またしてもアーセナルは満足な結果が出せず、ウナイ・エメリにプレッシャーがのしかかっている。
2日に行われたプレミアリーグ第11節、ガナーズはまたしても試合を支配することができず、下位に沈むウォルバーハンプトンにエミレーツ・スタジアムで価値ある1-1の引き分けを献上した。
混乱は止まらない。8日、エメリはファンと衝突したグラニト・ジャカが主将の座を降りることを発表。加えて「もう一度プレーするかはわからない。クラブは彼がどう考えているか、そして私の考えも知っている」と、チームメイトの信頼を集めていた27歳の将来は、アーセナルにない可能性があることを示唆した。
そして迎えた9日の第12節、絶好調のレスターを前に攻撃陣も沈黙し、0-2で完敗。これでリーグ戦では直近10試合で2勝のみ(5分3敗)。順位もついに6位まで転落した。ノースロンドンのクラブにとって、この2週間は悪夢の2週間となったのだ
トップ4との勝ち点差は、暫定ながら「8」に広がった。自身の今後についての質問を一蹴したエメリだが、ツイッターでは試合のたびに「#EmryOut」のハッシュタグが急浮上。ファン、OB、解説者、すべてがスペイン人指揮官の手腕に疑問を抱き、今後もチームを率いるに値する人物なのかと、真剣に議論が交わされるようになったのだ。
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ジャカの醜悪な一件以降、エミレーツでのフラストレーションは高まり続けている。終わりを告げるホイッスルが鳴るたびにブーイングがこだますることは当たり前になりつつあるが、これこそが不穏な空気が存在する何よりの証拠だ。
エメリ解任へのカウントダウンは始まっている。就任から18カ月、チームは一向に改善せず、クラブ上層部は48歳のスペイン人指揮官では事態を好転させられないのではないかと思いはじめているに違いない。
暴れまわるファンなど誰も見たくない。ここ数年マンチェスター・ユナイテッドがそうだったように、監督の更迭や交代が必ずしもうまくいくとは限らない。だが、時には難しい決断を下す必要もある。
では、今すぐアーセナルが監督交代を真剣に考えなければならない7つの理由を挙げてみよう。
取材・文=チャールズ・ワッツ/『Goal』アーセナル番記者
■残念な結果
Getty Images何よりもまず、フットボールはどんなレベルでプレーするにせよ、結果を出さなければならないビジネスである。今のアーセナルにはそれがまったく出来ていない。
プレミアリーグ直近の10試合で、アーセナルは2試合しか勝っていない。この間、カラバオ・カップも敗退した。この状態が昨シーズン最後の数カ月から始まっていることも忘れてはならない。エメリ率いるアーセナルは、チャンピオンズリーグ復帰をかけた試合に敗れ、チャンスを棒に振ったのだ。
この夏、チーム力を戻すために費やした金額を考えるまでもなく、アーセナルは結果が出せていない。さらに、その投資額を考慮すれば、ヨーロッパ最大の大会に出場することに全ビジネスモデルの基礎を置いているクラブにとって、現状は受け入れがたいものである。
今この早い段階で指揮官交代を敢行すれば、新監督に立て直しための時間を多く与えることができるだろう。今のエメリからは、緊急の改革が必要だという危機感が感じ取れない。直ちに指揮官を変更すれば、すでにタレント揃いのスカッドをもっと活かすために、チームを構築する時間をたっぷり与えることができるだろう。1月の移籍市場までに準備する時間も充分にある。
■ぶざまなパフォーマンス
Getty Images今まさにアーセナルの事態を悪化させているのは、結果が出ないだけでなく、ピッチ上でのパフォーマンスが悪すぎることだ。
