もはや「優勝候補」ではない…26年ぶり悲願を狙うアルゼンチンの現在地

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■無冠

世界最古の大陸選手権、コパ・アメリカ。1916年にアルゼンチンが自国の独立100周年を記念して開催した大会が前身となるこのトーナメントは、103年という長い歴史を経てサッカーにおける南米諸国間のライバル意識を高めてきた。優勝回数だけを見れば、最多のウルグアイ（15回）、アルゼンチン（14回）、ブラジル（8回）といわゆる「3強」が文字通りの結果を残しているものの、実際にはどの大会でも決勝までの道は険しく厳しい。その明らかな証拠となるのが、93年大会以来、アルゼンチン代表がワールドカップも含めて長年にわたって無冠の苦汁を飲まされ続けているという事実である。

ご存知のとおり、アルゼンチンはスター選手の宝庫だ。86年にディエゴ・マラドーナがW杯のトロフィーを掲げてからも、ガブリエル・バティストゥータ、エルナン・クレスポ、パブロ・アイマール、フアン・ロマン・リケルメ、ハビエル・サビオラといった名選手たちが欧州のサッカーシーンで旋風を巻き起こしながら代表チームでも活躍し、やがてリオネル・メッシという天才が誕生。また、才能溢れる若手が次々と輩出される恵まれた土壌と優れた指導陣により、U-20代表は95年から07年までの間に5度世界チャンピオンに輝き、メッシやセルヒオ・アグエロ、アンヘル・ディ・マリアなどを擁したU-23代表は08年の北京五輪で金メダルを獲得している。

にもかかわらず、A代表が26年もの間タイトルを取れない状態にあることは、人一倍自信家でプライドの高いアルゼンチンの人々にとって耐え難い試練となっている。特に2014年W杯、2015年コパ・アメリカ、2016年コパ・アメリカ・センテナリオと3年連続して決勝まで進出しながら優勝を逃したショックは大きく、国民の多くは今回のコパ・アメリカがその雪辱を期す機会になることを願っている。

■再建

だが今のアルゼンチン代表は「優勝候補」とは呼べない。メッシ自身も「我々は世代交代の真っ只中にあり、優勝候補ではない」と言い切っているとおり、本格的な再建が始まったばかりなのだ。

昨年のロシアW杯後、AFA（アルゼンチンサッカー協会）は、退任したホルヘ・サンパオリ前監督の後任を見つけることができず、臨時の措置としてサンパオリのアシスタントを務めていたリオネル・エスカローニをA代表の暫定監督に任命。だがその後、新監督候補の何人かと交渉するも様々な理由から悉く断られ、そのままトップチームの指導経験が全くないエスカローニに監督を任せる流れとなった。

応急措置としてアルゼンチン代表の再建を任されたエスカローニは、これまでの親善試合でパウロ・ディバラやマウロ・イカルディ、ラウタロ・マルティネスにレアンドロ・パレデスといった若手を積極的に起用しながら4-3-3から5-2-3、3-4-3に至るまで様々なフォーメーションをテストした。

当初はその大胆な試みが肯定的な目で見られ、メッシが復帰するまでに新メンバーの組織力を高めるという意図を明確に示す監督の評価もまずまずだったが、メッシにとって8カ月ぶりの代表復帰戦となった3月のベネズエラとの親善試合でチームが全く機能せず、1-3の敗戦を喫するなり一斉に非難を浴びることに。6月7日に行われたニカラグアとの壮行試合では、メッシの2ゴールを含む5得点を叩き出して5-1と快勝を遂げたものの、コパ・アメリカでは古くからのライバル意識をむき出しにした対戦相手たちが待っている。

■“絶対”

アルゼンチンが初戦で対戦するコロンビアは、ホセ・ペケルマン前監督によって世界の強豪と互角に戦える自信を与えられたメンバーを揃え、カルロス・ケイロス新監督が中盤に一層厚みをつけたダイナミックなサッカーを展開させる魅力的なチーム。仕上がり度ではアルゼンチンを上回っており、非常に手強い相手だ。

だが、リハーサル不足とはいえ、新しい顔ぶれによって構成されたチームに、約1年ぶりに復活するメッシ、アグエロ、ディ・マリアの前線トリオがドッキングした形となるエスカローニ監督のアルゼンチンは非常に魅力的である。先日国内のサッカー番組に出演したメッシが「ロシアW杯では初戦で勝っていれば状況も（良い方に）変わっていただろう」と話していたように、今大会もコロンビアに勝つことができれば新旧メンバー間の信頼感も深まり、勢いに乗ることができそうだ。

タイトル獲得は容易なことではないが、サッカーの世界に“絶対”は存在しない。メディア関係者の中には「優勝候補ではないからこそ、メッシがプレッシャーから解放されて大会を存分に楽しみ、そこから結果が自然に伴ってくるかもしれない」という見方もある。謙虚な姿勢で挑むアルゼンチンが、最終的に26年越しの悲願を叶えることができるかどうかに注目したい。

文＝藤阪ガルシア千鶴（Fujisaka de Garcia, Chizuru）

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