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相思相愛の関係の中で…チェンバレンは新天地リヴァプールで「自信」を取り戻せるか

子どもの頃のアレックス・オックスレイド=チェンバレンは小柄だった。それゆえに、相手のチャージでボールを失いがちであり、練習でも年下のグループに入れられてしまっていたそうだ。父親のマークが息子のテクニックを信じて疑わないことにも、チェンバレン本人は懐疑的になることがあったという。

「父は、僕が大きくなったら他の子たちに追いつけると信じていた。子どもの頃、僕よりうまいと見られていた少年たちより、僕のほうが上に行けると確信していたんだ」

「僕にはとてもそうは思えなかったよ。体をぶつけられるとボールを奪われてしまって、年下のグループに入れられていたからね。苦しくて、父のいうことを疑ってさえいた。でも、僕はその苦境を乗りこえられたよ。父は正しかったね」

以下に続く
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そして2年前の9月、アーセナルでチェンバレンを指導していたアーセン・ヴェンゲルは、父親と話した後、「自信を失うことのないような、正しい心のバランス」を見いだすよう諭した。

「私はアレックスの練習を毎日みていた。とても熱心で、集中していて、ハングリー精神があった。だが、父親は、アレックスはもっと自信を持つべきだと言っていた。私は、アレックスが自分に厳しすぎて、自信が持てないのだろうと思った」

そして、さらにヴェンゲル監督はこうも語っている。

「それは悪いことではなく、トップレベルの選手になる素質の一つなのだが、上手くいかないからといって自信を失うことのないような、正しい心のバランスを見いださなければならない」

■新しい環境での挑戦

エミレーツ・スタジアムからアンフィールドへ。さらなる成長のために「もっとも難しい決断」を下したチェンバレンは、今度の火曜の夜、リーグカップのレスター・シティ戦でリヴァプールの選手として初めてスタメンを飾ることになるだろう。選手のプレーや信頼を高めるべく、ユルゲン・クロップ監督はその仕事に心躍らせている。

ドイツ人監督は、チェンバレンの「自信」の有無についてまだ何もコメントしていない。アーセナルOBであるティエリ・アンリ氏に、「早く何が得意か言えるようになって欲しい」と酷評されていた24歳のイングランド代表MFにとって、今回のサッカー人生の再スタートはさらに上のステージへ行くための絶好の機会だ。クロップ監督はチェンバレンが正しい選択を下したと信じている。

「新しいスタートが心境の変化をもたらすことは多々ある。アレックスだけに当てはまることではない。一般論として言うが、クラブで特別な位置にいることに慣れてしまった場合、そこにいたまま新しいステップに移るということは、難しいだろう。そういうものなんだよ。だから私は、アレックスがクラブを変えたのは素晴らしいことだと思った。特に私のチームに来てくれたのだからね」

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「これまでのところ、自信を失っているようには見えないね。完璧にチームに溶けこんだよ。イングランドの選手や、他の選手たちともなじんでいる。本当にナイスガイだから、チームに溶けこむのは簡単だろう。ありのままの状況を受け入れている」

「オックスは、アーセナルで若くしてあらゆる試合でプレーしてきたという自負がある。今ここでベンチに座って、『あの決断はベストではなかった』と思っているかもしれない。だが、物事は長い目で見なければならないよ。いつでも彼を使うことはできるし、それも間違いではない。ただ、彼には万全の準備をして欲しいとも思っている。それだけだ。何の問題もない」

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移籍期限ぎりぎりに3500万ポンドでマージ―サイドにやってきたチェンバレンは、まだ60分ほどしか試合に出ていない。マンチェスター・シティに0-5と大敗した試合に途中出場したのと、チャンピオンズリーグ・セビージャ戦と18日のバーンリー戦の最後数分間に出ただけである。

彼が経験した最後の勝利は、アーセナルの選手として迎えたレスターとの開幕戦まで遡る。苦しかった未勝利の1週間を経て、チェンバレンはリーグカップで再びレスターを打ち負かし、新しいクラブの中心選手となりたいと意気込んでいるだろう。クロップは勝利こそもたらせていないが、チェンバレンはリヴァプールの選手として十分なプレーをそしていると話す。

「前の試合、彼はリヴァプールの選手らしくプレーしたと思うよ。インテンシティを持って集中し、ピッチ上を駆け回った」

さらに、「ゴールは決められなかったが、多くのことを見れたよ。おそらく観ていた人は、“典型的なリヴァプールの選手”だというだろう。最高のプレーをしながら、ゴールは奪えないとね」と冗談を飛ばしつつ、「彼がここに来てくれて、本当に嬉しく思っている。彼にもここに来てよかったと思ってもらいたい」と指揮できる喜びを語った。

Jurgen Klopp Oxlade-ChamberlainGetty

■相思相愛の関係の中で

レッズの指揮官は、ボルシア・ドルトムントを指揮していた2014年9月、初めてチェンバレンのプレーを生で見ている。チャンピオンズリーグ・グループリーグのアーセナル戦で、交代出場したチェンバレンの「リズム、技術、態度」に魅せられたドイツ人指揮官は、今夏の契約に関して「悩むことは何もなかった」という。

チェンバレンが自身の指導の下でさらなる成長を遂げると思うのはなぜかと問われたクロップ監督は、確信を持ってこう答えた。

「我々のプレースタイルがアーセナルとは違うからだ。どちらが良いとか悪いとかではない。違うということが重要なのだ。異なるフットボールに接するだけでも、成長できる。これまでとは違う瞬間に身を置いてどう反応するかが成長のカギとなる。いつも同じことをしていてはダメなんだ」

GFX Klopp quote Oxlade-ChamberlainGoal

「アレックスがいたからこそ、アーセナルは大きく変わった。3バックで普段プレーしていなかったし、ウィングバックを置いてはいなかったはずだ。私がアーセナルと対戦した時、アレックスは中盤の真ん中やウィング、そしてウィングバックと、いつも違うポジションにいた。そしてどこにいても最高のプレーをしていた。プレミアリーグで複数ポジションでプレーできるということは、素晴らしいことだ。成長していないなんていうのは、外野の判断だ。様々なポジションでプレーすることは成長につながる」

「アレックスが18歳か19歳ぐらいだった頃、彼は『男』になれると評判だった。長期間必要なことを、あっという間にできると考える人が多すぎる。私に言わせれば、そういう人たちは、すぐに背中に荷物を背負ってみればいい」

「焦れば焦るほど、成長は遅れてしまう。だからしかるべき間、そういうものは隠しておくことだ。それが正しい流儀というものだ。今彼はちょうどよい年頃になった。大きな進歩ができる年齢だ」

チェンバレンが6年間を過ごした愛着のあるノースロンドンを離れリヴァプールへ移籍する決断を下したのは、このクロップの存在が決定的要因になったという。相思相愛の関係の下、チェンバレンは大きな進歩を遂げようとしている。ついに彼は、本物のリヴァプールの選手になるチャンスを得るのだ。

文=メリッサ・レディ/Melissa Reddy

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