ボルシア・ドルトムントの事務所の会議室「ボルジッヒ・プラッツ」。定刻になるとハンス=ヨアヒム・ヴァツケは上機嫌でインタビューに現れた。しかし開始までにはしばらく時間がかかった。ヴァツケの椅子の座面が固定できず、その問題を唯一解決できるメディアダイレクターが対応に当たることになったからだ。
この不吉な椅子に腰を落ち着けたヴァツケだが、14年間続くCEOの椅子から退くことはまだ考えていないという。『Goal』と『DAZN(ダゾーン)』のインタビューで明かす。
また、彼はマッツ・フンメルスの復帰の可能性や、彗星のごとく活躍するジェイドン・サンチョの移籍の噂、さらに"欧州スーパーリーグ"構想について自身の見解も口にした。
■今季の出来に満足し「バイエルンは弱くない」
Getty Images――まず、今シーズンここまでを振り返って、あなたの評価を教えてください。
DFBポカールのヴェルダー・ブレーメン戦で敗退したこと以外は、順調だった。チャンピオンズリーグでトッテナムに負けてしまったものの、ロンドンでのアウェー戦の前半やホーム戦ではチャンスを作れていたし、言うほど悪いチーム状態ではなかった。いずれにしろブンデスリーガでの結果は素晴らしいもので、ここまで66ポイントを獲得して、昨シーズン終了時の勝ち点をすでに9ポイントも上回っている。何が起ころうとこれは素晴らしいことだし、2位につけている。
――7年が経って再びタイトルを争えるようになったことは、ブンデスリーガのイメージにとってどれほど重要でしょうか?
2015-16シーズンに再びタイトルに近いところまで行ったが、その時は4月にバイエルンとの試合に勝利すれば勝ち点2差というところまで詰め寄った。しかし0-0に終わってしまい、その時は失敗したが、20ポイント差をつけられることはなかった。しかしここ2年はバイエルンが圧倒的にリーグを支配していたし、残念ながら、このように一つのチームが飛び抜けて強い状態はヨーロッパのリーグに共通の傾向だ。フランスでは優勝チームを決めるのに1シーズンも要さないし、パリ・サンジェルマン(PSG)の独裁状態ではフランスのファンは面白くないだろう。同じようにイタリアではユヴェントスが支配している。一方、イングランドでは優勝に向けた熾烈な争いを見ることができる。そして今季はドイツでもね。
――なぜ、各国は一つのクラブがどんどんと勢力を増していくのでしょうか?
どの州にもクラブがあるほど数が多くなっている影響で、一部のクラブの実力が顕著に落ちていく傾向にある。この点を考慮すると、バイエルンと我々の資金的な格差を今シーズン乗り越えることができたらなおさら素晴らしいことだね。我々も常にはうまくいかないとは思うが、今後数年間ある程度の成功を約束できるチームを作れている印象を持っているよ。とりわけ、まだチームは最大限の力に達していないからね。
――今季に関して言うと、ドルトムントが非常に強いのでしょうか、それともバイエルンが弱くなっているのですか?
バイエルンは弱くない。それが問題なんだ。バイエルンが弱くなったとしたら、順位表は今のようになっていない。2011年に、我々が勝ち点74で優勝し、バイエルンが65だったときのことを覚えている。あのときはバイエルンが弱かった状態だ。今そういう状況だったら、私はこの部屋を予約して優勝インタビューの準備をしておくことを考えるよ。しかしバイエルンはブンデスリーガの直近15試合のうち13試合で勝利している。弱さなど見受けられるだろうか?
――今シーズンのドルトムントは、前半戦のほうが後半戦より若干よく、後半は少々の問題点が見え始めていたように思います。あなたも同様のお考えでしょうか?
後半戦でも平均より2点多く得点できているし、ほとんどのことは正しくできている。それに今シーズンは3試合しか負けていない。
――バイエルンが持っていた幸運はドルトムントに移ったのでしょうか?
私はいつも幸運が転がり込んでくるように行動してきた。チームへの奉仕と勝利への意思はこれまでバイエルンが常にやってきたことでもあるだろう。それは運などではなく、信念なんだ。そこがバルセロナやリヴァプールのようなビッグクラブに見られる違いだよ。そして、今や我々にもその意識がある。メンバーはチームへの奉仕とメンタリティを内に秘めているよ。今のチーム状態を長く維持できれば、それは運なんかではなくなるだろう。
――ドルトムントがチャンピオンになったら何が起こるでしょうか。
バイエルンのように毎年チャンピオンになれていないから、街はそれこそ爆発的な大騒ぎになるだろう。だが、まだそれは仮定の話だ。まだ数試合残っているし、どちらが1位になるかはまだわからない。敵は非常に強いからね。夢を見ていても何の役にも立たない。
■国際舞台でのドイツ勢について…
Getty Images――ドイツのクラブは、今季の欧州カップ戦ではあまり良い結果を残せていません。ブンデスリーガは国際舞台とのつながりを少々失っているのでしょうか?
