Emre Can Cristiano Ronaldo

エムレ・ジャン、ドイツ代表から声がかからない現状に「国外での受けとめ方は異なる」/インタビュー前編

チャンピオンズリーグのアトレティコ・マドリー戦でファンの心を鷲掴みにしたユヴェントスMFエムレ・ジャンだが、故国ドイツでは依然として評価が高いとは言えない。

最近行われたドイツ代表のセルビア戦やオランダ戦では、ヨアヒム・レーヴから声はかからず。だが3月末に行われた『Goal』のインタビューでは、彼は「国外での受けとめ方は違っている」と語る。

4時間にも及ぶロングインタビューで、ジャンはイタリアでの生活やクリスティアーノ・ロナウドのこと、人種差別問題についても語り、さらに自身がユルゲン・クロップに与えた落胆や、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領との会見を断った理由についても明かした。

■「落胆を力に変えたい」

Emre Can Alvaro Morata

――ジャンさん、あなたはチャンピオンズリーグラウンド16のアトレティコ・マドリー戦で、勝利の立役者の一人となる活躍を見せました。この試合はあなたにとって突破口になりましたか?

僕にとっては、ユヴェントスへ来て初めて国際舞台で自分の力を示すチャンスだった。世界中の多くのフットボールファンがあの試合に注目していたし、僕は自分の力を出し切ってトップパフォーマンスを見せたいと思っていたけど、うまくやれたんじゃないかな。けれどあの一戦を別にしても、ベスト・コンディションの時の自分がどんな力を発揮できるかはわかっている。僕には「ユヴェントスで必ず成功を収める」と言えるだけの自信があるんだ。これまでのキャリアで、どこのクラブにいようと常にうまくやってきたんだからね。

――ですが、今のところドイツ代表では十分に力を認められているとは言えませんね。セルビア戦やオランダ戦であなたを招集しなかったヨアヒム・レーヴの決断をどう思いましたか?

すごくがっかりしたよ。リーグ後半はいい感じでプレーできていたし、自分ではトップコンディションだと思っていたんだから。僕のパフォーマンスに対して国外での受けとめ方は違っていて、ドイツの場合よりも高く評価してくれているように思うんだ。だけど常に代表監督の決断は受け入れるつもりだし、ポジティブに考えて、今感じている落胆を力に変えられるよう努力しているよ。いつか代表監督が僕以外の選択肢はないと思ってくれるようになるまで、さらにアクセルを踏み込んでいくつもりだ。

――レーヴ監督は本人からあなたに連絡してきて、理由を説明してくれましたか?

いや、監督から連絡はなかったよ。マルクス・ゾルク(ドイツ代表アシスタントコーチ)がメールで知らせてくれただけだ。

――レーヴは守備的MFのポジションにヨシュア・キミッヒを置いていますし、トニ・クロースやレオン・ゴレツカやイルカイ・ギュンドアンもあなたとポジションを争う立場にあります。もちろんレーヴは3バックの陣形を使うことも多いですし、後ろへ下がれば、競争は激しくなさそうです。そこに、あなたが代表チームに足場を得るチャンスがあるんじゃないですか?

代表監督からどこのポジションを任されても、常にそこでベストを尽くすつもりだよ。けれど、代表チームの中盤で勝利に貢献できるようなキープレーヤーになることが、僕の目標でありチャレンジなんだ。結局僕はユヴェントスでも主に中盤で、“6番”か“8番”としてプレーしているからね。

■指揮官アッレグリの素顔

Massimiliano Allegri JuventusGetty

――アトレティコ戦ではあなたは頻繁にポジションを変えていましたが、あれはマッシミリアーノ・アッレグリ監督の作戦だったんですか?

彼は戦術マニアなんだよ。試合前には必ず僕たちをいろいろなポジションで使ってみて、いつも新しいやり方を試している。僕たちはほとんどすべての試合ごとに別のやり方で攻め込んで、別のやり方で守備につくんだ。彼にとっては、どんな小さなことも一つ残らず重要なんだよ。

――アッレグリのトレーニングはハードだと聞いていますが…

僕はユルゲン・クロップの時にも練習がハードだっていうので文句を言っていたんだ(笑)。 だけど、ユヴェントスのトレーニングは一段とハードだね。走り込みも筋力トレーニングもリヴァプールの時よりたくさんやらなければならない。初めは切り替えが大変だったけど、今はもう負担が重くなったことに慣れてしまったよ。

――アッレグリ監督はどんな人柄ですか?

