2019シーズンの明治安田生命J1リーグがいよいよ開幕。鹿島アントラーズは23日にホームで大分トリニータと対戦する。昨季、Jリーグベストヤングプレーヤーを受賞するなど、ブレイクを果たした安部裕葵は、強い覚悟を持って新シーズンに臨もうとしている。チームを引っ張っていく存在になる――。伝統の10番を受け継いだ20歳が、描く今季とは。
■鹿島の10番を背負い、新たな挑戦へ
昨年のクラブワールドカップ準決勝・レアル・マドリー戦後に人目をはばからず号泣した安部裕葵にはもう1つのエピソードがあった。
南米王者のリーベル・プレートに0−4で敗れた3位決定戦のあと、記者陣に囲まれて大会を総括する内田篤人の後ろを安部が通り過ぎる。
特に報道陣を避けるそぶりもない安部は少し歩く速度を緩めたように思えた。そこから“あれ、誰も止めないのかな?”という表情を見せた後に1つ頷いてミックスゾーンを後にした。
安部のコメントにまったく価値がなかったわけではない。それでも報道陣にとっては、内田のコメントを取ることの方が優先順位が高く、後日ラストゲームになったことが判明する小笠原満男が目頭を赤くながら通り過ぎたときに、内田が「僕らには優しいんですよ」と言いながら話が盛り上がってきたところでもあったのだ。
©Getty Imagesその小笠原が昨季限りで現役を引退し、内田はフランスのトゥールーズに移籍した昌子源に代わり、新シーズンのキャプテンマークを任された。そして安部は、金崎夢生のサガン鳥栖移籍以降、空き番号となっていた10番を背負うことになった。
よく背番号でサッカーをするわけではないと言われるが、クラブには特別な番号がある。10番は多くのクラブで中心選手が背負う番号ではあるが、鹿島は草創期にジーコが背負い、さらにビスマルク、レオナルドとJリーグの歴史を代表するブラジル人選手が背負った。その後、“黄金世代”を代表する選手である本山雅志が長期にわたり背負った。
そしてスペイン移籍までの短い期間ではあるが、現在日本代表の主力として活躍する柴崎岳も付け、金崎、そして半年の空白を経て安部へと受け継がれた。
「皆さんが思ってる通りの番号ですし、価値のある番号をより僕の力で価値のあるものにしていけたらと思います」
■「チームを引っ張っていく存在になりたい」
2月14日のキックオフカンファレンスに鹿島の選手代表として出席した安部は「今日は練習がある日なので、しっかり練習したい気持ち。チームの代表としてしっかりやらなきゃ」と語っていたが、新しいシーズンに向けてうずうずする気持ちが見て取れた。
「物事はいつでも、何か失った時には何か得られる循環があるものだと思っている」と安部は語る。
「昌子選手や西選手などいろんな選手が抜け、たくさん選手が入ってきて、どの選手かはわからないですけど、どの選手が活躍できるかっていうのが楽しみです。自分もその選手の1人としてチームを引っ張っていく存在になりたい」
主に中盤の左サイドを担う安部は鋭いドリブルや正確なクロス、意外性のあるラストパスといった武器でチャンスを生み出す存在であり、当然ゴールも期待される。そうしたプレーに加えて強く意識しているのがゲームコントロールだ。
「ゲームコントロールというのはチームの全員ができたほうがチームは強い。いち早くゲームの雰囲気だったり流れを読むこと、それをこのチームにいれば自然と学べることですし、そういうものを全員がもっと、身につけている人もいますけど、もっともっと試合感を身につけられたら、もっと強いチームになると思います」
昨年は苦しい戦いを乗り越えてクラブ20冠目、そしてAFCチャンピオンズリーグを制し、悲願のアジア王者の座をつかんだが、リーグ戦は前半のつまずきが響き、終盤の追い上げも及ばず3位に終わった。さらに天皇杯の準決勝では浦和レッズに敗れてタイトル奪取に届かなかった。
■「去年の成功体験、失敗体験をうまく生かす」
©J.LEAGUE今年はリーグ2連覇中の川崎フロンターレはもちろん、かつて鹿島を前人未到の3連覇に導いたオリヴェイラ率いる浦和レッズもタイトルすべてを獲得するという目標を掲げている。
その一方で、もともと“ジーコスピリット”を伝統とする鹿島は宣言などしなくても、すべての試合で勝利を目指し、タイトルを目指すという不変のテーマがあり、それは鹿島の選手たちに聞くまでもないことなのだ。しかしながら、実際にすべてのタイトルを獲得することが、険しい道であることも苦難の末にアジア王者となった彼らだからこそ、誰よりも心得ている。
「もちろん難しさは去年1年間戦って理解しましたし、あれだけハードななかで戦い続けるのがどれだけ大変かわかっているので、それを今年にどう生かすか。去年の成功体験、失敗体験をうまく生かして、状況に応じて使い分けて行くことができれば、1シーズンをみんないいコンディションの中で戦い続けることができると思います」
今年の夏には安部の世代にとって大きな目標であるU-20W杯がある。昨年のU-19 AFC選手権でインドネシアとの完全アウェイを制して勝ち取った権利であり、安部にとっても世界の檜舞台で実力を知らしめ、選手としての価値を高めるチャンスであることは間違いない。
しかし「まだ選ばれるかどうかもわからないので」と語る安部。代表というものを一度胸にしまい、栄光ある鹿島アントラーズの10番として新たな戦いに挑んで行く。
文=河治良幸
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