今の成績は単なる一時の出来事にすぎないと思う。確かに今のドイツは全てが悪天候で暗闇の中にいる。2013年にCLでドイツ同士の決勝が行われた時は、専門家は口々に我々が世界最高のリーグだと言ったが、そうではなかった。今回は抽選の不運もあった。バイエルンはリヴァプール戦、我々にとってはトッテナム戦よりもずっとやりやすい試合が明らかにあった。私がここで明言したいのは、ドイツのクラブはまた準決勝や準々決勝に行けるということだ。スペインのクラブが近年ずっと優勝しているが、今年のCLではベスト8の段階で1チームしか残っていなかった。それでも「スペインサッカーは終わった」と言っているのは聞いたことがないよ。
――粗探しをしてしまうメンタリティはドイツ独特のものということでしょうか?
確かにそういう思考は非常に深く我々の心に根ざしているよ。試合に負けたときには私でも、しっかり考えれば間違えていると分かるようなことが頭をもたげてくる。イングランドが莫大な放映料で世界基準になっていることは受け入れる必要がある。フランクフルトは、近年ドイツが結果を残せていなかったEL(ヨーロッパリーグ)で良い成績を残している。しかしもちろんドイツサッカーが世界を席巻しているとはとても言うことはできないよ。

――ヨーロッパのトップに返り咲くためには、バイエルンがやっているような8000万ユーロ(※リュカ・エルナンデスをアトレティコ・マドリーから獲得)の移籍が必要ですか?
それはわからない。たとえばトッテナムは夏の移籍市場で誰も獲得しなかったが、リーグでも好成績を収めているし、チャンピオンズリーグ(CL)で準々決勝に進んでいる。しかし、もちろん資金は助けになる。パリはカタールが経営し始めるまでこれほど多く優勝してはいなかった。一定の資金があれば、成功を妨げられることはないだろうね
――8000万ユーロの選手がドルトムントに来るのはいつになるでしょうか?
それは、それだけの資金を我々が確保して、意味のある移籍ができるときだよ。今はそれについて心配する必要はない。我々が8000万ユーロで選手を売却しても、いくらか税金を払わないといけないからね(※それでもまだ資金が足りないというジョーク)。完璧に断言はできないけれど、近い将来には起こらないだろう。
――そのような大型移籍はバイエルンにとっては意味があるということですか?
そうとも言い切れない。彼らがそれだけの資金を持っていることは想像できるし、(リュカ)エルナンデスがそれに見合う才能のある選手だということも明らかだ。そのような大型資金をオフェンスに使うのかディフェンスに使うのかはバイエルンが判断しなければならないが、彼らはうまくやっている。そうでなければここまでの成績を収められないよ。
■サンチョは「来年もドルトムントで」

――最近のドルトムントの移籍には満足されていると思います。マヌエル・アカンジの成長についてはどう思いますか?
非常に満足している。彼がヨーロッパの最高峰のセンターバックであることは確かだし、期待を満たす活躍をしてくれている。数年前のネヴェン・スボティッチやマッツ・フンメルスのように、今やアカンジ、(ダン=アクセル)ザガドゥー、アブドゥ・ディアロ、レオナルド・バレルディといった成長著しい若手がいる。例えばヴィルヒル・ファン・ダイクのような完成された選手に8000万ユーロを費やすことは金銭的に一度くらいできるだろうが、ドルトムントとして他のポジションに同様のことをすることはできない。だから価値が上がり切っていない選手を獲得してくる必要があるんだ。
――マッツ・フンメルスが戻ってくることはないのですか?
彼は戻ってこないだろうと思う。マッツはここで比類ない成功を収めたし、今でも良い関係を保っている。けれど、彼はバイエルンに戻ることを3年前に決断したんだ。
――そしてジェイドン・サンチョについてです。彼はどうでしょうか? ヨーロッパの多くのクラブが彼を狙っています。
気にしてはいないよ。彼が来年もドルトムントでプレーすることは皆知っているだろう。これは金銭でどうこうなることではない。そして、知っての通り、ヨーロッパで我々に獲得の打診をしてきたチームはいないよ。
――古巣であるマンチェスター・シティはまだ彼の契約に関わっていますか?
