チャンピオンズリーグ優勝2回、リーグ制覇6回、EURO制覇にUEFA最優秀選手受賞――。
ルート・フリット氏は、華々しい現役生活を送ってきた。わずか16歳でプロデビューを果たし、その5年後にはフェイエノールトでオランダ国内二冠を達成。PSVでは83-84シーズンから連覇を達成すると、1987年に加入したミランではセリエA三連覇。そして88-89シーズンからは2季連続で欧州の頂点に立った。マルコ・ファン・バステン、フランク・ライカールトと共に“オランダトリオ”として一時代を築いた名選手である。
1995-96シーズンからはチェルシーでプレイングマネージャーを務め、翌シーズンから指導者に専念。その後ニューカッスルや古巣フェイエノールトなどを渡り歩き、2017年にはオランダ代表のアシスタントコーチも務めた。
そんなフットボール界のレジェンドが、今回『Goal』の独占インタビューに応じてくれた。母国オランダの強さの秘訣や躍進したアヤックス、そして“お金”について、時に冗談を交えながら語ってくれた。
インタビュー=レザン・イェティス/Rezzan Yetis
編集・校正=Goal編集部
■オランダの誇り
Getty――あなたはマルコ・ファン・バステン、フランク・ライカールトと共に“オランダトリオ”として一世を風靡しました。クラブではオランダトリオの活躍でACミランの黄金期を築き、代表チームではEUROの優勝に貢献しました。でもW杯は優勝できなかった。それはなぜだと思いますか? W杯とクラブの優勝、どちらを優先しますか?
「オランダは本当に小さな国なんだ。沿岸に近いアムステルダムから車で1時間半走れば、東の端に着いてしまう。1時間も南下すればベルギーだ。そのことが私達に強い誇りを与えている。これまでに3回もW杯決勝に進出した。3回とも負けはしたが、オランダのような国にとっては、そこに行けること自体が奇跡なんだ。我々は何でも知っていると感じている。なぜか? 大きな国に囲まれているからだよ。フランス、スペイン、ドイツ、イングランド。だから彼らとは少し違いを見せないといけない。勝つということ、これまでにも3回W杯決勝に進出していて、EUROでも優勝している。これは信じられない功績なんだ。もちろんW杯を制覇して頂点に立てれば最高だった。でもこれまでやってきたことに誇りに感じているよ。最近、またオランダのフットボールが話題になっている。オランダには良いリーグがあるし、アヤックスがチャンピオンズ・リーグで躍進したからね。皆が我々を見て言う。『こんな小さな国にどうしてあんなフットボールができるのか?』ってね。これだけは言えるよ。我々の方が何でもよく知っているし、そのことを誇りに思っているんだ」
――今のモダンフットボールの中で、自分の立ち位置をどう感じていますか? あなたのスタイルに近いと思う選手はいますか?
「難しいね。良く聞かれるよ。誰もが自分自身であるべきだし、自分のプレーに誇りを持つべきだ。ディエゴ・マラドーナ、リオネル・メッシ、クリスティアーノ・ロナウドを誰かと比べることなんてできないだろう? 誰もが自分のスタイルを持つ特別な存在だ。17歳になる息子がいる。彼もフットボールをやっている。つい最近人生で初めてフットボール選手として契約のオファーを受けたんだ。AZアルクマールに所属していて、彼を誇りに思っているよ。簡単に成し遂げた訳ではない。彼に言ったよ。『自分らしく。皆に父親に似ていると言われるだろう。だけど、自分のアイデンティティがあるんだ。お前はお前だ。誇りを持って自分にとって大切だと思うことに取り組めばいい』とね」
■デ・ヨング=ジダン?
Getty Images――オランダはフットボールの学校みたいですね。最近、例えばアヤックスみたいにユース上がりで非常に美しいゲームをする選手の育成に成功されています。監督の輩出に関しては、選手育成ほどは上手くいってないようですが……。現在プレミアリーグにはオランダ人監督はいないですよね。これは闘争好きで何事にも反対する気質のせいでしょうか?
「皆がルイ・ファン・ハールみたいな訳じゃないよ(笑)。全てのオランダ人が彼みたいな性格ではない。例外さ。ディック・アドフォカートは良い男だし、優しくて全てが揃っている。エルウィン・クーマンはとても穏やかだし、フランク・ライカールトは成功した。私もチェルシーで監督を務めたが、うまくやれたよ。流れがあるんだ。スペイン代表が活躍すると、ある日突然スペイン人監督が求められる。私が活躍していた時は、急にオランダが注目された。そんなものだよ」
――CL準決勝ファーストレグ、トッテナム戦で決勝ゴールを決めたのはドニー・ファン・デ・ベークでした。彼をどう思いますか? あなたの時代の選手でいうと、誰に一番似ていると思いますか? アレッサンドロ・コスタクルタ氏とファビオ・カペッロ氏は、パベル・ネドベドとヨハン・ニースケンスの名前を挙げていますが……。
「1年前にアドフォカートと一緒に代表チームにいたときに彼を見ていた。とても若くて、忍耐力が必要だった。彼の良いところは、頭で考えるところだ。若い子にしてはずいぶん成熟しているよ。自分の欲しいものを知っているし、ハードワークする。ゴールを量産するタイプのミッドフィルダーって感じだね。フランク・ランパードに少し似ている。いつもゴールを決めるし、ちょうどいい瞬間に現れる。テクニックがあって、ゴール前での冷静さを持ち合わせている。ランパードみたいだと思うよ。ゴールを決める選手だ」
――来シーズンから、フレンキー・デ・ヨングがバルセロナに加入します。彼の将来性はどうですか? 過去のレジェンドと比べると、彼は誰に一番近づけそうですか?
