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なぜ、横浜FMは優勝できたのか?トリコロールの進化を実現させた3つの理由

 横浜F・マリノスは7日の明治安田生命J1リーグ最終節、FC東京との優勝決戦を3-0で制し、15年ぶりのリーグタイトルを獲得。11試合無敗の勢いを持続したまま、ついに優勝シャーレを高らかと掲げた。今季は安定した戦いぶりを発揮した横浜FMだが、昨季は残留争いに巻き込まれていた。この1年で何が変わり、頂点に上り詰めることができたのか。そこにはメンタル面での進歩と攻撃面での着実な進化があった。【文=藤井雅彦】

■失敗を繰り返さない力

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 優勝をかけた大一番のFC東京戦で、誤算が生じたのは後半22分だった。

 ペナルティエリア外のボールを処理しようとゴールマウスを飛び出したGK朴一圭の足が永井謙佑に触れ、このプレーが得点機会阻止とみなされてレッドカードが提示される。横浜F・マリノスは残りの30分弱を10人で戦う展開を余儀なくされた。

 動揺しても不思議ではない状況だが、選手たちは一切慌てる素振りを見せなかった。もともと4点差の敗戦以外は優勝という圧倒的有利なシチュエーションに加えて、退場時点で2-0とリードしていたことも大きかったのだろう。

 だが、それだけが理由ではない。

 「ひとり少なくなくなる状況は今シーズン何度かあった。失敗した経験もあるし、それを踏まえて改善できた経験もある。すべての経験がこの最終戦で生きた」

 ディフェンスリーダーとして全34試合にフルタイム出場した畠中槙之輔の言葉だ。コメントにある“失敗”とは、第15節・清水エスパルス戦を指している。

 その試合は2-1とリードした終盤の後半37分、マルコス・ジュニオールがこの日2枚目の警告を受けて退場処分に。いつも通り攻め続けるのか、リードしている展開を守り切るのか。選手間に若干ながら意識のズレが生じ、まさかの逆転負けを喫した。

 試合後のロッカールームで、畠中は不必要な行動で2枚目の警告を受けたM・ジュニオールに対し、普段とは異なる声色で猛省を促した。これがチームとしての方向性を一本化するきっかけとなる。

 第20節・ヴィッセル神戸戦の後半14分にチアゴ・マルチンスが退場した際は、清水戦の反省を生かしてチームとしての意思統一に重きを置いた。1点リードというシチュエーションを踏まえ、しっかりとした守備からカウンターで追加点を狙うゲームプランを選択。狙い通りの展開から仲川輝人がPKを獲得し、これをM・ジュニオールが決めて2-0の勝利を手にした。

 かつての失敗は経験に変わり、チャンピオンチームの血肉となった。プレッシャーがかかるFC東京との決戦でも、選手たちの表情は慌てることなく涼しげに映ったのは気のせいではないだろう。

■攻撃面で見えた他のチームにない特徴

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 オフェンス面での進化も見逃せない。

 今シーズンの横浜FMといえば『ハイライン・ハイプレス』や『圧倒的なポゼッション力』といったフレーズが注目されがちだが、勝利という結果を得るという意味で得点パターンの確立には大きな意味があった。

 その最たる例として『ゴール前を見ないで上げるクロス』が挙がる。文字だけではイメージしづらいかもしれないが、これを丹念に繰り返して多くの得点が生まれた。

 直近では、第33節・川崎フロンターレ戦の3点目がこのシーンにあたる。大津祐樹からのパスを受けた仲川は、一度もゴール前を見ることなく鋭いグラウンダークロスを供給。ニアサイドに走り込んだエリキがワンタッチでゴールネットを揺らした。

 「チームとして繰り返してきた形。約束事があるので、誰がどこにいるかは見なくてもわかる」と自信をのぞかせたのは15得点・9アシストの仲川。センターFWがニアサイドに走り込み、反対サイドのウイングがファーサイドに詰める。シンプルでもなかなか止められない“型”である。

 両サイドバックがインサイド寄りにポジションを取ることで生まれたゴールも横浜FMならでは。FC東京戦でのティーラトンの得点は通常のチームのポジショニングではありえないだろう。川崎フロンターレ戦では、右SB松原がまるでトップ下のような位置に進出し、見事なスルーパスから得点を演出している。他のチームにない特徴だからこそ、対応策を練りにくいというメリットもあった。

 加えて、終盤は夏に獲得したエリキ&マテウスのスプリント能力を生かしたショートカウンターも大きな武器に。絶対的な得点源に頼らずとも、チームとして複数の得点パターンを持つことで、多くの選手がゴールという歓喜の瞬間に関わった。

■ポステコグルー体制1年目の苦労

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 そして残留争いに巻き込まれたポステコグルー体制1年目の苦労は、チームの土台をつくるという点で大きな意味があった。もちろん結果論でしかないのだが、昨シーズン12位という不甲斐ない結果が選手たちの反骨心をさらに刺激したのだとしたら、やはり意味がある過程と考えるべきなのだろう。

 そこに前述した二つの要素を重ねたことが直接的な優勝勝因として挙げられよう。不測の事態にも慌てないメンタルタフネスを築き、チーム全員の共通理解による得点パターンを手にする。この繰り返しが結果となり、終盤戦を10勝1分で駆け抜けた選手たちは、まるで自信という名の鎧をまとっているかのようだった。

 とはいえ、FC東京戦の先発11人の平均年齢は26歳そこそこと若い。外国籍選手を含めて伸び盛りな20代半ばの選手が主力の大半を占め、彼らには伸びしろという魅力が備わっている。

 来季はACLという舞台も待っている。心身ともにタフさを要求されるアジアの戦いは簡単ではないが、限界点の見えないチームだからこそ期待値が膨らむ。

 優勝という大目標を達成してもなお、トリコロールは進化を続ける。15年ぶりとなる名門の戴冠は、新たな歴史の1ページに過ぎない。

文=藤井雅彦

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「※」は提携サイト『 Sporting News 』の提供記事です

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