リーグ戦最後の勝利となった第8節のボーンマス戦(1-0)も、9分の先制弾以降、前半相手を攻め続けながら追加点は奪えず。後半には猛攻を許し、追いつかれても不思議ではなかった。引き分けたクリスタル・パレス戦(2-2)やウルブズ戦(1-1)ではリードを保てず、敗戦ギリギリまで追い詰められている。
さらに2日のウルブズ戦では25本ものシュートを許したのに対し、アーセナルが記録したのは半分以下の10本。第5節のワトフォード戦に至っては、31本と驚くべきシュート本数を記録したのだ。
今のチームにはスピードがない。前監督アーセン・ヴェンゲル指揮の下、世界中から憧れられたアーセナルからは100万マイルも離れてしまった。
エメリの下ではカウンターアタックを主体とするようなチームになってしまったが、それすらも満足にできていない。のろのろとして想像性がなく、後ろ向きなプレーばかりだ。
■戦術およびメンバー選出の混乱
就任から18カ月、エメリ・アーセナルは未だにアイデンティティを確立していない。プレーする選手やフォーメーションが毎週変わるのだ。
試合にあたってどんなプランで戦うのか、試合を重ねるごとにわからなくなる。例えばウルブズ戦では、意味もなくメスト・エジルをトップ下におき、マッテオ・グエンドウジ、ルーカス・トレイラ、ダニ・セバージョスを配置した中盤ダイヤモンドの一角でプレーさせた。
ウルブズは終始守りを固め、ラインをコンパクトにしてカウンターアタックを狙っていた。エメリのフォーメーションは敵の思うつぼだったのだ。攻撃に幅がなく、アーセナルは敵を苦しめることがまったくできなかった。自陣深い位置に流れたエジルにボールが渡っても、何の成果も出せなかった。アーセナルを簡単に守り勝てるチームにしてしまったのだ。
昨シーズンのエメリは4バックと3バックを使い分けていた。今シーズンは4バックを敷いているが、ディフェンスの前に配置する選手を絶えず変えている。
時にはミッドフィルダーが3人のときもあり、ジャカが何の仕事もさせてもらえない時がある。そうかと思えばジャカをダイヤモンドの一角に置くこともある。今いる選手たちの配置としてベストなのは4-2-3-1だと思われるが、エメリがそのフォーメーションを取ることは滅多にない。
特筆すべきは、トレイラの扱い方だ。昨シーズン何としてでも手に入れたがっていた守備的ミッドフィルダーをようやく手に入れたというのに、今の彼はより高い位置で起用されている。
そして極めつけは、エジルだ。何カ月もアーセナルにおいてクリエイティブな能力を持つ最高の選手を邪険に扱い、チームから奪った。彼の大きな穴を埋めることのできる選手は存在しないというのに……。
■進歩しないディフェンス
Gettyエメリ就任によって期待されたメインテーマは、ディフェンスの改善だった。だが、期待外れもいいとこだ。昨シーズンのリーグ戦で、アーセナルは51失点を記録した。ヴェンゲル最終年の失点数とまったく同じで、今シーズンはすでに17失点。得失点差に至っては「-1」だ。
今季のクリーンシートはたった2つ。さらにリーグ戦アウェイゲーム直近24試合でもたったの2回のみだ。これは悲惨な記録であり、エメリにレッドカードを提示するに十分な理由になる。トレーニンググラウンドでこの問題の解決策を見いだすことができないでいるようだ。
■オーバメヤンとラカゼットをめぐる懸念
Getty Imagesクラブは何度もピエール=エメリク・オーバメヤンとアレクサンドル・ラカゼットに契約更新を持ちかけているが、これまでのところ交渉は成功していない。2人はチャンピオンズリーグ(CL)でプレーすることを熱望しており、今のところ選択肢を手放す気がないのは当然のことだ。
現在、アーセナルはトップ4と暫定ながら8ポイント差をつけられており(マンチェスター・シティの結果次第でさらに広がる)、これまでの内容を見れば、エメリとともにCL出場圏内まで上がってくる希望は薄い。
