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ランパードを待つ茨の道―。すべての人間から愛されるレジェンドに求められるもの

■レジェンド

プレミアリーグ3位、ヨーロッパリーグ優勝、リーグカップ準優勝。2018-19シーズンのチェルシーは、数字上の成績だけを見れば「成功」と言っていいシーズンだったかもしれない。だが、スタートダッシュとラストスパートで帳尻を合わせた感が強く、マンチェスター・シティに勝ち点26ポイント差、リヴァプールに25ポイント差をつけられたチームを、ボール保持率は高いが本物の鋭さがあったとは言えなかったマウリツィオ・サッリのスタイルを、サポーターは良しとしなかった。

そしてオーナーのロマン・アブラモヴィッチとフロントは、サッリを更迭した。後任として白羽の矢を立てたのは、クラブ史上最高のMFであり、2001~14年の在籍でクラブのオールタイムレコードである211ゴールを挙げた正真正銘のレジェンド、フランク・ランパードだった。

サポーターにとって、ランパード監督は夢のあるチョイスだ。選手として3度のプレミアリーグ制覇、クラブ史上初のCL優勝に中心選手として貢献し、常にハードワークを見せて大事なゴールを何度も決めてきた彼の人気は、クラブを退団して5年が経っていても揺るぎなかった。サポーター、クラブ関係者の誰もが、間違いなく彼を尊敬している。

■カラーチェンジ

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そんな中で火中の栗を拾ったランパード。しかし、進む先は茨の道。ノスタルジーとロマンスにあふれたランパード帰還には、厄介な問題がつきまとう。プレミアリーグの新任監督は多くの場合、新たなチームを編成するために多額の補強資金を与えられる。だが、ランパードにはそれがない。クラブに財源はあっても、FIFAの補強禁止処分により今季中は選手の新規獲得ができないため、それに頼れないのだ。トップ4争いのライバルとなるトッテナムやアーセナル、マンチェスター・ユナイテッドがそれぞれ大型補強をした中、ランパードは現有戦力とローンバック組、アカデミー発の若手選手でやりくりし、最高のイレブンを見つけなければいけない。実質的な新戦力はクリスティアン・プリシッチ(ドルトムントから加入)のみだ。

その上、10番を背負い長らくチームの象徴だったエデン・アザールがレアル・マドリーに新天地を求め、移籍期限最終日には守備の中心だったダビド・ルイスもアーセナルへと移籍した。主に現有戦力とアカデミー育ちの若手、ローンバック組で構成された新生チェルシーは、果たしてプレミアリーグで、そしてチャンピオンズリーグで結果を出せるのか。

そんな苦境の中、チェルシーのファンがランパードに最も期待しているのは、若手の登用だろう。スタンフォード・ブリッジでは、ファンがもう何年も前から、ヨーロッパ最高峰のレベルにあるアカデミーの出身者にもっとチャンスを与えるよう訴えてきた。だが、ジョゼ・モウリーニョ、アントニオ・コンテ、サッリらの前任者たちはリスクを恐れ、いずれも若手に信頼を置き、トップチームで育てていくことには消極的だった。

だが、補強禁止処分も相まって、ついにその時がきたのかもしれない。ランパードが、チェルシーのアカデミーで5年間働き、ダービーでも右腕を務めたジョディ・モリスをアシスタントに任命したのもその兆候だ。彼らがダービーでも指導したセントラルMFのメイソン・マウント、センターバックのフィカヨ・トモリ、さらに昨季はアストンヴィラで25ゴールを挙げ、2部の年間ベストイレブンにも選ばれたストライカーのタミー・エイブラハムといったローンバック組は、今季ランパードの下で多くのチャンスを得るだろう。

また、昨季終盤にいずれもアキレス腱の断裂という大ケガを負って離脱中のカラム・ハドソン=オドイ、ルーベン・ロフタス=チークの2選手も、復帰後は重要な戦力として扱われ、出場機会を得るはずだ。彼らアカデミー出身者が、ランパード監督の“色”になることは間違いない。

