曺貴裁監督選出、湘南ベルマーレ2017ベスト5シーン…「どれも甲乙つけがたい」

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明治安田生命J2リーグで首位を走る湘南ベルマーレの曺貴裁監督に2017シーズンのベスト5シーンをセレクトしてもらい、その選出理由とプレーを解説してもらった。

■Scene1
2017年3月4日(土) 第2節
vsザスパクサツ群馬(H)73分
シーン:高山薫のゴール
シチュエーション:湘南 2-1 群馬
試合結果:湘南 3-1 群馬

シーズン序盤、初のホームゲームで試合を決定づけた3点目のゴールです。

薫が70メートルくらいをスプリントして得点を取ったということはもちろん、注目してもらいたいのはラストパスを出した菊地俊介の動きです。菊地はゴールの方向ではなく、横方向にドリブルをしています。また、ゴールを決めた薫は、定石ではもう少し外でパスをもらうケースです。しかし、ペナルティエリアの手前で走るコースを内側に変えています。

後方からボールホルダーを追い越すだけではなくて、薫と菊地の各々の判断が連動したことで相手ディフェンスが対応できずに生まれたとても素晴らしいゴールでした。練習で積み重ねたことに加え、選手がこの一瞬で判断をできたことが重要です。

シーズンの序盤でこういったゴールが生まれるとチームに勢いが出ますし、得点パターンのモデルケースのひとつとして選手たちが認識できただろうという意味で選出しました。

■Scene2
2017年7月29日(土) 第25節
vs徳島ヴォルティス(H)58分
シーン:表原玄太が全力で自陣ペナルティエリアまで戻って守備
シチュエーション:湘南 1-0 徳島
試合結果:湘南 2-0 徳島

このシーンはうちが1-0でリードしていて、次の2点目がどちらに入るかということが試合のポイントとなるシチュエーションでした。

玄太は攻撃が好きな選手です。しかし、守備面ではなかなか力を発揮できていなかったというか、頭では理解していてもそれをプレーに消化することができていませんでした。この場面では、玄太自身が「危ない」「守りたい」と感じて守ることできました。

おそらく玄太が守備に戻っていなければ、少なくともシュートは打たれていました。最悪の場合、重要な試合の2点目を奪われていたかもしれません。試合を重ねるごとに玄太自身が湘南というチームのプレースタイルを感じてくれたことが、このプレーにつながっています。本当にいいディフェンスだったと思います。

また、チームメイトがこのプレー後に彼を祝福しているところも見逃せません。玄太は今シーズン加入した選手ですが、これによって仲間にも認められたと私は考えています。そういう意味でも非常に重要な守備でした。

■Scene3
2017年7月16日(日) 第23節
vs東京ヴェルディ(H)78分
シーン:秋野央樹のゴール
シチュエーション:湘南 1-0 東京V
試合結果:湘南 2-0 東京V

今シーズンはボランチが合計10点を取らなければいけないと選手たちには話していました。それが形になったゴールでした。

ボランチの2人、石川(俊輝)と秋野(央樹)が前線に絡んでミドルシュートでゴールを挙げました。このシーンでは何よりも奈良輪(雄太)にパスが出た瞬間にジネイが斜め方向に走り、(山田)直輝がパスを受けたときに(表原)玄太が斜めにフリーランをするというオフザボールの動きがあったからこそスペースが空いて、ボランチの2人の動き、つまりゴールにつながっています。

うちは個人の力に頼るわけではなく、組織的な動きの中で敵陣に攻め込んでいく形を目指しています。こういう場面はこの試合までなかなか作り出せていませんでしたから、われわれの攻撃スタイルに自信をもたらすという意味でも非常に良いゴールだったと思います。

そもそも現代のサッカーではポジションという概念よりも、選手それぞれが自分のポジションと状況から、どういったプレーをするべきかを判断することが重要です。例えば、3バックの選手がオーバーラップをすれば、サイドハーフと同じプレーが求められます。その反対も然りです。そうでなければ高いレベルで勝ち残っていけない。FWだから守備はやらないとか、DFだから攻撃は蔑ろにして構わないとかではなく、総合的な能力としてフットボーラーであることが求められる時代です。それは監督も同様なので、私自身も選手たちに負けていられませんね。

■Scene4
2017年6月17日(土) 第19節
vs京都サンガF.C.(H)90+1分
シーン:岡本拓也のゴール
シチュエーション:湘南 0-0 京都
試合結果:湘南 1-0 京都

杉岡がドリブル突破からペナルティエリア左へ進入する。左足でクロスを送ると、ファーサイドへ走り込んだ岡本が合わせて待望の先制点を奪う

今シーズン初のアディショナルタイムでの勝ち越しゴールです。

スローインから(杉岡)大暉が勇気を持ってDFの間にドリブルで飛び込み、相手を崩すことができました。苦しいゲームで勝点3をものにできたことはもちろんなのですが、左アウトサイドの大暉のクロスに右アウトサイドの岡本(拓也)が合わせるという非常に湘南らしいゴールだったと思います。

