【独占】トルシエが読み解く日本代表監督解任劇。ハリルが抱えた爆弾の正体/インタビュー

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まだまだ収まる気配を見せないハリルホジッチ氏の監督解任騒動。元日本代表監督でハリル氏の友人でもあるトルシエ氏が分析する解任劇の裏側とは?

日本サッカーと、ヴァイッド・ハリルホジッチ前日本代表監督。

その双方を知る男は、今回の解任劇に何を思うのだろうか。

日本サッカー協会(JFA)はハリル氏との契約解除を決め、西野朗新監督体制のもとでロシアへ乗り込む決断を下した。ワールドカップまで約2カ月というタイミングでの判断は、ショッキングなニュースとして世界中に伝えられた。田嶋幸三会長が契約解除の理由として明かしたのは「信頼関係の悪化」だったが、ハリル氏が『Goal』クロアチア編集部の取材に対して語ったのは「すべてが金とビジネスによってひっくり返った」という、なおさらショッキングな内容だった。

そんな中、我々は日本サッカーとハリル氏の双方を知る人物から証言を得る機会に恵まれた。2002年に開催された日韓ワールドカップで日本代表を率いたトルシエ氏だ。彼は友人でもあるハリル氏の解任劇に何を思うのか。

ともに日本代表を率いた指導者として、フランス語で語り合う友人として、見解を明かしてくれた。

インタビュー=ナイーム・ベネドラ(『Goal』フランス編集部)

文・編集=Goal編集部

■「日本ではスポンサーや大企業がフットボールに関わっている」

――ハリルホジッチ氏が日本サッカー協会から契約解除を言い渡されました。まずはこの一報について見解を聞かせてください。

日本サッカー協会は最近の低調な試合ぶりから(解任の)判断をしたのだろう。確かに3月の2試合(マリ戦、ウクライナ戦)ともいい内容とは言えなかった。ワールドカップへの出場権を獲得したときにしても、疑問符がつく点は多かった。協会は「このままでは壁にぶつかってしまう」と判断したのだろう。たとえ親善試合だったとしても、結果を見過ごすことはできなかったということだ。

――ハリルホジッチ前監督は「選手たちと問題はなかった」と話していました。さらに解任の理由を「金とビジネス」と推測しています。

少なくとも、選手の間に混乱があったということは理解できる。経験ある選手たちもそうだし、彼によって代表から遠ざかった選手たちもだ。またJFAと彼の間にも問題があったのだろう。そして問題はスポンサーとの関係にもあったはずだ。この件を見るうえで、日本ではスポンサーや大企業がフットボールに関与しているということを理解する必要がある。そしてついには、JFAの責任者とヴァイッドの関係が破たんした。先ほども言ったように、直近の試合結果が伴わなかったためにね。日本人にとってこれはポジティブな判断だった。だがワールドカップの2カ月前に監督を解雇するという判断が正しいかと問われたら、私は「ノー」と答えるがね。

■「縦に速いサッカー」は日本には合わなかった?

――では、なぜ結果が出せなかったと考えますか? ヴァイッドのプレースタイルは日本に合わなかったのでしょうか?

私はヴァイッドが優れた監督だと知っている。ただ、全くの異国の地で指揮を執った経験が少なかった。彼は指導者として、大半の時間をフランスとアフリカで過ごした。彼が教えた選手のうち、90%はフランス語圏でプレーした経験があった。ヴァイッドは優れた守備を主軸に置いた哲学的な戦略をチームに植え付けるタイプの監督だ。そのスタイルはデュエルで勝利し、グループを再構成し、素早いカウンターで攻めるというもの。記憶をたどればアルジェリア代表がまさにそうだった。格上を相手に、アルジェリアは非常に規律正しくプレーして強固な守備を形成した。これは、アルジェリアの従来のスタイルではなかった。彼が守備の規律をチームに植え付けたのだ。

一方、日本は攻撃的なサッカーを展開する国だ。アジア諸国との試合では80%近い時間、ボールを支配できる。つまり、(そんな国で彼の哲学を植え付けようとするのは)言い換えるならバルセロナで『守備をしろ、デュエルで勝てるグループを作れ!』と言っているようなものだ。スペインの選手たちはこの指示を理解できない。だがヴァイッドは守備に固執する。日本もスペインの選手たちと近い。彼らがアジアで試合をしたとき、守備は試合の15~20%程度しか生じないからだ。それでもヴァイッドはボールを保持し、組み立て、攻め続けるという戦術を用いず、守備を重視し、素早く攻撃する哲学を貫いた。