“元祖オイルマネー”のクラブであり、潤沢な資金を使った大型補強のイメージが強いチェルシーだが、実はアブラモヴィッチ買収直後の04年から「10年計画」で改革してきた育成部門は、ヨーロッパでも指折りのクオリティーを誇る。実際、FAユースカップでは14~18年に5連覇を達成しており、13年よりスタートしたUEFAユースリーグでもバルサと並び2度の優勝を誇る。そうしたアカデミーの充実をトップチームへとダイレクトにつなぎ、金満クラブから「育成のチェルシー」へと“カラーチェンジ”を図ってその文化を定着させるための良いチャンスとして、今回の補強禁止処分、ランパード就任を捉えるべきだろう。

■志向するスタイル

Barcelona ChelseaGetty Images

ランパードはチェルシー・ファミリーに愛されるスタンフォード・ブリッジの偉人であるだけでなく、現役時代から高級紙『タイムズ』を愛読するとても聡明で博識な人物としても有名だ。フットボールに対する知識も豊富で、だからこそ、昨季は“監督1年生”ながら2部ダービー・カウンティで結果を出すことができた。最終的にプレーオフ決勝でアストン・ヴィラに敗れてプレミア昇格こそならなかったが、チームをそこまで導いたマネジメント能力は現地でも高く評価された。

ランパードは30歳近かったダービーのスタメンの平均年齢を26歳前後まで下げ、ボール保持率を前年から10パーセント近く上昇させつつも、攻守の切り替えやプレッシングに重きを置くスタイルを志向した。その上で“走力”であったり、“ミドルレンジからのシュート”といった現役時代の自分の代名詞だった部分の重要性を説き、チームに自身の哲学を植えつけることに成功している。チェルシーでも、同様のスタイルを目指すことになるだろう。

「選手たちにはオン・ザ・ボール、オフ・ザ・ボールに関わらずエネルギッシュかつスピード感あふれるプレーを見せてほしい。ボールを失ったら、すぐに奪い返してほしいし、ボールを持っているときは素早く攻めるスタイルをしたい」

プレシーズンに指揮官はそう話していた。また選手たちのコメントを見ると、何人かの選手の口から「高いインテンシティ」というキーワードがよく聞かれた。現在のプレミアリーグのトレントでもあるプレッシングゲームを取り入れつつ、「サッリボール」時代からのプレーメーカーであるジョルジーニョを起点にボールを保持し、その上で、昨季よりも縦に速いアタックに挑戦していくのだろう。現役時代から完璧主義者だったランパードらしく掲げる理想は高いが、そんなチームの成長を見守っていけるのは楽しみだ。

■「時間」

Frank Lampard Chelsea 2019-20Getty Images

とはいえ、ランパードの任命が、アブラモヴィッチ政権における最大のギャンブルのひとつであることに変わりはない。たしかにダービーでの指揮は印象的で現地での評価も高かったが、まだ1年を戦っただけで経験不足と言われればそうだし、そもそも2部チャンピオンシップと、ビッグクラブを率いてプレミアとCLを戦うのは質が違う。ランパードが言う志向するスタイルも、プレシーズンマッチの何試合かを見る限りまだ形になっているとは言えず、特に攻撃は「自由」と言えば聞こえはいいが、まだ「形がない」とも言える内容だった。

ランパードをリスペクトし、彼に期待を寄せる現地の解説者や元選手からは、「彼に時間を与えてやってほしい」という声が多く聞かれる。実際、ライバルクラブがビッグスターをズラリと並べる中で、若手主体のチームが上位を争うのは至難の技だし、近年は監督を頻繁に入れ替えてその都度スタイルが変わってきたチームに、ひとつの色を浸透させるのにかかる時間は、1シーズンでは利かないかもしれない。

だからこそ、あとは忍耐力に欠ける気まぐれなオーナーが、今度こそ長期的な目でチームを見られるかどうかにかかっている。今季は現実的な目標として「トップ4フィニッシュ」を設定し、仮にそれが叶わなかったとしても長い目で見るべきだ。

チェルシーは今、生まれ変わるための過渡期にいる。だからこそ、長期的な視野でチームを作り、すべての人間から愛されるレジェンドを、クラブのシンボルするべきなのだ。

文=寺沢薫

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