Lionel Messi Barcelona 2018-19Getty Images

メッシという「無限」、メッシという「神秘」――。世界最高の選手、三冠への執着【CL特別寄稿】

リオネル・メッシが世界最高の選手の1人であることに疑いの余地はないだろう。

2004年のデビュー以降、リーガ・エスパニョーラ最多得点(417)、バルセロナ歴代最多得点(598)、10季連続公式戦40ゴール、5度のバロンドール受賞――。彼が達成した記録は数え切れない。

そんな彼は今シーズン、すでにクラブ史上最多となるリーガ10度目の制覇を達成。そして34個目のトロフィーを棚に飾るため、チャンピオンズリーグ準決勝で昨季ファイナリストであるリヴァプールと激突する。

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今季から主将を務める31歳は、ここまで45試合で46ゴール22アシスト。メッシについては常人の間隔が当てはまらないため、この数字は過去を振り返れば「普通」であるのかもしれない。しかし、今シーズンは並々ならぬ思いを持って戦ってきた。

メッシを愛する小説家ジョルディ・プンティは「三冠へ執着している」と語る。そんなレオ(メッシの愛称)に心を奪われた彼が綴った文章を、今回は特別に掲載する。

文/ジョルディ・プンティ
企画・翻訳/江間慎一郎

■10年

Messi Guardiola BarcelonaGetty

2009年、ペップ・グアルディオラ率いるバルセロナがリーガ・エスパニョーラ、コパ・デル・レイ、チャンピオンズリーグの三冠を達成したとき、じつに煌びやかなパレードが行われた。あるビールブランドがスポンサーを務めたそのパレードで、選手たちは飲んだり踊ったりしながら、町の人々と何時間にもわたって喜びを分かち合っている。パレードの最終到着地は、もちろん本拠地カンプ・ノウ。そこでチームの面々は一人、また一人と、サポーターに対してメッセージを口にしていき……、レオ・メッシの番ももれなくやってきた。

当時のメッシは、まだ22歳。あどけなさが残る年齢ながら、すでにチームの主役となることを、世界最高の選手になることを引き受け始めていた頃である。私たちは、歓喜と酒に飲まれて饒舌になったメッシから、こんな言葉を聞いたのだった。

「みんなが三つのタイトルをほしがっていたけど、ここに三つともあるよ! 来年もこのままいきたい。僕たちは再び勝ち取るんだ、すべてをね!」

グアルディオラをはじめ、ジェラール・ピケやほかのチームメートたちが、守ることなど不可能とも思えるこの約束を聞いて、両手を頭上に持っていった姿は、今でも鮮明に覚えている。

そして、それからちょうど10年――。メッシはしっかりと成熟を果たした。一家の父親となり、キャプテンマークを巻き、世界最高の選手であることに疑いの余地はなくなり、史上最高の選手が誰かという不毛な議論における本命になった。そして今季初めのジョアン・ガンペール杯で、キャプテンとしてマイクを手にした彼は、酒の力を借りることもなく、このように語った。

「できる限りを尽くすと約束させてもらう。これほどまでに求められている、あの美しいトロフィーを再びここに、カンプ・ノウに持ってくるために」

■執着

Lionel Messi Barcelona 2018-19Getty Images

その日からメッシの執着、いや、断固たる決意と称せるものが、チャンピオンズリーグ優勝を果たすこと、もっと言えばさらなる三冠達成であることが明白となったのだった。実際、今季の彼の足取りはまさしくその挑戦を見据えたものであったし、いくつもの出来事からそのことが確認できた。最たる例は、マンチェスター・ユナイテッド戦(準々決勝第2戦)でゴールを決めた直後の情熱的な喜びようだが、同様にリーガの試合でベンチスタートを受け入れてシーズン最後の直線まで力を蓄えていたことも印象的である。加えて、アルゼンチン代表としての活動を6カ月間休んだことも、バルセロナにとっては大きな恩恵となったに違いない。

昨季のチャンピオンズ準決勝ローマ戦、カンプ・ノウでのファーストレグを4-1の勝利で終えていたにもかかわらず、セカンドレグを0-3で落として敗退したことは、キャリアの終わりが見え始めた選手たちにとって大きなトラウマとなった。それが今季にかける思いにつながっていることは、まず間違いない。しかしメッシ個人、またチーム全体が同大会優勝に執念を燃やす理由は、それ以外にも存在しているはずだ。一つ目の理由は、メッシが昨年のバロンドールをルカ・モドリッチに奪われたこと(私にとって彼の受賞は不当だった)。二つ目は長年にわたって繰り広げられてきたメッシとクリスティアーノ・ロナウドの争いが、後者のユヴェントス移籍によって欧州を舞台とした大会でしか存在し得なくなったこと。そして三つ目は、バルセロナにとってスポーツの枠を越えた憎きライバル、レアル・マドリーがチャンピオンズ三連覇を果たしたことである。

