する以外、ほぼ同じメンバー構成でPSGとのセカンドレグに臨む。

サウサンプトン戦、19歳のダロットは右サイドバック時よりも生き生きとプレーし、1アシストを記録。デュエル勝率100%、決定的な2つのパスを供給し、持ち味である右足の鋭いクロスで相手の脅威となった。クロスに特長があるダロットと、高い位置で自ら仕掛けることができるヤングは守備時においても状況に応じてポジションを入れ替えることが可能。PSGのストロングポイントであるフアン・ベルナトとアンヘル・ディ・マリアの左サイドを抑える意味でも期待できる。

また、インサイドハーフとしてはプレー精度に課題があったペレイラも、リスクが小さいトップ下でよりダイレクトなプレーが増え、1ゴール1アシストを記録。決定的なミスを犯した1月のバーンリー戦後も見捨てずに起用を続けてくれた指揮官の期待に応えた。スールシャールが「彼は6番(守備的MF)よりも8番や10番(攻撃的MF、トップ下)の選手だとわかった」と語った通り、現状ペレイラに関しては守備的なタスクを減らせることがベター。PSG戦でも攻撃的なポジションで起用すべきだ。

左サイドに特定の選手を張らせないことであえて作ったスペースは、もともと攻撃性能が高いショーが活用。さらに、今季中盤まで“オーバーウェイト”と批判されてきたルカクは、身体を絞ったことで得点力だけでなく、ポストワークの質と確度も本来のものを取り戻してきた。ルカクがコンディションを上げたことは、強力センターバック陣を擁するPSGと対戦する上で非常に大きい。

■「何度も偉大なカムバックを果たしてきた」

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PSG戦前のスールシャールの力強い言葉は、この厳しいチーム状況の中で、『何とか挑戦できる』というところまでもっていける光をサウサンプトン戦の後半にみたことも影響しているはずだ。

そして “童顔の暗殺者”はゲームプランについて、「2-0よりも4-2で勝利することを狙う。現在(0-2ビハインド)よりも良い状況でハーフタイムに入りたい。1-0リードでハーフタイムを迎えることができれば、後半に何が起こってもおかしくない」と口にしている。前半は要所でハイプレスをかけつつも、基本的には爆発的なスピードを誇るキリアン・ムバッペやディ・マリアにスペースを与えないように最終ラインを上げすぎず、コンパクトな守備からラッシュフォードとルカクの走力を活かしたカウンターを狙うのが得策だ。

「残り30分で1ゴールだけが必要な状況なら、どんなこともあり得る」(スールシャール)の通り、終盤にかけて“試合を壊す”ことができれば、このレベルではどう転がってもおかしくない。そのためにも、前半の失点回避と60分までに先制点を挙げることが何よりも重要だ。

「極めて厳しい挑戦だが、過去にも乗り越えてきた。このクラブは何度も偉大なカムバックを果たしてきたんだ」

スールシャールの言葉がただの強がりに聞こえないのは、彼自身がアレックス・ファーガソンの下で幾度もユナイテッドとそれを共有してきたからだ。フットボール史上最大の逆転劇の一つである1999年のCL決勝、カンプノウでのバイエルン戦でユナイテッドは、ラスト3分で2ゴールを記録。スコアボードに記された決勝点の選手名はオーレ・グンナー・スールシャールだ。

スールシャールに言わせてみれば、“まだ90分もある”。現在、アウェーでは“ファーガソン超え”のクラブ記録となる8連勝中。スールシャールの下でかつての不屈の精神を取り戻したレッド・デビルズは、波乱を巻き起こすためだけにパルク・デ・プランスに乗り込む。

文=音堂泰博

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