「これまで契約したどの若者にも負けない天賦の才を持っている」
監督として数多くの才能を見出してきたサー・アレックス・ファーガソンが、ひときわ目をとめた若者がいた。彼が監督として指導した選手の中で、ワールドクラスの選手として認めたのは4人だけ。そのうちマンチェスター・ユナイテッドのアカデミー出身はライアン・ギグスとポール・スコールズ、残り2人はエリック・カントナとクリスティアーノ・ロナウドだ。スコットランド出身の伝説、ファーガソンが高く評価したラヴェル・モリソンについては、多くのことが語られてきた。
2011年、モリソンはトップレベルの試合に出られる才能の持ち主と見なされていた。ポール・ポグバ、ジェシー・リンガード、マイケル・キーンらとともに、モリソンはマンチェスター・UをFAユースカップ制覇に導いた。これはマンチェスター・Uが一度も取ったことがなかったタイトルだ。シェフィールドとの決勝第2戦で2ゴールを挙げた攻撃的MFには、シニアの試合でも嵐を巻き起こすだろうとの評判が立っていた。
それから8年が瞬く間に経ち、ポグバはワールドカップ優勝メンバーに名を連ね、セリエAで4度のチャンピオンとなって絶頂期を迎えており、マンチェスター・Uでも、オーレ・グンナー・スールシャール監督のもとでの復活を楽しんでいる。キーンはイングランド代表となり、エヴァ―トンではレギュラーの座を獲得。リンガードは母国代表として22試合に出場し、マンチェスター・Uの攻撃の要に成長した――。
ところがモリソンは、全選手の中で最も才能に恵まれていたはずのモリソンは、2月にスウェーデンのエステルスンドと短期契約を結び、アルスヴェンスカンのシーズン開幕を待っている(アルスヴェンスカンは4月に開幕する)。これはまったく予想外の事態だ。
■“神童”に何が起きたのか
一体彼に何があったのだろうか。実のところ、モリソンにはプロになったばかりの頃から才能を早々と枯渇させてしまうのではないかとの懸念が付きまとっていた。
ユースカップの3カ月前、モリソンはトラフォードの家庭裁判所でナイフ強盗に関する裁判の前、2度にわたって証人を脅したことを認めた。モリソンは最近になって『Times』にこう語っている。「自分のしたことが悪いことだとすら思っていなかった。証人を脅かすことを問題だとも思っていなかった」
他にも、女友達に対するDVなど法律に抵触することが何度かあった。悪い癖が直らないのではないかという懸念が、始まったばかりのモリソンのキャリアに常に付きまとうこととなる。

マンチェスター・Uの元キャプテン、リオ・ファーディナンドは2018年に『BTスポーツ』で、モリソンは固く約束したが、それでも道を踏み外すのではないかとの懸念があったと語っている。
「彼は私が見た中で最も天性の才能に恵まれている若者だったと思う」と、ファーディナンドは振り返った。「ある日、サー・アレックス・ファーガソンが、私とウェイン・ルーニーを呼び出して、こう言った。『あの子を見ろ。あの子は若手の中で最高だ。ウェイン、お前の子どもの頃よりもすごい。子どもの頃のリオよりも、ギグスよりも上だ。あんな子はこれからも現れない』。彼はまだ16歳なのに、練習で選手たちと自由にやらせてもらっていた」
「だが、毎日そこで必要とされるレベルの集中力を、ベテランに囲まれた中で彼は身につけることができなかった。ポグバやリンガード、少し年下のアドナン・ヤヌザイと一緒のチームでは、彼は何でもできていたからスーパーヒーローのように見られていた」
「私は彼と仲良くなろうとした。だけど、サッカークラブを出たら距離を取ろうとする選手が時々いる。結局のところ、サッカークラブの外での行いは、ピッチでのパフォーマンスに影響するものだ。若気の至りで悪い習慣を身に着けてしまうと、ピッチでのパフォーマンスにもそれが出てしまう」
後にファーディナンドは、モリソンがロッカールームでチームメイトの物を盗んだとのクレームから、モリソンを公的に弁護しなければならなくなる。しかしながら、ファーガソンは金の卵がピッチの外で悪い連中とつるんでいることに飽き飽きするようになり、2012年1月、トップチームではリーグカップにたった3試合出場させただけで、モリソンをウェストハムに売りだすことに同意した。
Getty Images「マンチェスターから離れる必要はなかった」と、モリソンは『Times』に語った。「悪いことをした時期はあったけれど、ただ間違った時期に、間違った場所、間違った仲間といることはよくあることだ。自分にとってどうということではなかった。ただ、そこにいたというだけで、後ろ指さされてしまった」
マンチェスター・Uを離れたモリソンは、放出される恐れもありながら、ウェストハムのブーリン・グラウンドで人生の素晴らしいスタートを楽しんでいた。だが、契約をめぐる紛争の最中、突然QPRへとローンされ、その後バーミンガムとカーディフにも出されることとなる。。ほどなく、当時のサム・アラダイス監督と仲違いしウェストハムを去ることになる。後にアラダイスはモリソンについて「才能の無駄遣い」と語っている。
次の所属先はラツィオだったが、出だしから躓いた。後に自身の最悪の決断だったと振り返るように出場機会は皆無であり、ピッチ内外でさまざまな妨害を受けた。
■再生を目指す闘い
キャリアをやり直す必要にかられたモリソンは、QPRに再びレンタル移籍した後、メキシコのアトラスで1シーズンを過ごした。リーガ・MXでは若さを取り戻して活躍。そして26歳の今、後ろではなく前を向こうとしている。
「自分を鍛えなおすためにここへ来た」と、2月にエステルスンドに到着したモリソンは、クラブのウェブサイトで語っている。「そのことを楽しみ、再びサッカーを楽しみたい。取れるタイトルはすべて欲しい。とてもワクワクしていて、目の前にあるすべてを心から楽しみにしているよ」
エステルスンドとの契約は、6月までしかない。それまでに、もっと大きなクラブから注目されるようになりたいと望んでいることは明らかだ。最近スウェーデン・ラジオで語ったところによると、スカンディナヴィアで経験を積んで活躍し、チームの名を広めたいという。「チーム全体の能力はとても高いと思う。僕以外のことも注目してほしい」
彼の前には、よりよい未来がある希望は残っている。モリソンは子どもたちの悪い見本として知られてしまっているが、サッカー選手としては、同年代の選手たちと比べて諦めるほど苦い人生を歩んできたわけではない。
「サッカーが、予想もしない世界へ連れて行ってくれることを学んだ」とスウェーデン紙『Sportbladet』で語っている。「道のりを楽しまないといけない。気楽な時もあるし、厳しい時もある。だけど、僕はエステルスンドでの時間を楽しむことに決めた」
ファーガソンに認められながらも、素行不良や数々の問題から未だその才能を発揮できていないモリソン。北欧で新たな挑戦に臨む今、キャリアを再生できるのか、それともそれとも破綻してしまうのか。夏には判明することだろう。彼の物語がハッピーエンドとなることを願うばかりだ。
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