ライアン・ブリュースターの心に今でも深く刻まれているのは、痛みではなく、あの“音”だ。
リヴァプールのストライカーが最も残酷な形で歩みを止めてから、もう14カ月になる。マンチェスター・シティとのU-23の試合で起こった至って普通の空中戦。しかしこのティーンエージャーは着地に失敗。それ以降、彼の世界は暗転してしまった。
ブリュースターは『Goal』の取材に顔をしかめながら、当時のことを語った。「正直に言うと、脚を見たくなかった。事態が良くないとわかっていたからね。音が聞こえたんだ。何かが“いってしまう”音が。すぐに僕は足首が折れたと思ったんだ」
結局骨折ではなかったが、診断結果は決して幸運なものではなかった。彼の足首と膝の靭帯は落下時に強い損傷を受けていた。各部を、それぞれ1カ月置いて整復手術する必要があった。
最初の診断では全治4~5カ月程度で、8月末には復帰可能だろうと見込まれていた。しかし、実際はそれよりずっと長かった。ブリュースターの回復期間は非常に長く、辛いものだった。つい最近ようやく練習に復帰することができたが、それまで彼は何カ月もジムやプールでのリハビリ、脚の強化に時間を費やしてきたのだ。
術後の状態についてこう語る。「ふくらはぎが全部なくなってしまっていたよ。今は筋肉が戻ってきているけれど、脚を2回も手術したら筋肉は完全になくなってしまった。何もしようがなかった」
ブリュースターはリハビリ中、サッカーをやめてしまおうと思ったことが幾度かあったという。彼は前向きなキャラクターで、そうあるように求められてきた。実際、メルウッドでの長く、同じことの繰り返しのような日々は誰にとっても十分な試練だろう。トップチームでの出場経験のない18歳の少年にとってはなおさらだ。「自分自身についてよく分かるよ。精神的にタフじゃないといけないってね」
「大きい手術だったから、ハードワークをこなさないといけないとわかっていた。実際本当にキツかったよ。何時間もかけてジムで強化のための運動をして、ようやく走れるようになったんだ。ピッチに立って先発することなんか考えることもできなかったよ」
しかし、今はピッチに戻ることを考えている。最近練習に復帰して、彼はシーズン終了までに開催されるU-23の試合に目を向けている。
彼は目を輝かせながら語る。「あー、違う! 点が取りたいんだ! ずっとそのことを考えてきたんだ!」
長きに渡って、同じ目標を持ち続けてきた。ブリュースターはもはやシャイな子供ではないし、それを彼のこれまでの短いキャリアの中でも示してきた。必要なことは自分でわかっている。
「僕はプレミアリーグの選手になりたいんだ。リヴァプールの選手にも、イングランド代表にもなりたいんだ」彼はこう語って、背筋を伸ばす。「この野心はもちろんまだ自分の中で燃えたぎっているよ。その思いは今もっと強くなっているんだ!」
■リハビリを支えたチームやクロップの計らい
Lyle and Scottブリュースターは昨夏、マージーサイドを離れることもできた。彼が望めばジェイドン・サンチョを追ってドイツに行くこともできたかもしれない。ライプツィヒとボルシア・メンヘングラードバッハが彼にオファーを出しており、それは魅力的なものであった。しかし、リヴァプールもそれは同様だった。手負いの新生をチームに留め置きたいというレッズの決意は断固たるものだった。クラブは彼をアンフィールドのピッチに立たせたいと考えている。
「僕にとってそれは大きなことだった。何カ月も離脱していたのに、チームは僕を必要としてくれた。選手として重要なことだよ」
「クラブはたくさんのことをしてくれた。落ち込んだ時は、頭を冷やすためにロンドンへ戻るよう提案してくれたし、また続けられるように迎えにきてくれたりもした。絶対に忘れないよ」
ユルゲン・クロップも彼の味方だった。レッズの指揮官は毎週試合前会見で選手たちのケガの具合を聞かれるたびに、ブリュースターのことについても他のトップチームの選手と同様に言及するようにしていた。
ブリュースターはそれに気が付かないわけがない。彼は微笑みながら語る。
「僕に信頼を置いてくれているということだよね。戻ったときは、その信頼に応えようと思ったんだ。彼は僕のことなんか簡単に忘れられるし、アカデミーに送ってリハビリでも何でもやらせることもできたけれど、そうしなかった。監督は僕をメルウッドに置いてくれたし、チームにいさせてくれた。その事に関していくら感謝しても足りないくらいだよ」
■同世代の若手の成長は良いモチベーション

失った時間を取り戻したい、それは当然だろう。ユースの仲間や対戦相手がスターダムを駆け上がっている間、彼はそれをただ見ていることしかできなかったのだから。
例えばサンチョは、今やイングランドのフル代表だ。共にU-17W杯を制したカラム・ハドソン=オドイは、チェルシーで活躍を見せ、バイエルンらビッグクラブが関心を寄せるほどに成長。フィル・フォーデン、リース・ネルソン、ライアン・セセニョン、エミール・スミス=ロウ、モーガン・ギブス=ホワイト……同世代の彼らは皆成長著しい。
リヴァプールにおいても、カーティス・ジョーンズ、ラファエル・カマーチョやキ=ヤナ・フーフェルのような若手がトップチームで経験を積むのを、ブリュースターは目の当たりにした。彼は、次は自分の番だと思っている。
「彼らが成功しているのを見て、僕も同じようにできるんだと思ったよ。良いモチベーションだった。自分の力を見せることができるのが待ち遠しいよ」
「僕は本当に野心的なプレイヤーだし、彼らみたいなトッププレイヤーになりたいと思っているよ。彼らと戦いたいし、彼らから学んでいきたいんだ」
「練習はタフで、挑戦のしがいがあるものになるはずだ。それが成長の手段だからね。あのレベルに行きたかったら、僕は『ああ、あいつはまだトップレベルの選手じゃないな』って言われないようにしないと。彼らと一緒にトップレベルに登っていきたいね」
さて、筆を置くのによい頃合いだろう。2018年は最高級の才能を持つティーンエージャーにとって悲劇的な年だったが、時は彼の味方をし始めた。
苦しみ抜いた1年だったが、それでも彼は『Goal』が選定する19歳以下の最高の若手選手を選出する『NxGn2019』において、31位にランクインした。悲劇を乗り越えて戻ってきたライアン・ブリュースター。来季こそ、彼の年になってもおかしくはない。
取材・文=ニール・ジョーンズ/Neil Jones
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