だが、相手が格下のとき、ボールは常に自分たちのもとにある。これで彼の哲学を実践できるだろうか? この問題は長く付きまとい、その間に選手たちはいくらか苛立ちを感じていたのだろう。その結果、試合では目に見えて素晴らしいパフォーマンスを披露できなかったというわけだ。

■言語が大きな“爆弾”に?

――彼の規律は日本の選手たちには合わなかったのでしょうか?

日本人選手はもともと極めて規律正しい。日本では軍隊や徴兵でそれを教え込む必要がなく、指揮官がいなくても十分に規律を守る。食事、休息、そして回復に至るまで、すべての側面でプロフェッショナルな生活を送っている。また、日本人選手は社会的にも非常に規則正しい。このように規律正しい人間に対しては、しっかりとメッセージを送れば結果に現れて返ってくる。反対に、伝えなければ何も出てこない。

そういう意味で、ヴァイッドが選手たちとフランス語でコミュニケーションが取れなかったことは(解任の)一つの要素だろう。

――言語が大きな爆弾になってしまったと?

日本人のほとんどはフランス語を話せない。だから通訳が必要になる。これがヴァイッドとアルジェリア人選手であれば、彼は選手たちを森へ連れていき、彼らをからかい、直接話を伝えることができる。

だが、通訳を挟んでコミュニケーションを取る場合、選手たちはフランス語に含まれる機微を理解することはできないだろう。おそらく「何のことを話しているんだ?」となる。ヴァイッドは選手と直接コミュニケーションを取ることを求めていたはずだ。だが、日本でそれは不可能だった。(何か問題が起きた場合)黙認はできないが、選手たちと議論もできない。いかなるときも仲介と通訳を伴わなければならない。また日本社会は(諸外国と比べ)感情に対して敏感ではない側面がある。肩に手をかけても、何も感じない人もいる。ユーモアのセンスも(我々とは)違う。日本人選手にしても、その手のことに関しては鈍感だ。本当のところ、そうなんだと感じるよ。こうしたことが長く積み重なって、選手たちと指揮官の関係が崩れていったのだろう。

■トルシエが考える「ハリルの問題」

――ヴァイッドは『Goal』に対し「すべてが金とビジネスだった」と語りました。これには同意しますか?

同意する。だが、それは他のどんな場所でも同じだろう。フランスやドイツ、他のどの国でもね。たとえば、フランスで(ジネディーヌ)ジダン抜きのワールドカップは政治的に不可能だ。日本で中田(英寿)抜きのワールドカップ、アルジェリアで(リヤド)マフレズ抜きのワールドカップはありえないだろう。たとえ指揮官がマフレズ抜きのチームのほうが強いと主張しても、それはあり得ないんだ。これが政治的な側面であることを我々は痛いほど分かっている。また代表チームは国民に愛され、認められる必要がある。この点も監督は理解しないといけない。監督は自分が望むものと、国民やメディアに愛されるチームとの間で妥協点やバランスを見出さなければならない。ヴァイッドはおそらく「それは私には関係ない。私が興味があるのは1+1=2という力学だけだ」という姿勢だったのだろう。だが不幸なことに、フットボールでは1+1を「3」にしなければならない。彼はこの領域において妥協できなかったのだろう。

――アルジェリアで成功を収めた過去がありますが、今回はそうなりませんでしたね。

その仕事も簡単ではなかっただろう。アルジェリアは決勝トーナメントのラウンド16でドイツにあと一歩のところで惜敗したが、そこに至るまでの道のりは険しかった。アルジェリアサッカー連盟、ジャーナリスト、そして選手との間に問題を抱えていたんだ。しかし、そのとき、ヴァイッドは大きく譲歩した。それが監督という仕事であり、彼はそれを乗り切ったからこそ、アルジェリアに到着したときに称えられたのだ。繰り返しになるが、彼がそこに至るまでに渡っていたのは、決して長く穏やかな川などではなかった。

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