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その精度は99%。JリーグがVARを導入するための3つの課題とは?

サッカーの判定精度を高める手段として期待されるVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)。11日、Jリーグはサッカーの競技規則を制定する国際サッカー評議会(IFAB)のテクニカルダイレクターであるデービッド・エラリー氏を招き、VARに関するメディア説明会を行った。VARの実際、Jでは導入に向けどう動いているのか。そして実現に向けての課題とは?

■VARはフットボールをクリーンにした

「最初に試合で試行したのは2016年8月。それから2年も経たないうちにフットボールで最も重要な大会でVARは利用された」

プレミアリーグで長年レフェリーとして活躍し、2009年より現職を務めるIFABのデービッド・エラリーテクニカルダイレクターはこう語る。昨夏のロシア・ワールドカップ、そして年初のアジアカップでのVAR判定が記憶に残っている人も多いだろう。

欧州5大リーグでは、17-18シーズンからセリエAとブンデスリーガ、18-19シーズンからリーガ・エスパニョーラとリーグ・アンが導入済みで、19-20シーズンからはプレミアリーグでもスタートする。また、UEFA管轄の欧州チャンピオンズリーグは去る2月のCL決勝トーナメント1回戦より導入した。

ここであらためてVARを簡単に説明する。

適用されるのは(1)得点(2)PK(3)レッドカード(4)間違った選手に警告や退場を出した場合の4つのみ。試合の映像をチェックするビデオ担当副審(VAR=ビデオ・アシスタント・レフェリー)がこれら反則があったと判断した場合、無線を使って主審へレビュー(映像確認)を勧める、あるいは「重大な出来事が起きてしまった」と主審が不安に思った際に、映像を最終確認して主審が判定を下す。

エラリー氏は「VARを使った重要な判定の正確性は99%」と説明。「最小限の介入で最大限の成果を得ること」と強調し、その効果は「単純にミスを減らすだけではない。イタリアでVARが導入されたシーズン、シミュレーションが40%、抗議は12%、審判に対する暴言は11%減少した。ファウルの数も減り、インプレーの時間が増えた。VARはフットボールをクリーンにしたと言える」とする。

■VAR、オペレーションの実際

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今回の説明会では、実機を使ったデモンストレーションも行われた。

スタッフは3人で、中央にVAR、左にアシスタントVAR(AVAR)、右にリプレーオペレーター(RO)が着席する。VARとAVARはレフェリーかレフェリー経験者のみ。ROはVARの要求に従い、必要な場面を再現するなど映像に関するプロ技術が必要だ。

モニターは上下2段式となっており、上にライブ映像、下部は3秒遅れの映像が流され、試合を注視する。「日本人のVARが作業をするときは英語を使っているが、各国どこでもコミュニケーションが取れるように英語を用いている」とエラリー氏。この日のデモではVARをJFAトップレフェリーグループ扇谷健司マネージャーが、AVARを同・宮島一代マネージャーが務めた。

Jリーグでは昨季、明治安田生命J1リーグでの3回のオフラインテスト(通信を行わないテスト/判定に影響なし)、Jユースカップ決勝、Jリーグインターナショナルユースカップなど4試合でのオンラインテスト(通信を行うテスト/判定に影響あり)を実施した。

また今季は、JリーグYBCルヴァンカップ プライムステージ全13試合(準々決勝、準決勝、決勝)、J1参入プレーオフ1試合(決定戦)の計14試合での導入が決定している。

となると、当然リーグ戦での継続的な導入はいつになるのか、という疑問がわく。

■VAR導入のハードル

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この件に関し、Jリーグ黒田卓志フットボール本部本部長は説明する。

「将来的なリーグ戦の導入は検討しています。だたし、『お金』『審判員の養成』『VARへの理解(選手、指導者、メディア、ファン・サポーター)』という3つの壁を越えなければいけません」

例えば「お金」に関して。「テクノロジープロバイダーによって違います。W杯のようにセントラルでやるのか、バンを走らせてスタジアムでやるのか。具体的な金額はピンきりなので申し上げられない」。こう前置きしたうえで「VARがゲームのクオリティーを高めていくことには共感しており、間違いなく検討している。限られた財源の中、どれぐらいJリーグが投資していくか、覚悟の部分だと思います」と続けた。

今回デモンストレーションを担当したVAR扇谷氏は元国際主審、SVARの宮代氏は元国際副審、ともに1級審判員としての十分な実績がある。VARを担当するにはまず「トップレフェリーでないといけない。世界でVARをやっている方々の90%はトップレベルの主審をやっている」と黒田本部長は説明する。VARでプラス2名の審判員が必要なことになり、導入にあたって「審判員の養成」も喫緊の課題だ。

日本サッカー協会小川佳実審判委員長も言う。「VARは世界でも当たり前になってきている。審判員を教育するところで、まずは14試合で実施し良いパフォーマンスを出して、次につなげていきたい」。

日本へのアドバイスは? と問われたエラリー氏はこう答えた。

「日本は思慮深く分別のある国。ゆっくりしたプロセスを歩んでいる」。中には十分な準備のないまま導入する国もあると言う。自身の3年前を振り返り、「メディアや観客に向けての発信ができておらず、コミュニケーション不足の面があった」と反省も口にした。

まずは今季14試合で実施されるVAR。今回の説明会でリーグ戦への導入時期の明示はなかったが、このような告知活動を継続的に行っていくことも、VARへの理解、推進のために必要なことに違いない。

取材・文=Goal編集部

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「※」は提携サイト『 Sporting News』の記事です

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