■Scene5
2017年5月17日(水) 第14節
vsアビスパ福岡(H)7分
シーン:菊地俊介のシュート
シチュエーション:湘南 0-0 福岡
試合結果:湘南 0-3 福岡

この試合では、今シーズン初めてプレーシステムを3バックから4バックに変更しています。福岡に対しては、このシステムしかないと私自身、大きなリスクを背負って試合に臨みました。

システム変更がチームにもたらす形として最も理想的だと考えていた形がこのシーンです。それが試合開始10分以内に出たことも重要です。

結果的には0-3で敗れたのですが、システムを変更するというリスクを背負ったことにまったく後悔はありません。このシュートが入っていれば逆の結果になったと確信しています。この試合で選手たちのプレーの幅も広がったと思いますし、もっともっと成長することができるんだと改めて思い直してくれたと感じています。

もし、このシュートが入っていたら結果的に勝利を収め、「良かったね」と終わっていたかもしれない。ですが、負けたからこそ選手たちがいろいろと感じてくれたと思っています。まあ、リスクを背負って勝負に出た試合で最も求めていた形でシュートを放って、それが入らなかったというところが私らしいな、という意味でも印象的なシーンです。


20171002-shonan-cho-2

■言葉の端々ににじみ出る「湘南スタイル」

「甲乙つけがたいですね。この5つがあることに意味があるんだと思います」

曺貴裁監督は今回選出した5つのシーンに順位をつけてほしいというオーダーにこのように答えた。

さらに「湘南スタイル」として定義されている「攻撃的で、走る意欲に満ち溢れた、アグレッシブで痛快なサッカー」の中の「攻撃的」という言葉の意味についての回答も興味深いものだった。

「一般的に表現される守備もわれわれにとっては攻撃。相手が保持しているボールを奪いにいくことも、自陣でブロックを築くことも攻撃です。攻撃をしないと試合には勝てない。なので、考え方としては勝つために取るすべてのアクションが攻撃です」

ここで今一度、湘南のクラブホームページ上でトップチームフィロソフィーとして明文化されている「湘南スタイル」を振り返ってみたい。


勝点3とスタイル

湘南ベルマーレはプロフェッショナルチームである以上、成果は「勝点3」のみと考えています。

しかしながら、勝負の世界に勝点3を獲得する明確な方程式はありません。

だからこそ、勝点3を獲得する確率を上げることを追求していくしかありません。

その手段が、目指すサッカースタイルであり、我々はそれを「湘南スタイル」を呼んでいます。

湘南スタイル

攻撃的で、走る意欲に満ち溢れた、アグレッシブで痛快なサッカー

選手に求める7訓 ~湘南スタイルを具現化するための必要絶対条件~

1.夢と目標を明確に持つこと(自己実現への挑戦、より高いレベルを目指す)
2.意識とこだわりを持って、一つ一つの練習に100%の集中力で取り組むこと
3.ミスを恐れず、常にチャレンジする気持ちを持つこと
4.強いフィジカルコンディション(心技体)を自ら作る努力をすること
5.謙虚さと思いやりを持って、チームを忘れないで行動すること
6.応援してくれる方々に対して、感謝の気持ちを忘れず、温かく接すること
7.自分のため、チームのため、クラブのため、地域のために行動すること(地域、社会貢献)

(以上、湘南HPより一部抜粋)


「成果は『勝点3』のみ」。そして「湘南スタイル」を実現させるために、選手には「7訓」を求める。だからこそ得点シーンのみならずこの定義に合致すれば、敗れた試合のシュートシーンもFWの守備のシーンも「湘南スタイル」。そういう意味も含めて、さまざまな5つの場面を曺監督は選出したのだろう。「5つあることに意味がある」。つまり勝点3を目指して遂行されたすべてのプレーに価値があるものなのだ。

また、曺監督は今回選出した5つのシーンを解説する際に、「○○という意味でも」という言葉をたびたび口にした。

例えば、高山のゴールについては「シーズン初めで得点パターンのモデルケースという意味でも」、秋野のゴールについては「われわれの攻撃スタイルに自信をもたらすという意味でも」。長いシーズンを通して見ると、ピッチで表現されたワンシーンごとにその瞬間の意味があれば、その先につながる意味もある。その時点でのチームのプレーパフォーマンスや置かれている状況によって、そのプレーの持つ意味は変化していくと捉えているのだろう。

結果が出ないとき、思うようなプレーができなかったときにこそチームの真価が問われるもの。指揮官が「あの試合は全然ダメだった。でも、あれから起き上がったつもり」と表現する0-3で敗れた第24節のモンテディオ山形戦など、湘南の2017シーズンの戦いは決して順風満帆ではなかった。しかし、その都度しっかりと自分たちのサッカーを見つめ直してきた。そして、シーズンを通してみると安定した成績を残してきたといえる。

スタイルを定義し、打ち出すことは難しくない。それを実行、継続し、浸透させていくことは難しい。しかし、「湘南スタイル」はチーム、選手に間違いなく浸透している。息を吐くかのごとく自然に紡がれた指揮官の言葉の端々にその一端を垣間見ることができた。

●取材・文=Goal編集部

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