Volkmar PreetzGoal

ヘルタSDが語るブンデスリーガの「改善の余地」。他リーグとの対抗に求められること/インタビュー

ミヒャエル・プレーツは1996年以来23年に渡ってヘルタ・ベルリンのために働いてきた。最初はチームのゴールゲッターとして、2003年からは経営部門の人間として。現在50歳のプレーツが自身の大きな目標を達成するためには、あと少なくとも6年間は現在の職にとどまる必要があるだろう。というのも、2025-26シーズンにベルリンのオリンピアパークにヘルタの新スタジアムが開設されることになっているからだ。

「あなたが今座っているそこから、新スタジアムが見えるようになるだろう」と、インタビューを行ったヘルタのクラブハウスでプレーツはそう教えてくれた。

『Goal』のインタビューに応じたプレーツはヘルタでの目標、ドイツのフットボールが抱える問題について語り、人種差別主義に断固反対する姿勢を表明した。

■「発展のためには新スタジアム建設が欠かせない」

Michael Preetz 23042016

――あなたがヘルタ・ベルリンのマネージャーに就任してから、今年の夏で10年になりますね。さらに10年後、あなたはクラブに何を望みますか?

 もちろん、さらなる発展を望んでいるよ。我々はブンデスリーガのトップクラブの面々に追いついて、できれば毎年、国際舞台への出場を懸けて戦えるようになりたいと思っている。ドイツ最大の都市のクラブとしては、自分たちにそのくらいのミッションを課さなければならない。もちろん現状を見れば、トップクラブと我々では経済的な力の差が大きい。つまり、フットボールの面でも経済力の面でも、トップクラブとの隔たりを劇的に改善することが我々の課題になるだろう。

――ヘルタが1997-98シーズンにブンデスリーガに復帰した後の最初の数年間は、“眠れる巨人”という言葉やブランデンブルク門で優勝を祝うという話がしばしば耳に入って来たものでした。その後2度の降格を経て、ここ何年かそういう話題はもう影を潜めています。そんなふうにあまり大きな期待をかけられなくなったのは、クラブにとっていいことだったんでしょうか?

いずれにせよ、クラブがブンデスリーガの地図上から姿を消してしまわないようにするために、我々には強化のための時間が必要だったんだ。今のヘルタは10年前と比べるとずっと健全な状態にあると言えるだろう。今の我々には、もっと野心的な目標に取りかかるのに十分な基盤が整っている。それでも、上位6クラブのレベルを目指すのであれば、我々にとっては大きな目標だ。ブンデスリーガはサメの水槽のようなもので、熾烈な競争が支配する世界なのだからね。

――現在のように果たすべき目標と現実の間に大きな隔たりがある場合、あなたがこれまでに何度か苦い経験を積んできたことが役に立っていますか?

確かに私は1986年からずっと、まるでサーカスみたいに混乱した騒ぎの繰り広げられるプロの世界に身を置いている。そこには、上り坂しか経験したことのないような者は誰もいないんだ。ヘルタの素晴らしいところは、期待を担いながら現実的であり続けている点だ。ここ数年は、それが以前よりもさらにうまくいっている。まずは、1年1年ブンデスリーガに足場を確保しながら、フットボールの面でも経済的な面でも成長し続けられるように努力することに価値があると誰もが理解しているんだよ。

――ヘルタがさらなる発展を遂げるためには新スタジアムの建設計画が欠かせないというのは、その通りだと思いますか?

クラブの将来を考えれば、新スタジアムの建設計画は非常に重要な意味を持っている。そこから経済的に大きな可能性が開けてくるはずだからだ。だから、私は今年中に早急な決断が下されることを望んでいる。もちろん、我々はこれからも説得のための活動を続けていかなければならない。

――オリンピアパークとは別の場所に、あるいは思い切ってベルリンの周辺地域に移ってはどうかという意見もありましたね。様々な障害があるにもかかわらず、オリンピアパーク内の建設にこだわっているのはなぜですか?

オリンピアパークに新スタジアムを作るというのが、我々が最初から求めてきたこと、望んだことだったんだ。そもそもベルリンのどの地域であればそういうプロジェクトを実現できるのか、包括的な立地分析を依頼した結果、他をはるかに引き離して、最善の答えはオリンピアパークだということになったんだよ。

■ヘルタにある「素晴らしい土台」

――あなたはスタジアムの建設によって経済的チャンスが生まれると言われましたが、パリ・サンジェルマン(PSG)のようなクラブとは状況の異なるヘルタのような大都市クラブにしてみれば、その方法というのは必然的に、多額の資金を拠出してくれる国際的な投資企業を探すということにならざるをえないのでしょうか?

