スター選手が自身のすべての始まりである古巣に戻る。オランダのサッカー界では決して珍しいことではない。
ロビン・ファン・ペルシーはアーセナルやマンチェスター・ユナイテッドで活躍した後、再びフェイエノールトのユニフォームに袖を通したし、イブラヒム・アフェレイはバルセロナや他の外国クラブで過ごした後、PSVに戻った。最も直近の例では、アヤックスのアカデミー出身のヨニー・ハイティンハがアヤックスに復帰している。
だが、アリエン・ロッベンに関しては状況が違う。PSVやチェルシー、レアル・マドリーといったそうそうたるクラブでプレーした後、昨夏にバイエルン・ミュンヘンで現役を引退していた。それから約1年が経過し、古巣クラブでの現役復帰を決断した。
ロッベンの復帰は、有名選手が少年時代に過ごしたチームでキャリアを終えようとする、よくある話のひとつではない。情熱と忠誠、かつて多くを与えてくれたクラブに恩返しをしようという話なのだ。
■順位は中位でも危機的状況に
PROSHOTS「北のプライド」ことフローニンゲンがここ数年、一定の成功を収め続け、その間ずっとトップクラスの選手を大勢輩出していたが、エールディヴィジの優勝争いをするまでには至っていなかった。一方のロッベンは2002年にフローニンゲンを去って以来、多くの栄冠を当たり前のように勝ち取る選手になっていた。
ロッベンが初めてフローニンゲンに入ったのは12歳の時。たちまち成功を収めると、U14のリーグで優勝を果たした。チームメイトにはセルジオ・ファン・ダイク、ジョルディ・ホーグストラト、アンジェロ・ジンマーマン、アントン・ヨンスマがおり、全員がプロ入りを果たしている。
Goal一方でそのシーズン、フローニンゲンのトップチームはエールディヴィジで10位にとどまっており、1990年代前半の輝かしい時代を取り戻そうと必死な時期だった。
話を2020年に飛ばすと、フローニンゲンを取り巻く残念な運命は変わっていない。新型コロナウイルスの感染拡大で早々に中断したエールディヴィジの順位は9位だ。
しかしながら、ことは順位表の中位にいることだけにとどまらない。
比較的規模の小さいチームの多くがそうであるように、フローニンゲンは新型コロナウイルスのせいで深刻な財政危機に見舞われた。実際、5月には帳簿の帳尻あわせのため、何人かのスタッフを解雇せざるを得なくなり、パンデミックによる損失は500万ユーロ(約6億円)と推定されている。年間総収入のざっと25%にあたる額だ。だが、これがロッベン復帰に動く大きな要因となる。
■クラブの救世主として
Goal新型コロナウイルスの感染拡大により、未曾有の被害を受けたフローニンゲン。クラブ存続のためにも、スポーツディレクターのマーク=ジャン・フレッデルスとゼネラルマネージャーのウーター・グッデは、“放蕩息子”に帰郷を促すことに決めたのだった。フレッデルスはこのように語る。
「我々はミュンヘンに行って、私たちのためにプレーしてくれるよう、彼と話をした。昨年5月に彼が引退宣言をしたほんの数日後だった。その時は実現しなかったんだ。だが、私たちは連絡を取り続け、密かに、彼の妻とともに手はずを整え、5月に再び話し合った。5月21日、私はバーナディンさん(ロッベンの妻)の招きでミュンヘンまで車で行ったんだ」
さらに、フレッデルスはミュンヘンのレストランでどのような会談が行われたかを明かしている。
「我々は彼らのひいきのレストランでスシを注文した。ドキュメンタリー番組の『ラストダンス』の映像を編集し、ロッベンの映像を作ったんだよ。我々は、『我々のクラブを助けてくれるというなら、我々と一緒にフットボールをしてくれるのが一番だ』と伝えた」
それはロッベンが断るはずのない提案だった。
36歳にして、今でもロッベンはフローニンゲンの熱心なファンだ。バイエルンにいたときでさえ、クラブの本拠地ユーロボーグ・スタジアムに定期的に姿を見せていたのだから。
プロとして自分に大きな成功をもたらしてくれたクラブの手助けができるチャンスを無にするようなことを、ロッベンは決してしなかった。
「素晴らしい話だった。私はここのアカデミー出身で、ここで様々なものに囲まれて育ったからね。私にとって答えを出すことは簡単だった。私はこのクラブを愛しているし、忠誠心を持っている。それが決定的だった。他のクラブのためだったら、引退を撤回したりはしない。たとえバイエルンのためでもね」
ロッベンは現役復帰が決まった直後、決断をこのように説明した。
■ファンに夢を与えた復帰
Getty/Goalそして、まだ1分もプレーはしていないが、すでにフローニンゲンでは“ロッベン効果”が表れている。
ロッベンの復帰が発表された数日後、フローニンゲンは2020-21シーズンの追加のシーズンチケットを2500枚売りだした。すでに数字の上では、11000人がチケットを買い上げている。
火曜日には、クラブはファンに、来シーズンのレプリカユニフォームの注文が多すぎるのでしばらく待ってほしいと頼まなければならなくなった。もちろん、一番売れているのは、ロッベンが身にまとう10番のシャツだ。
ロッベンが、マイケル・ジョーダンの「ラストダンス」のようにリーグ優勝を果たすことができるかどうかはわからない。いや、実際のところは、ルイス・スアレスやヴィルヒル・ファン・ダイクが突然復帰でもしない限りは難しいだろう。
しかしながら、昨今の不安定な経済状況の中、生き残ることだけでも成功だと言えるだろう。ロッベンはすでにフローニンゲンの銀行の預金残高に多額の貢献をしている。
フローニンゲンのファンは、かつての所属選手のひとりが忠誠心を感動的に見せてくれたおかげで、経済状況を心配するのではなく未来に希望を持てるようになった。
少なくともその意味では、ロッベンの「ラストダンス」はどの点においてもジョーダンのものと同じくらい美しいと言えるだろう。
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