契約内容について情報を持っていないが、シティからは何も聞いていないよ。
――マリオ・ゲッツェは、ワールドクラスのレベルに戻ってくるでしょうか?
イエスともノーとも言えない。正直に言えば、マリオは回復の最中だ。最初にドルトムントで過ごした当時のマリオは若く、敵も彼のプレーに慣れていなかった。若さゆえの物怖じしないプレーはチームで機能していたし、彼の当時の成功のもう一つの理由だろう。そして彼は再びドルトムントに戻ってきたが、メディアに取り上げられなくなっている。もちろん、代謝機能の問題が彼から多くを奪っている。今や彼は我々にとって価値のあるプレイヤーに戻ってきつつあるが、彼がいつ戻ってくるかは、はっきり言うことはできない。過度のプレッシャーはかけるべきではない。去年はチームがうまく行かなかったので彼も大変だっただろう。しかし、彼が他のフットボーラーができないプレーをするということは、もう皆の知るところだ。マリオは誰も習得できないプレーを試合で披露することができる。
――今シーズンを振り返って、リュシアン・ファーヴル監督についてはどう思いますか?
順調そのものだ。これ以上は望めないだろう。いわゆるベテランがチームにいない中で27試合も首位でいられたのだから、何も言いようがないだろう。彼はそれほどすごいことをやっているし、ドルトムントにとって適切な監督だ。彼の仕事の前には脱帽するしかないよ。
■バイエルンとの関係性は?
Getty Images――あなたは2022年までチームと契約しています。カール=ハインツ・ルンメニゲ(バイエルン・ミュンヘンCEO)とどちらが先に引退されるでしょうか?
(笑)。メディアの記事を見る限り、ルンメニゲのほうが私より先に引退しそうだね。けれど、それは誰にもわからない。フットボールでは物事は非常に速く変化する。私の後任が議論されていないことをただ願っているよ。
――もしも後任について考えるのであれば、誰が適任だと思いますか?
私の目には今誰も映っていない。陳腐な話題だが、私は59歳だけれど引退することは考えていない。なぜ62歳で辞めなければならないだろう? 私は祖父のように少なくとも95歳まで生きるつもりだ。あと30年も何もせず生きていられるだろうか? だから2022年で終わりだと言ったことがないんだ。
――では、あなたとバイエルンとの現時点での関係性について教えてください。
非常にリスペクトしている。自らのアイデンティティを持って顕著に成功したクラブだからだ。そして、FCバイエルンの人々と問題はない。特にルンメニゲとの信頼関係は非常に高い。これは特別なものだ。
――ウリ・ヘーネス(バイエルン会長)との関係も同様ですか?
ウリ・ヘーネスとはあまり連絡を取っていない。私がコンタクトを取っているのはルンメニゲだからね。彼は私と同様ウェストファリア地方の生まれで、それが良好な関係の一助になっている。ウリ・ヘーネスと私はそこまで緊密な関係ではないが、彼がバイエルン・ミュンヘンでしてきたことは分かっているよ。
――バイエルンとの間に連帯感があると捉えてよろしいですか?
いや、緊密な同盟というわけではないんだ。バイエルンと我々はたんにできるだけ勝負に勝ちたいと思っている。普段の対戦もあるし、そのときには我々は向かい合う。預言者のように人々をまとめ上げる必要はないんだ。しかし、ワールドフットボール構想の課題に投票して意見をまとめ上げようとはしている。ドイツサッカーの世界への影響という面では向上の余地があると思っている。ルンメニゲと私は投票に責任感を感じているよ。
――ということは、2022年で辞職され、国際サッカーの事務官を務めることもありうるということですか?
いや、私は典型的な事務官にはならないよ。私のモチベーションは常に次の試合。相手がフライブルクだろうが、マインツだろうが、バイエルンだろうがね。けれど、世界中を回って様々な議題を話し合うことは、私には到底できないだろう。
――いずれにしろ、スーパーリーグ参加のためにはドルトムントに籍を置く必要があります。
チャンピオンズリーグ、スーパーリーグ、それがどう呼ばれるかは重要ではない。重要なことは国内リーグや、リーグの文化、ファンに対して敬意を持つことだ。私はブンデスリーガの生まれで、毎週土曜日にブンデスリーガを愛してきた。ブンデスリーガには日常的に関わっていかなければならない。これが最も重要なことなんだ。だからこそ、リーグを犠牲にしたコンペティションがあったとしても、我々が支持するものではないね。
インタビュー・文=Goalドイツ語版
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「※」は提携サイト『 Sporting News』の記事です