“50+1ルール”(人事や経営の問題に関して、投資企業ではなくクラブに過半数を超える議決権があるという規定)があるからには、目下の状況でPSGの場合のように投資を呼び込むことは現実的に無理だろう。それに、クラブ会員の賛同なしに何かが決定されるということもないだろう。けれど、KKR社の持ち株を買い戻した今、すべての株は再び我々の手元にあるということ、我々が市場を見回して新たな投資企業を探しているということは誰もが知っている。だが、条件が折り合わなければならない。もちろん、リーグのトップチームとの差を縮めるために、別の選択肢に頼ることもできるけれどね。

――きっとその選択肢というのは、目覚ましい成果を挙げているヘルタの若手選手を起用して、トップチームのクオリティを高めるということですね。

まさに、そういうことだよ。我々は他のクラブに比べてもとりわけ若手の育成に力を注いでいるし、彼らがプロチームへ進めるようにできるだけ環境を整えている。国内から、それに国外からもトップクラスの才能を集める場合、その点で我々は有利な立場に立てるんだ。我々はここ数年の間にスカウトしたすべての若手選手をブンデスリーガでプレーするまでに成長させることができたし、中には代表選手になった者もいる。我々のクラブは、そういった非常に素晴らしい土台の上に築かれているんだよ。

Marko Grujic Hertha BerlinGetty

――特にどんな選手が思い浮かびますか?

アルネ・マイアーやジョーダン・トルナリガやマクシミリアン・ミッテルシュテットは、その才能によってクラブ内の下部組織からプロチームへ、そしてU-21代表へと道を切り開いていった素晴らしい例だ。U-20やU-19でも、同じようにヘルタ出身の選手たちが活躍している。そして、そういう例があるから、国外の才能ある選手たちもヘルタに興味を感じるんだ。

――それは誰のことなんでしょう?

たとえば、ジャヴァイロ・ディルロスンやマルコ・グルイッチのことだ。2人のキャリアにとって、次の一歩を踏み出すにはヘルタへ来るのが正しい選択だと確信することができたんだ。ジャヴァイロはマンチェスター・シティのU-23からやって来て、最初の数カ月のうちに、その素晴らしい才能や様々な優れた資質を証明してみせた。ただ、彼はよりにもよってオランダA代表のデビュー戦で11月にドイツと戦った時にケガをして、回復までには時間がかかりそうなんだ。シーズンの終わりにラストスパートをかける頃には、彼がまたヘルタで戦えるようになってくれればいいと思っているよ。

――グルイッチについてはどうですか?

マルコの場合は、普通なら我々が契約できるような才能の持ち主ではないけれど、1シーズンかひょっとしたら2シーズンの間ならレンタルで契約することができる、そういう選手なんだ。彼は将来的に間違いなく、(レンタル元の)リヴァプールにとって本当に役に立つ選手になるだろう。だから、ユルゲン・クロップがいつハイレベルな自分のチームで継続的にマルコを使うようになるか、問題はそれだけなんだ。マルコの素晴らしい才能はもうすでにヘルタの助けになってくれているから、我々としては彼を手放したくないところだね。だが、どうなるかはシーズンが終わってみないとわからないことだ。

――ですが、最も大きな飛躍を成し遂げたのは、明らかにニクラス・シュタルクですね。

ごく最近の成長ぶりで言えば、確かにニクラスは、外部から才能ある選手がヘルタへやって来た場合にどうなるかを示しているいい例だ。彼は19歳でヘルタへ移って来て、初めてドイツ代表に入ったんだ。

――ですが、彼に関しては、ヨアヒム・レーヴから招集された直後に、バイエルンやドルトムントが興味を示しているのではないかという報道がありました。ヘルタの希望を担うシュタルクがまた奪われてしまうのではないかという不安はありませんか?

チームが駄目になるというような不安は感じないね。我々はここ数年ずっと、選手の中から誰かを他のチームに引き渡しては、そこから得た収入を新しい契約に回し、そうやって全体としてチームを強化してきたんだ。我々のところの選手の誰かに、たとえばチャンピオンズリーグに出られるといったような、明らかにステップアップになるチャンスがあるとしたら、それを邪魔するなんていうのはほとんど無理なことだ。ドルトムントでさえほぼ毎年のように、自分たちのチームの最高レベルの選手をもっと大きなクラブに引き抜かれている。そういう問題を抱えてないのは、ドイツではバイエルンだけだよ。

――では、シュタルクに対してすでにオファーがあるんですか?

