■“新しいメッシ”
悲願のタイトル獲得は達成できず、トーナメントを通して本来の実力を発揮することさえできなかったが、アルゼンチンの人々は今大会でのリオネル・メッシに惜しみない称賛を送った。彼がプレー以外の場面でこんなにリーダーシップを見せたのは初めてだったからだ。
初戦でコロンビアに敗れた(0-2)直後、「チームには良いところもあった。前進するのみだ」と冷静なコメントを残し、続くパラグアイ戦に向けた先発メンバーが選手に知らされる前にメディアに漏れた時にはリオネル・エスカローニ監督の非を責め、選手たちと指導陣が腹を割って話し合うきっかけを作り、チーム内の団結力を高めた。一部の選手と監督の信頼関係が崩れたと噂されると、公の場で「エスカローニはチームと一緒に成長しているところ」と語り、ミスを犯した指揮官に対して寛容な姿勢を見せた。
準々決勝のベネズエラ戦では、初めて国歌を歌う姿を披露してアルゼンチン国民の心をわし掴みにし、準決勝のブラジル戦(0-2)ではエリア内での接触プレーからPKが与えられなかったことについて「今大会では馬鹿馬鹿しいファウルばかりとられているのに今日はVARが使われなかったとは信じられない」と不服を唱え、「ピッチが(ブラジル側に)傾けられていたんだ。全てブラジルが操っているのだから仕方がない」とコメント。3位決定戦(2-1)で退場させられた後は表彰式も拒む反逆児ぶりを見せ、その理由を聞かれると「汚職の一部になりたくなかったからだ。今回はブラジルが優勝するように仕組まれているのさ」と言い放った(この一件で処分を受ける可能性も伝えられてはいるが)。
南米サッカー連盟を敵に回すことも恐れない、そのディエゴ・マラドーナ級の大胆な発言は多くの人を驚かせたが、これまでピッチ外でのキャプテンとしての姿勢が問われ続けてきたメッシの「熱い言動」はアルゼンチンの人々の魂を揺さぶり、ある著名ジャーナリストに「このコパ・アメリカは“新しいメッシ”を生んだ」と明言させたほどだった。
■未来
Prensa AFA3位決定戦から一夜明けたアルゼンチンでは、メッシが南米サッカー連盟に反旗を翻したことばかりが話題になっている。が、大会前まで代表チームの体制が問題視されていたことを忘れてはならない。今回の結果は、チームを取り囲む状況に変化をもたらした。
当初の予定ではコパ・アメリカ終了後、アルゼンチンサッカー協会の代表チーム強化部によって監督の去就が審査されることになっていたが、3位決定戦を待たずしてエスカローニ監督が12月末まで続投することが決まった。エスカローニ監督は大会を利用して基盤を作り、ベネズエラ戦とブラジル戦では2戦連続して同じ先発メンバーを起用。アルゼンチン代表が2試合続けて同じ布陣でピッチに出たのは2016年6月以来、実に40試合ぶりのことだった。
グループステージ敗退の危機に直面したパラグアイ戦(1-1)の後、国内ではエスカローニ監督を起用し続けることへの批判が殺到したが、その後ラウタロ・マルティネスやロドリゴ・デ・パウルといった控えメンバーをレギュラーに固定し、レアンドロ・パレデスを軸とする若手主体のベースを維持しながら安定を図った。チームは支持率を高め、ブラジル戦では負けたものの「今大会ではベストの内容」と評価されただけでなく、一部ファンの間でエスカローニ監督を容認する声も聞かれ始めた。実際、スポーツ紙『OLE』が行なったアンケートでは、半数近い43%の回答者が監督の続投に賛成しているという結果が出ている。
メディアの間でも、エスカローニ監督に対する評価は二つに分かれている。例えば、パラグアイ戦でのラウタロ・マルティネス、チリ戦でのパウロ・ディバラのように、攻撃の要として最も良い動きを見せていた選手を下げてコンディションが良くなかったアンヘル・ディ・マリアを投入したことについて、「経験不足による理解不能な采配ミス」と説く者もいれば、「世代交代の真っ只中にあるタイミングでグループ意識を重視した賢明な判断」と見る者もいる。監督自身をはじめ、アシスタントを務めるワルテル・サムエル、ロベルト・アジャラ、パブロ・アイマールといった元代表OBたちが様々な意味で“父親”ではなく“兄”のような存在となっていることが、若いグループに良い効果を与えているという考えもある。
来年3月から始まる2022年W杯南米地区予選に向けて、監督として現時点でまだ15試合しか指揮していない新米指導者に代表チームを任せることに不安を抱く人は少なくない。だがロシアW杯後、代行という不安定な立場にありながらできる限りのことをやって来たエスカローニ監督は、今回のコパ・アメリカで自信をつけ、時間を稼ぐことに成功した。そして何よりも、メッシから絶大なサポートを得られたことは大きい。41歳の若き指揮官が今年いっぱい監督をすることについて、メッシはこのように語っている。
「(大会を通して)僕たちはプレーのアイディアを見つけ出し、少しずつ成長できたと思う。監督が12月まで続けることは安心感を与えてくれるし、代表チームにも安定をもたらす。今大会に参加した若い選手たちにとっても、安心できる環境は成長し続けるためにも良いことだ」
■キャプテン

チームと一緒に成長する未熟な監督の手で続けられることとなったアルゼンチン代表の再建。外部の者が不安を抱く一方、メッシは現状維持こそ安定をもたらすと言い切る。アルゼンチンの人々は、これを信じて見守るしかない。経験値の高い監督たちから代表へのオファーを悉く拒否され続けてきたアルゼンチンサッカー協会のクラウディオ・タピア会長も、これまで非難された窮余の策にメッシの後ろ盾がついた展開には微笑んでいるはずだ。
3位決定戦の後、メッシは自身のインスタグラムにアルゼンチン代表メンバー全員が笑顔でおさまった写真を投稿し、そこに次のようなメッセージを添えた。
「僕たちは勝利とともに、胸を張ってコパを去る。今回、フットボールは僕たちに公平ではなかったという感触を抱きながら。僕たちは明日の決勝を戦うに値するだけの良いプレーをしたし、ブラジルをも上回っていた。でも希望を持って前を向くしかない。この代表には未来があるし、大きな基盤もある。もう少し時間が必要なだけなんだ」
チームにとってもメッシにとっても、ピッチ内外で実に様々なことが起きた今大会。キャプテンが伝えたメッセージは、その締め括りに相応しく、説得力溢れるものだった。
文=藤坂ガルシア千鶴(Fujisaka de Garcia, Chizuru)
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「※」は提携サイト『 Sporting News』の提供記事です