すごく陽気だね。サイドラインにいる時の彼はいつも真面目だから、外から見ている人はそう思わないことが多いけど、彼はよく冗談を言うし、よく大声で笑ってるよ。正直に言うと、彼の冗談が理解できることはほとんどないんだけどね。というのも、彼はトスカナ出身で、方言がすごくわかりにくいんだよ(笑)。 いろんな言葉がもごもごした音に聞こえるんだ。

――昨年の12月にアッレグリ監督は言っていましたね。あなたはミラレム・ピアニッチのように、もっと素早く味方にボールを回すことを学ぶ必要があると。

僕のパスにはスピードが足りないことがあるのを、監督はよくわかっていたんだよ。僕は一人でも、チームと一緒の時もそのために練習しているし、よく人より長く練習場に残るようにもしているんだ。たとえすでにもうハイレベルなプレーができているとしても、いつでももっと上を目指すことはできるからね。ワールドレベルで活躍するためには、もっともっと上手くなりたいというハングリーな気持ちが必要なんだよ。

Emre Can Cristiano Ronaldo

――やはりクリスティアーノ・ロナウドの影響は大きいですか?

すごく大きいね。町でも、クラブでも、リーグでも、誰もがロナウドのことを話しているよ。もちろん、みんなはいつもワールドクラスのフットボーラーのことを話題にしているんだ。だけど、僕にとっては何よりもまず人間としての彼が重要な意味を持っているんだよ。彼はすごく感じが良くて、堅実な人柄だ。彼とはチームの誰もがうまくやっていける。ピッチの上での彼の働きは信じられないくらいだ。34歳という年齢でも、彼は常に最高の選手としてピッチに立って、1試合ごとに改めて世界に向かって自分の力を示そうとしているのがわかるんだ。

――あなたはピッチの外でも、ロナウドや他のチームメイトたちと一緒にいろんなことをやるんですか?

僕たちは毎日トレーニングで顔を合わせているし、僕たちのほとんどは家庭も持っている。だから、仕事がない時に一緒に何かをすることはそんなにないよ。だけど、時々“チームの集い”という催しがあるんだ。僕が今までにいた他のクラブにはこういうものはなかったよ。僕たちはみんなとても仲がいいんだ。ユヴェントスはファミリーのようなクラブで、誰もが互いにリスペクトと友情をもって接している。ホペイロ(用具係)から会長まで一人残らずね。僕たちのクラブでは一人ひとりが互いに対して責任を取る用意があるんだよ。

――その話を聞くと、あなたはすっかりユヴェントスに溶け込んでいるようですね。

ユヴェントスはとても居心地がいいよ。だけど、トリノという町にもイタリアという国にも同じことが言える。ここで暮らすのはすごく僕にぴったり来ると言いたいね。食べ物からしてそうだ。イタリア料理が嫌いなやつなんていないだろ? 僕にとってはトルコ料理と並んで最高の食事だね。それにイタリア人はいつも陽気だし、身なりに気を使っている。それも気に入ってるんだ。それからすごく重要なのは、ここではほとんど毎日太陽が輝いてるっていう点だ。そのせいで、雨や曇りの日が多いドイツやイングランドに比べると、ここでは格段に気持ちよく暮らせるんだよ。

――あなたがリヴァプールを去ったのはそのせいもあるんですか?

いやいや、それはないね。

■病気が与えた影響

Jürgen Klopp Emre Can LiverpoolGetty

――では古巣であるリヴァプールのクロップ監督はあなたの移籍に対してどんな反応を見せていましたか?

彼は残念がっていたよ。彼は僕を引き留めたかったんだけれど、それでも僕の決断を受け入れてくれたんだ。彼やリヴァプールに文句があったから移籍を決めたわけじゃなく、ユヴェントスで新たな挑戦をしたかったからだってこともわかってくれていたからね。僕はリヴァプールで忘れられない素晴らしい時間を過ごすことができたし、リヴァプールで僕を支えてくれたすべての人たちに対していつまでも感謝の気持ちを忘れないだろう。クロップとは今でも時々連絡を取り合っているよ。

――ユヴェントスとの契約は2022年までですね。その時あなたは29歳になっています。その後もまだユヴェントスに留まる気持ちはありますか?

