2019_3_6_realmadrid(C)Getty Images

レアル・マドリー、黄金期の終焉。語り継がれるその時代の名は「C・ロナウドのマドリー」

試合前にはホームチームの選手たちに対して大量の声援が飛び、しかし電光掲示版ではアウェーチームの数字が動き、大量の声援は大量のブーイングへと変わっていく。観客はブーイングをすることにも飽きて、チームを見限るように試合終了前に家路へとつき、最後には勝利を勝ち誇るアウェーチームのサポーターたちのチャントがスタジアムにこだまする……。

この1週間、レアル・マドリーの本拠地サンティアゴ・ベルナベウで、そうした景色を3回も目にすることになった。コパ・デル・レイ準決勝セカンドレグのバルセロナ戦(0-3、2戦合計1−4)、リーガ・エスパニョーラ第26節のバルセロナ戦(0-1)、そしてチャンピオンズリーグ決勝トーナメント1回戦セカンドレグのアヤックス戦(1-4、2戦合計3-5)。一つの敗戦は一つのタイトルを失うことを意味し、マドリーはトロフィーを掲げる希望を失った。アヤックス戦のベルナベウでは暖房がついていたが、まだコートが必要な3月初旬に、すべての希望が潰えたのだった。

ここ5シーズンで4度のチャンピオンズ優勝を果たしていたマドリーにとって、アヤックス戦の敗戦で終わったこの1週間は、黄金期の終焉を意味する。しかしながらこの終焉は、前から忍び寄っていたものでもあった。というのも、これまで常々指摘され続けてきた問題が、ついに結果として表れたのが今回のビッグマッチ3連戦だったのである。マドリーが抱えていた問題を一つひとつ取り上げていこう。

■痩せ細っていた陣容

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昨夏、チャンピオンズ三連覇に導いたジネディーヌ・ジダンが退任し、クリスティアーノ・ロナウドもクラブを去ったマドリーだが、その陣容は以前から痩せ細り始めていた。

クラブ首脳陣は移籍金が高騰する前後からスター選手の獲得を控えて青田買いに尽力するようになり、マルコ・アセンシオ、ダニ・セバジョス、アルバロ・オドリオソラ、マルコス・ジョレンテ、ヴィニシウス、ブライム・ディアスら、出戻り含め“スター候補”たちを積極的に引き入れてきた。が、その一方でダニーロ、ハメス・ロドリゲス、アルバロ・モラタ、マテオ・コバチッチら中堅が出場機会を求めて退団。“スター候補”たちはやはり“候補”でしかなく、中堅が去ったことにより控えとスタメンとの間には溝ができた。ジダンは2シーズン前、リーガ&チャンピオンズで起用選手を大幅に変えながら両大会で優勝を果たした。しかし現在の陣容では、そんな芸当はもはや不可能となっていた。

■薄い選手層の中でも、偏った選手起用を行ってきたソラーリ

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今季途中、成績不振で解任されたジュレン・ロペテギの後任として、内部昇格からトップチームの手綱を握ったサンティアゴ・ソラーリは、Bチームを率いていた頃から知るセルヒオ・レギロンとヴィニシウス、さらには前線で攻守のバランスを取ることができるルーカス・バスケスと、自分が使えると思った選手は積極的に使っていった。しかしその一方で、マルセロ、イスコ、アセンシオ、ベイル、マリアーノと、戦力に数えられそうな選手たちを復調させる余裕はなく、信頼を寄せる選手たちは相当に限られていた。マドリー会長フロレンティーノ・ペレスとのディナーで、出場機会を与えていない名のある選手たちの起用を求められたソラーリは「 私は自分の考えと心中する覚悟です」と突っぱねたとされるが、そうした頑なな考えは今回のクラシコ2連戦とアヤックス戦でも貫かれ、結果としては裏目に出ている。

ソラーリは、すでに逆転優勝の見込みがなくなっていたリーガのクラシコでメンバーを落とすことが予想されたものの、コパ担当のGKケイロール・ナバスの代わりにクルトワを起用したほかには、ルーカス・バスケスをベイルに代えるのみにとどまった。DFカルバハル、ヴァラン、レギロン、MFモドリッチ、カセミロ、クロース、FWベンゼマ、ヴィニシウスは3連戦すべてで先発したが(セルヒオ・ラモスは累積消化という愚かしい理由によりアヤックス戦を欠場)、不用意なボールロストを繰り返すようになったカセミロ&クロース、攻撃の構築&フィニッシュのどちらも中途半端になったベンゼマをはじめとして、疲労が蓄積していたのは明らかだった。リーグ側の決定で先週末に行われるはずだったズヴォレ戦が延期となり、試合まで中5日の余裕を手にしたアヤックスとは、コンディション面から差をつけられていた。

■そして、結局埋められないC・ロナウドの穴

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ディ・ステファノのマドリー(1954-64)、ジェ-ジェスのマドリー(1964-74)、ドイツ風のマドリー(1974-84)、キンタ・デル・ブイトレのマドリー(1984-1994)、ガラクティコ(銀河系)のマドリー(1994-2004)と、マドリーはこれまでにも何度も黄金期を迎えてきた。そして今回終わった黄金期は「クリスティアーノ・ロナウドのマドリー」と銘打たれるものであり、結局、彼なしで金色の輝きを保てなかった。C・ロナウドは「マドリーは自分の価値を分かっていない」との不満を漏らしてユヴェントスへと移籍したが、今になってその言葉が、大きな説得力を伴ってマドリーに襲いかかっている。

マドリー首脳陣が考えたC・ロナウドの穴を埋める方法は、大物ストライカーの獲得ではなく、ヴィニシウスの起用と前線の各選手がそれぞれに得点数を増やすことだった。しかし蓋を開けてみれば、ベンゼマの1試合あたりの得点率が0.47点、ベイルが0.39点(さらに負傷がちで出場数も少ない)とその得点力はこれまでと何ら変わらず、また18歳のヴィニシウスは0.15点にとどまっている。

マドリー時代のC・ロナウドは3月初旬までに26〜47点を記録してきたが、今季ここまでのマドリーの得点数は昨季と比べて25得点少なく、決定力不足だと騒がれ続けている。結局マドリーは、C・ロナウドがいない分だけ得点数が足りず、C・ロナウドがいない分だけタイトルに届かなかった。アヤックスに4点目を決められた後、観客は「フロレンティーノ、ディミシオン(辞任)!」と叫んでペレスを責めたが、その主要な動機はC・ロナウドの退団を許し、なおかつその穴埋めができなかったことにあったのである。

■新たな黄金期を目指す旅

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わずか7日間で、すべての希望が潰えたマドリー。『マルカ』によれば、ソラーリはすでに解任が決定しており、後任にはジョゼ・モウリーニョ、マッシミリアーノ・アッレグリ、ユルゲン・クロップ、ヨアヒム・レーヴ、マウリシオ・ポチェッティーノが挙げられているという。補強に関しても、未来への先行投資ではなく、これまで以上に金を使ったチーム改革を行うことが見込まれる。

いずれにしても、マドリーのサポーターがタイトル獲得の夢を見られるのは、来季以降から。今季はリーガでチャンピオンズ出場圏外の5位に落ちないようにする以外、もう何も目標が残されていない。ただただ寒いだけとなった冬を越え、無縁となったタイトル争いの決着がつく春を過ぎ、そして夏がやって来るまで……。一つの黄金期が終わり、また新たな黄金期を目指す旅が、そこから始まるのである。

文=江間慎一郎(スペイン在住ジャーナリスト)

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