「デ・ヨングは自由な魂、フリーソウルを持っているよ。全てを限界まで追い込む。好敵手として相手にチャレンジする。ボールを失わないから他の選手が適切なポジションを取りやすいし、彼自身もボールを欲しがる。だから、敢えて比べるならジネディーヌ・ジダンみたいな選手だね。ボールを受けて、選手の間を滑り抜けていったりする。彼のプレーが好きだ。とても若いしね。アヤックス在籍2年にして、圧倒的な存在感で成長を見せた。バルセロナでプレーすることは、彼にとっては良いことだ」
■重要な“お金”
Getty Imagesーーあなたがプレイングマネージャーを務めたこともあるチェルシーですが、成功のシーズンとはいかず、マウリツィオ・サッリ監督が批判されています。チェルシーはどうでしょうか? サッリ監督をどう思いますか? チェルシーに合っていると思いますか?
「今のチェルシーは、監督をやるには厳しいクラブだと思うよ。うまくいっていると思ったら解任される。うまくいかない方が残れる可能性があるね。チェルシーの奇妙なところだ。(現オーナーの)ロマン・アブラモヴィッチによる買収はチェルシーにとって画期的だった。彼は資金を持ってきたし、ベストな選手を買った。当時はいつも勝っていた。ロベルト・ディ・マッテオ監督の時に思いがけずチャンピオンズリーグで優勝も果たしている」
「だが今は、プレミアリーグには同じぐらいの資金力を持ったクラブがいくつかある。マンチェスター・シティもそうだし、リーグから2億ポンドを得てチャンピオンシップ(2部相当)から昇格してくるクラブもある。彼らには投資するお金がある。マンチェスター・ユナイテッドも今や同じ問題を抱えている。彼らがうまくいっていた時代には、唯一豊富に資金を持つクラブだったんだ。今はどのクラブもお金を持っている。だから彼らも難しくなったんだ。お金の問題は大切だよ。良い選手を取ることができるからね。サッリはチーム再編が必要な時に就任して、時間も十分ではなかった。少し気の毒に思うね。だが、ジョルジーニョを獲得したことは間違っていたと思う。彼は中盤の良い選手だろう? でも既にいたじゃないか! フランスから来てW杯を制覇するほどの選手がね。それなのになぜ別の選手をわざわざ取ったんだ。今は右インサイドハーフで起用している。なぜだ? フランス出身の最高の守備的ミッドフィルダーなのに。なぜそうする? 個人的にはその辺りから問題が始まっていると思う」
ーーもしエデン・アザールがチェルシーを去ったら、誰がその穴を埋めると思いますか? (来季からプレーする)クリスチャン・プリシッチにその資質はありますか?
「まず最初に、来季の監督の去就に注目する必要がある。彼がチームに残って自分のチームを作るチャンスを与えられることを願うよ。プレミアリーグには移籍が噂される選手はたくさんいる。ポール・ポグバが移籍するかもしれないし、クリスティアン・エリクセン、ハリー・ケインも移籍するかもしれない。どれも予測の域を出ないし、分らないよ。地球上で最もビッグなクラブ、レアル・マドリーを誰も止めることはできないからね。もしレアルから話があったら、彼らはその選択をすると思う。レアルの動きを見るしかない。壮大な計画を立てているだろうから、待って様子を見よう」
ーー一時期、音楽に興味を持っていましたね。『Not The Dancing Kind』という曲を作られましたが、今も音楽をやっているんですか?
「人生、誰だって時々やらかすだろう(笑)? 少し自信を持ち過ぎてしまったり。そういう時期があったんだ。誰だって音楽は好きさ。バンドをやっている仲間がいて、彼らのプロモーションで時々一緒に活動していたんだ。楽器は弾けないし、歌も歌えない。でも彼らに曲作りを頼まれて作っていた時期があるんだ。それほど悪くはなかったよ。自慢できるような曲ではないけどね。息子達にいつも笑われてるよ。ポップスのトップ10入りしたんだ。ポップスでトップ入りをしたことがあるかい? ないなら静かにしてな! 人生の中で一度はやりたくなるようなことの一つだよ。クレイジーだよね。音楽は感情を表している。歌によって癒されることもある。それが音楽の力さ」
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「※」は提携サイト『 Sporting News』の提供記事です