■神秘

Lionel Messi Barcelona 2018-19Getty Images

バルセロナはリヴァプールとの準決勝を制して、決勝、優勝まで到達することに大きな意欲を燃やす。とはいえ、そうした意欲や気力を備えているだけで、事足りるものなのだろうか? 監督たちはチャンピオンズのようなタイトルを勝ち取れるかどうかは、本当に些細なディテールによってと決まると口を揃えて語り、その一方で私たちは予期していないこと、思いがけないことを見たいがためにフットボールに情熱を注ぐ。その点で、現在のバルセロナは完璧に近いチームだろう。

エルネスト・バルベルデは試合のコントロールに秀でた監督であり、バルセロナのポゼッションフットボールの伝統を受け継ぐアルトゥールと、まるでルンバのような掃除屋アルトゥーロ・ビダルを使い分けるなど、ピッチ上で疑念や驚きが生まれることを最小限にとどめられる。そして、その対極にあるのがメッシである。彼がピッチに立つとき、私たちはそのひらめきに、何か違うものを生み出すことに期待する。ピッチ上のシナリオに不都合が生じたとしても、彼はそれを書き変えられる力があるのだ。

私は先に「キャリアの終わりが見え始めた選手たち」と記したが、当てはまるのはメッシ、ルイス・スアレス、イヴァン・ラキティッチ、セルジ・ブスケツ、ジェラール・ピケ、ジョルディ・アルバだろう。とはいえメッシだけは、その限りではないのかもしれない。32歳にもなれば選手としての衰退が始まったと考えるのが普通で、事実としてバルベルデは温存策もとってきた。だが、ピッチに立つメッシを目にするときに感じるのは、そうした一般論とは真逆の印象だ。これまで蒔いてきた種の実りを収穫するように、いくつもの記録を更新している彼ではあるが、そのプレーからはいまだ新たな種を蒔いているような感覚さえ植え付けられる。

今季の彼はすべてを切り裂くドリブルを変わらずに披露しつつ、その一方で視野の広さと戦術眼を生かしたゲームメイク力はチャビ・エルナンデスの域に近づき、なおかつ直接フリーキックや意表を突くタイミングでのループシュートなど、左足を一振りするだけで勝負を決してきた……。メッシという選手にはまるで終わりが見えず、逆に始まったばかりなのかと錯覚さえ覚える。すなわち、インフィニット(無限)である。現にリーガのチームはメッシという選手に慣れるどころか、いまだその対応に追われ続けている。今季であれば、メッシがフリーキックを蹴る場面で壁の下にボールを通されないために一人が倒れ込んで隙間を塞ぐという対応策が流行したのだった。

全ポジションが強力で、なおかつユルゲン・グルップのような予期せぬ状況を回避できる監督が指揮するリヴァプールを相手にして、バルセロナがアトレティコ・マドリーの本拠地ワンダ・メトロポリターノで行われる決勝の舞台までたどりつけるのかどうか――。確かなことなど、何も言えやしない。しかし、それはメッシのプレーにしたって同じことだ。たとえメソッドやら何やらがフォーカスされることがあっても、フットボールの面白さは、相も変わらずその神秘性にある。バルセロナはこれまで何度も偉業を成し遂げながら、いまなおその可能性を広げているメッシの神秘性にかけるのである。「できる限りを尽くす」と闘志をたぎらせる、計り知れない男に。

【著者プロフィール】

ジョルディ・プンティ(Jordi Punti)

1967年生まれ、バルセロナ在住。小説家としてこれまでに3作品を発表。『Maletas perdidas(失われたスーツケースたち)』はいくつもの賞を受賞し、16言語に翻訳された。スペインの新聞『エル・ペリオディコ』『エル・パイス』にコラムを寄稿。サッカーについての記事も20年にわたって執筆し、特にバルセロナに熱を上げる。メッシを叙情的に、ときにおどけながら描写した近著『Todo Messi(すべてメッシ)』は、スペインのサッカーカルチャーマガジン『パネンカ』のサッカー本大賞を受賞した。

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「※」は提携サイト『 Sporting News』の記事です

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