オーバメヤンのスタッツを見れば、彼がアーセナルにとっていかに重要な選手かがわかる。ウルブズ戦では、2018年にアーセナルに加入して以来50ゴール目となる得点を記録した。ここまでたった78試合しかかかっていない。クラブ史上7位となる記録で、半世紀ぶりのことだ。
直近19試合のリーグ戦で、オーバメヤンは13ゴールをあげている。この間2位の選手はたった2ゴールであり、今季挙げた勝ち点17は、ほとんど彼のゴールによるものなのだ。
偉大な背番号14を背負う彼は、楽にチームを浮上させる唯一の存在だ。もし今季もCL権を失うのであれば、世界屈指のストライカーが去っていくことが現実となる。現在の契約を維持する期限は1年しかない。
同じことがラカゼットにも言える。彼がほぼ2カ月の不在から復帰したばかりであることは覚えておく必要があり、そうでなければ得点王争いでオーバメヤンを上回っていたかもしれない選手だ。
ラカゼットは夏の時点で契約が2年残っているが、昨シーズンにその才能を見せつけており、今後もヨーロッパ中のトップクラブの注目をひきつけることだろう。現にバルセロナなど、具体的な名前も聞こえ始めている。
今シーズンはトップ4フィニッシュが絶対条件だが、エメリにはそれを達成する力があるとは思えない。ヨーロッパリーグ経由(優勝)のCL出場権獲得の可能性もあるにはあるが、この内容を見て、優勝できると思える人間はごくわずかだろう。
■コミュニケーション問題とファンとの信頼関係構築の失敗
Gettyスペイン出身のエメリを英語が苦手だと批判するのはアンフェアな気もするが、それがアーセナルの抱える問題の1つであることは事実だ。
フランスからイギリスへ到着して以降、本人は早急に英語を習得しようと懸命に努力しており、一週間ずっと、トレーニンググラウンドにいるときはどこに行くにも英語教師が一緒だ。
しかし、努力を続け、改善はしているものの、選手たちは、彼の言葉を理解するのは難しいと思っている。この事実を公に認めている選手もおり、ブカヨ・サカでさえ、エメリが要求することを完全に理解するためにフレドリック・ユングベリ(アシスタントコーチ)に聞くことがあると言っている。
つまり、ピッチ上で選手たちが混乱に陥り、規律なくバラバラにプレーするのは無理もないことなのだ。
コミュニケーション問題は選手たちに限らず、ファンにも広がっている。エメリの記者会見やインタビューはうまくいっているとは言い難く、英語が不得手なせいでサポーター、そしてメディアとの関係構築にも苦労している。
■満足するエメリ
最も大きな“罪”はこれだろう。
ウルブズ戦で引き分け、アーセナルがホームで25失点目を記録したあと、エメリは試合が戦術的にプラン通りだったと言い放った。
「今日は、戦術的にさまざまな状況で我々はうまくやっていた。結果は出なかったが、我々は戦術的にやりたいようにやれたと思う」
アーセナルのプレーがお粗末で、ウルブズが次々にチャンスを作るのをやすやすと許していることについてのコメントが、これなのだ。
アーセナルは何週間もこうしたネガティブな状態でプレーしており、エメリが本当に目の前の事態に満足しているとするのなら、監督という地位にいるべき人物でないことは明らかだ。
今のアーセナルのプレーは、オーバメヤンやラカゼット、エジルといった才能あるフォワードのいるチームが毎週披露すべきプレーではない。現代サッカーが通常生みだすよりも多くの得点をあげる能力があるチームなのだ。
すでにリヴァプールやマンチェスター・シティが別の次元へ到達してしまい、補強禁止処分を受けながらもレジェンドの下で新時代を予感させるチェルシーにも離され、挙句レスターには内容面でも完敗。もうアーセナルには時間がない。これからインターナショナル・ウィークが始まるが、“その時”は今なのかもしれない。
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「※」は提携サイト『 Sporting News 』の提供記事です



