カンテとナインゴラン、現チェルシーの心臓と元ターゲットが歩むそれぞれの未来

Radja Nainggolan Roma
Getty Images
ラジャ・ナインゴランはチェルシーに移籍することがうわさされていた。しかし彼はローマに留まり、彼らしいキャリアを築こうとしているようだ。

2016年4月。アントニオ・コンテは、チェルシーの監督就任に合意した直後に、ラジャ・ナインゴランが獲得のメインターゲットであることを明かした。

元イタリア代表監督のコンテは、フース・ヒディンクの後任に就く契約交渉の段階から、獲得すべきターゲットの要望をすでにクラブに細かく伝えていたという。そしてその筆頭には、先週チャンピオンズリーグでチェルシーの前に立ちはだかったベルギー人の名前があったのだ。

チェルシーはコンテを新監督に任命した3日後、ローマのディレクターを務めるワルテル・サバティーニと面会し、この好戦的なMF…ナインゴラン獲得作戦を開始した。

当時のローマはというと、ファイナンシャル・フェアプレー(FFP)制度の規定違反によって罰金を科されている真っ最中。スタープレーヤーを売却して資金を工面する必要に迫られていた。そして、実際のところローマもチェルシーにナインゴランを売却することを検討し、両者の交渉はほぼ合意の状態にあったと言ってもいいだろう。

しかし最終的には、ナインゴランがローマでの暮らしを気に入っていたこともあり移籍話は破談に。ナインゴランには3,100万ユーロ(約41.5億円)の移籍話が持ちかけられていたが、セリエAからプレミアリーグへの移籍に彼自身が慎重であったことも理由の一つである。

その後、ローマは5年契約の終わりが近づいていたミラレム・ピアニッチを3,200万ユーロ(約43億円)でユヴェントスに売却し、FFPに関する懸念を解消することに成功した。これにより、ローマは資金面のやりくりをほぼクリア。それ以上選手を放出する必要性がなくなったのである。

結局チェルシーはターゲットを変更し、2016年7月にエンゴロ・カンテを移籍金3,800万ユーロ(約51億円)で獲得した。カンテは昨シーズン移籍した直後にPFA年間最優秀選手賞に選ばれ、現在は攻撃面でのプレーを向上させる指導を受けている。

ナインゴランと比較すると、よりディフェンシブなプレーヤーといえるカンテは、コーバム・トレーニング・センターでパスとシュートの精度向上に励んだ。昨シーズンのデータではナインゴランはカンテの3倍となる数の枠内シュートを放っている。

それでも、コンテ監督はカンテの攻撃力を買っているようだ。高い位置からプレスをかけることを指示し、守備だけではなく、攻撃面のプレーにも影響を与えられると信じている。

このカンテに対するコンテ監督の期待度の高さは、ナインゴランがチェルシーに来る機会を失ったことを意味している。ナインゴラン自身も今年ローマと2021年までの新たな契約を結んでいるし、そもそもチェルシーは2010年にヨッシ・ベナユンを獲得したのを最後に、30歳以上の選手とは契約していない。ナインゴランは来年の5月に30歳を迎える。

チャンピオンズリーグのローマ戦の前に開かれた記者会見の中で、コンテ監督はナインゴランの獲得を目指していたことを認める異例の発言を行った。

Conte GFX

「過去には、ナインゴランの獲得を試みたこともあったよ。でも彼はローマのプレーヤーなんだ。私は彼とローマに偉大なリスペクトを抱いているよ。そして私の選手たちにもね。だからナインゴランについて話をするのは正しいことではないんじゃないか。彼は本当にいいプレーヤーだし、私にとって最高のMFの一人だ。けど彼は敵チームのプレーヤーなんだよ」

報道ではマンチェスター・ユナイテッドやインテルもナインゴランを狙っていたとされている。ナインゴランは、イタリアのTV番組『Tiki Taka』の中で、昨シーズン、コンテから寄せられていた関心について語っている。

「今年、僕はコンテから連絡は受けていないよ。彼は去年のことが原因でまだ怒ってるんじゃないかな。少なくとも僕はそう思うよ。実際のところは分からないけどね」

しかし、現在ローマにいるという選択は間違いだと思っていない。

「前にも話した通り、僕はこの場所がとても気に入っているんだ。僕はローマにいられて幸せさ。ここでプレーするのが好きだし、頻繁にクラブを変えるのは僕のスタイルじゃない。僕はチームに愛情を示したいんだ」

Radja Nainggolan

チェルシーは今年の夏に再びリュディガーの獲得に動き、ローマから3,800万ユーロ(約51億円)で連れてくることに成功した。一方、ナインゴランはイタリアの首都で自身のキャリアを終えることに近づくことができただろう。

カンテがキャリアを積むにつれて着実に成長を続けているように見える以上、チェルシーがナインゴランの獲得を失敗したことは結果的には「よかった」と主張できるかもしれない。

ナインゴランがチェルシーに移籍することはもうない話かもしれないが、カンテもナインゴランもそれぞれの場所で、それぞれの輝き方をするのだろう。

チャンピオンズリーグ・グループステージ第3節はカンテが出場しなかったため両者をピッチで見られることはなかった。しかし31日にローマで行われるリターンマッチでは、ピッチで二人の競演が見られるかもしれない。

文=ニザール・キンセラ/Nizaar Kinsella

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