いや、それはないね。

■「ベルリンという町のDNAを体現する存在でありたい」

Volkmar PreetzGoal

――若手の育成の問題は別として、ヘルタがブンデスリーガの他の多くのクラブと違っているのはどういう点でしょうか?

今の時代、ライバルとの違いを生み出そうと思えば、休みなく激化する競争の中で自分の立ち位置を明確にしなければならない。我々は未完成のクラブだ。最後に優勝したのは1930年、1931年とずっと昔のことで、もう誰も思い出せないくらいだ。

だが我々は、世界で最も素晴らしい都市の一つであるベルリンのクラブなんだ。だから、そのクラブにいる我々は、ベルリンという町のDNAを体現する存在でありたいと思っている。多様性と先進性、我々クラブの者は皆この旗印の下に集まり、ベルリンの町も我々もこの価値観を守っているんだよ。ドイツ中探しても、ベルリンほど国際的で多様な文化が集まっている都市はない。我々のスタジアムにしても、ロッカールームにしても、そうなんだよ。

――そんなふうに考えているあなたとしては、セルビアとの国際試合で人種差別的非難があったことを、あるジャーナリストが世間に向けて公開した件についてはどう思いますか?

とにかく、それに対して抵抗の姿勢を見せて、その問題をみんなに知らせた人間がいたというのが重要なことだ。また、そういう場合に立場を明らかにするのは、ブンデスリーガのクラブやドイツフットボール連盟の責務でもある。実際、そういう立場表明があったし、中でもレオン・ゴレツカは注目に値するやり方ではっきりと自分の意見を表明している。我々の社会やフットボールの世界の中で、人種差別的考え方に居場所を与えてはならない。とりわけ、ベルリン市民である我々はそういう時に立ち上がって、そんな考え方は通用しないことをはっきりさせなければならないんだ。

――あなたはもう何カ月も前から、人種差別問題について立場を明らかにしてきました。ですが、今のあなたは以前よりもいっそう固い信念の下に発言しているように感じられます。その印象は間違っていますか?

どうだろう。時には、私がいくらかはっきり意見を口にすることもあるかもしれない。これからも私はあらゆることに関して、誰に対しても意見を表明しなければならないと考えることはないだろう。それでも、自分の信念のために戦うのは大切なことだと思っている。

――あなたはすでに今年の初めに、他リーグと比較した時、ブンデスリーガはもっと力をつける必要があると話していました。チャンピオンズリーグですべてのチームが敗退した今、それが確認されたように感じていますか?

私としてはむしろ反駁してもらいたいところなんだが、最高レベルのクラブに目を向けて国際的に比較すると、残念ながら現時点ではプレミアリーグの方が力があるというのが現実だ。ドイツのフットボールがはるかに劣っているわけではないものの、私の見るところでは、いくつかの点で大幅に改善の余地があると思っている。たとえば育成分野では、我々が再調整を必要としているのは確実だ。監督養成分野でも改善すべき点がある。それからもちろん、ブンデスリーガのどのクラブも新しい財源の開拓に努めなければならない。だが、ともかくヨーロッパリーグでのアイントラハト・フランクフルトの戦いぶりを見れば、ブンデスリーガにまだ競争する力が残っていることははっきりしているよ。

――ブンデスリーガでは、リュシアン・ファーヴルとニコ・コバチという、以前ヘルタ・ベルリンに縁のあった2人がタイトルを巡って戦っています。あなたは2人ともよくご存知ですが、どちらが優勝すると思いますか?

ついにまた強豪2チームが頂上でぶつかり合う構図になっているのは、ひとまずドイツのフットボールにとってポジティブなことだと思っている。とにかくリーグのためにはいいことだ。ドルトムントには優勝を実現するためのあらゆる力が備わっている。けれど、私はやっぱりバイエルンが優勝するだろうと思っている。タイミング的に間違いなくバイエルンが有利なんだから、なおさらだ。

――いずれにせよ、バイエルンとドルトムントのどちらかがタイトルを取るのは確実でしょう。その場合、ベルリンの町やヘルタもほんのちょっぴり優勝に参加していることになりますか?

いや、そういうわけではないと思う。だが、最後にバイエルンが上位を占めるなら、少なくともニコという生粋のベルリンっ子がタイトルを取ったことにはなるね。

――1931年以来ヘルタが最初にリーグ優勝を手にするのはいつになるか、思い切って予想してもらえますか?

いやいや、それは遠慮しておくよ。

インタビュー・文=マルティン・フォルクマール/Martin Volkmar

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