幸いなことに、何年かユヴェントスに残ることも大いに考えられるね。けれどフットボールの世界では何が起こるかわからない。「今の気持ちとしては、キャリアの終わりまでここにいるつもりだ」なんてことは決して言えないんだ。必ずしも自分の思い通りになることじゃないからね。

――昨年の秋、あなたは珍しい甲状腺の病気だと診断されましたね。

秋に突然、甲状腺の手術が必要だと医師団から知らされたんだ。僕にとってはつらい時期だった。けれど、家族や友人やアドバイザーのおかげで切り抜けることができたんだ。あの時期を過ごす間に僕は前よりも強くなったよ。人生について多くを学んだからだ。普段は忘れていることもあるけれど、感謝の気持ちを持って生きることや、たとえば健康といった人生においてごく当たり前だと思われているものの価値を知ることが大切なんだ。あれ以来僕が学んだのは、フットボールは重要だけれど、人生はもっと重要だってことだ。

――あなたは自分で決めて、家族のいる故郷のフランクフルトでリハビリをやりましたね。

僕にとってはとても重要なことだったんだ。クラブは必要なだけの時間を与えてくれて、僕を支えてくれた。それでも、トリノに戻ってからはハードだったよ。僕はただ見物しているだけでは我慢できなかったし、調子を取り戻すには1カ月かかった。一人きりでたくさん、チームのみんなよりも余計に練習しなければならなかった。ありがたいことに、もう過去の話になってしまったけどね。

――あなたがチームに復帰するうえで、度重なるケガに苦しんできたサミ・ケディラはどんな役割を果たしてくれましたか?

サミは素晴らしいやつだ。最初の1日目から僕の力になってくれたよ。何かが必要な時には、彼のところへ行って尋ねればすぐに助けてもらえたんだ。

――ケディラは2月に突然、心臓に問題があると診断されましたね。それを知った時どう思いましたか?

チームの全員がショックを受けていた。さっきも言ったけど、人生にはフットボールよりも大事なことがあるってことを、僕たちは時々忘れてしまうものだからね。彼がまた元気になってよかったよ。

■「肌の色が何色でも、人間は人間だ」

Moise Kean Juventus 2018-19

――ユヴェントスではケディラのほかに、モイーズ・ケーンのことも最近さんざん話題になっています。対戦相手のファンが、肌の色が違うことでケーンを侮辱したからです。イタリアではよく人種差別的な問題が起こりますか?

イタリアだけじゃない、ドイツでも起こっていることだよ。ついこのあいだヴォルフスブルクであったセルビア戦でもそうだったようにね。世界中いたる所で同じようなことが起こっている。ただただ悲しいことだし、残念なことだと思うよ。肌の色が何色だろうと、人間は人間だ。そのことをリスペクトできないやつは馬鹿野郎だし、そういうやつはスタジアムにいる時もそうでない時も何かとケチをつけずにはいられないんだ。この問題が片付かずにいるのは残念なことだ。僕たち一人ひとりが人種差別をなくすための戦いに参加して、自分にできることをやるべきだと思っているよ。

――あなたはドイツで人種差別的な侮辱を受けたことがありますか?

いや、まだ一度もないね。

――ご両親がトルコからの移民であるあなたにとって、ドイツとの一体感はどのくらい強いものですか?

ドイツと僕はひとつのものだと非常に強く感じているよ。僕はドイツで生まれて、ドイツで育ったんだ。両親が2人ともトルコ人で、僕をトルコ風に育てて、僕の外見がドイツ人というよりいくらかトルコ人風だとしても、僕は自分をトルコ人だと感じるのと同じようにドイツ人だと感じている。僕は自分の中にドイツ人のメンタリティーとドイツ人のいろんな長所を持っている。2つの国の両方からいくらかのものを受け継いでいることを幸せだと思っているし、誇りに思っているんだ。これは素晴らしい組み合わせだよ。

――これまでにトルコ代表チームに入る可能性もあったんですか?

前に一度トルコのフットボール連盟からコンタクトがあったけど、僕の中ではずっと、ドイツのA代表選手になりたいと気持ちが決まっていたんだ。僕はドイツのすべてのアンダーチームでプレーしてきているからね。

――昨年の5月、いろいろと議論を呼んでいるトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領が、メスト・エジルやイルカイ・ギュンドアンと並んであなたのこともロンドンに招待していましたね。あなたはなぜ断ったんですか?

僕はフットボーラーであって、政治家じゃないからね。だから僕は招待を受けたくなかったんだ。

インタビュー・文=ケリー・ハウ/Kerry Hau

構成=Goal編集部

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「※」は提携サイト『 Sporting News』の記事です

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