Ianis HagiACF Fiorentina

「プレッシャーは生まれた時からだから平気」偉大な父を持つヤニス・ハジが背負うもの

■レジェンドの名を受け継ぐヤニス

有名な親の子というのは、時に苦労を強いられる。ルーマニアのサッカーをけん引したゲオルゲ・ハジの息子、ヤニス・ハジもその一人だ。現在フィオレンティーナに所属するヤニスにも2世選手だからこそ、世間から特有の期待がかけられている。彼のこれからの道のりは決して平坦ではないかもしれない。しかしそんな人々の心配をよそ目に、本人は全く尻込みすることはないようだ。

「もちろんハジという名前を背負うことはそれなりのプレッシャーがあるよ。でもこのプレッシャーは生まれた時からずっとだから、今は何ともないね」

ヤニスは『Goal』のインタビューをそう明るい言葉で始めた。

■セリエAフィオレンティーナでの生活

ルーマニアでプレーをしていたヤニスにヨーロッパ各国のクラブが注目をしたが、最終的に彼が選んだチームはフィオレンティーナだ。この移籍は、彼にとって最良の決断であったようだ。

「フィオレンティーナは間違いなく偉大なクラブさ。だから僕はこのチームを選んだんだよ。若手選手の育成が上手く、フェデリコ・キエーザやフェデリコ・ベルナルデスキ、ちょっと前にはステファン・ヨベティッチやステファン・サビッチなど沢山の選手を輩出しているしね。それにフィレンツェはとても美しい街だからね」

ヤニスは世界中の19歳以下の優秀な選手50名を集めたランキング『Goal NxGn 2017』にも選ばれている。彼自身も早く自分の実力を示せるようになりたいと考えているようだ。

ヤニスは昨年10月のカリアリ戦でデビューを迎え、現在はセリエAへ適応すべく練習に励んでいる。イタリアではルーマニアリーグと比較するとより強いフィジカル、そして戦術への理解が求められるからだ。

「ここに来られてとても嬉しいよ。今はフィジカルの面でのレベルアップを図っているんだ。いつも一生懸命練習に取り組んでいるから、きっと僕もチャンスをもらえるはずだよ。フィオレンティーナで素晴らしい選手と毎日一緒に練習できて、僕は本当に恵まれているね」

また言葉の問題もヤニスにとってはそこまで大きな試練ではないという。

「イタリア語は結構話せるんだ。ルーマニア語と似ている部分があるからね。でも、もっと上手くならないといけないね。チームメートやスタッフから習っていきたいよ」

34 NxGn IANIS HAGIGetty Images

■ヤニスが目標とするのは父ではなく…

フィオレンティーナのパウロ・ソウザ監督は、ヤニスのことを「テクニックに優れた選手」であると評価しており、期待も大きい。またヤニスの父も我が息子の実力を認め、『Goal』のインタビューでは「自分よりも強い選手になれる可能性がある」と話していたことがある。だが、ヤニスが模範とし、憧れているのはかつてルーマニア代表で10番を背負った父ではない。

「もちろん父は最高のプレーヤーだったし、僕の最大の理解者でもあるよ。だけど、目標としている選手を選ぶとしたら競技は違うけど、NBAのステフィン・カリーだね。僕は彼のことを選手としてだけでなく、人生の模範としているんだ」

「だって、誰も彼の成功を信じていなかったのに、彼はNBAで夢を実現したんだよ。これはものすごいことさ。フィジカルに恵まれず、背が低かったけれど献身的に練習に打ち込んで、世界のトッププレーヤーになったんだ。彼のサクセスストーリーは、努力すれば最高の結果を勝ち取ることができるという良い例だ。これはスポーツにおいても、人生においても当てはまることだと思うね」

■夢はヴィオラの「10番」

ただ、ヤニスは間違いなく、自身の父からサッカーの才能とセンスを受け継いでいる。

「トップ下でプレーするのが好きだよ。だけどルーマニアでは攻撃のポジションならどこでもやったことがあるからイタリアでもやれる自信はあるさ」

フィオレンティーナで活躍したルーマニア出身のレジェンド、つまり先輩であるFWアドリアン・ムトゥのことも意識しているようで、「彼はフィオレンティーナでゴールを量産し、実績を残した選手だよ。ピッチでの彼のプレーを見るたびに、いつも感動していたんだ」と、少年時代の思い出を明かす。

果たしてヤニスは、将来栄誉あるフィオレンティーナの10番を背負うことになるのだろうか。数年に渡り、ムトゥが背負っていたこの背番号は、さらに遡れば、ジャンカルロ・アントニョーニやマヌエル・ルイ・コスタなどフィオレンティーナを代表する選手たちが背負ってきたものだ。

「今はベルナルデスキがフィオレンティーナの10番を背負っているけれど、過去の選手たちも皆、とても偉大な選手たちだよ。彼らのような素晴らしい選手たちがこのユニフォームに袖を通してきたことを考えると、僕もこのクラブで頑張ろうという意欲に繋がるね。いつかフィオレンティーナの10番になれることを夢見ている」

“10番”のユニフォームに対する熱意をそう語ってくれたヤニスには、もはや父ゲオルゲ・ハジの息子という面影はなかった。彼は、“ヤニス・ハジ”として彼の今後のキャリアを築いていくに違いない。

文=シモーネ・ガンビーノ/Simone Gambino

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