2017-10-16-tochigi05.jpg

【原博実の超現場日記/第16回】頑張っペ、栃木! 餃子と県民の歌と教え子の奮闘と

「えっ~、アディッショナルタイム4分?そんなにあるの?」
「もう早く終わってくれ」
「ボールは持たないでクリアでいい、クリアで!」

そんな声が私の周りで聞こえ続ける。そんな中、試合終了のホイッスルが鳴り響く。ホーム栃木SCが虎の子の1点を守りきってセレッソ大阪U-23に勝利し、J2昇格に近づく貴重な勝ち点3を挙げた。

2017-10-16-tochigi01.jpg

栃木サポーターは全員大喜び。勝利の証である県民の歌をサポーターと歌う! なぜ栃木県民はこの県民の歌が好きなんだろう。かくいう栃木県出身である自分も今でもしっかりと憶えている。

『栃木県民の歌』

とちの葉の 風さわやかに
晴れわたる 町よいらかよ
男体は 希望に明けて
日の光 よもにみなぎる
栃木県 われらの われらのふるさと

栃木県の県庁所在地である宇都宮は、東京駅から新幹線で50分。気がついたら乗り過ごしてしまうのではないかという距離だ。宇都宮は気がついたら餃子の街として全国に名を轟かすことになっていた。

過去の教訓から、まず試合に行く前に餃子を食べないと絶好の機会を逃すことになるので、当初の予定より早い新幹線に変更した。お昼時に近くなると長蛇の列に巻き込まれることになる。

2017-10-16-tochigi05.jpg

新幹線を降り、駅前にある1、2を争う有名店である「みんみん」に直行するが、すでに出遅れてしまったようだ。11時半前なのにすでに多くの方が列をなしている。「みんみん」は諦めて隣のお店に行くことにした。

『12種類の餃子 食べくらべセット』
チーズ、舞茸、海老、ゆば、シソ、ニンニク、どんこ、激辛……。餃子があると本当にご飯が進むなと感じる。餃子を堪能できたので、これで心置きなく試合に集中できる。

宇都宮駅から栃木SCのホームスタジアムである栃木県グリーンスタジアムまでは無料のシャトルバスで約25分。私が乗車したバスには35人くらい乗っていた。バスはスタジアムの脇まで行ってくれるので非常に快適。スタジアムへ行く時には、餃子からのシャトルバスコースが絶対におススメです。

天気予報に反してまだ雨は降っていない。その後、試合中も雨は降らなかった。これも餃子パワーなのか?

栃木としては前節のカターレ富山戦にアウェイで勝利した勢いを今日の試合でも継続させたいところ。だが、今日はエースのネイツ・ペチュニクがケガで欠場し、センターバックの服部康平が出場停止という厳しい状況。とはいえJ2昇格を考えると何とか勝ち点3を奪いたい。

スタジアムでC大阪の玉田稔実行委員にお会いした。玉田さん曰く、U-23チームのメリットはたくさんあり、間違いなく若い選手は試合経験を積んで成長している。ただし集客面では、昨年からかなり落ち込んでいるとのこと。成果と課題はリーグ側でもさらに議論を重ねたい。

この日、C大阪U-23のスタメン平均年齢は22.18歳。18~20歳の選手に加えて36歳の茂庭照幸と33歳の酒本憲幸がスタメンにいるため、その2人でほぼ2歳平均年齢を上げていた。

いよいよキックオフ。立ち上がりから固いのは栃木。やはりペチュニクが不在は大きいのか。ボールは回るが、くさびのパスがなかなか入らない。チャンスになるのはコーナーキック、セットプレーからだ。

前半はスコアレスドローで終了。後半、立ち上がりからはC大阪U-23のペース。ところが先取点を奪ったのは栃木だった。

クロスボールに対して、菅和範は逆サイドぎりぎりのところで何とか足を伸ばして折り返そうとしたボールがGKアン・ジュンスの足に当たってゴール。栃木がラッキーな先制点を挙げる。栃木はその後も追加点を狙い攻めるものの決めきれず。その後はC大阪U-23が何度かチャンスを作られたが、必死に守り抜いて試合終了。栃木が1-0で勝利を収めた。試合終了後は冒頭にも書いた選手とサポーターによる栃木県民の歌がスタジアムにこだました。

2017-10-16-tochigi02.jpg

敗れたC大阪U-23は非常に若いチーム構成だったが、経験のある茂庭、酒本の存在は彼らの成長にとって非常に良いことだと感じた。特に茂庭の指示が素晴らしく、何より存在感が大きい。彼がいたからこそ、試合を通じてディフェンスが大崩れしなかった。

試合後、FC東京時代に監督と選手の関係だった茂庭と久しぶりに会話した。「ナオ(石川直宏)、辞めちゃうんです」と寂しそうな表情で語りかけてくる。FC東京でともにプレーするとともに一緒に日本代表にも選ばれた関係。遡れば神奈川で小学生時代からライバルであり、仲良しの2人だっただけに寂しさも人一倍だろう。

私はあえて「茂庭はまだまだできるよね」と尋ねてみると、「まだやりたいです」と力強く答えてくれた。先日のJリーグYBCルヴァンカップ準決勝の大阪ダービーでもスタメンで出場していた。まだまだDFの要としての役割は大きいはずだ。

2017-10-16-tochigi03.jpg

そしてU-23チームで試合した感想を聞いてみると、「楽しいですよ。若い選手が伸びていく姿を見て、自分も刺激をもらっています」と答えてくれた。以前より良い面構えをしている。茂庭はもともとすぐ顔に出てしまって勘違いされやすいタイプなのだが、本当は心の優しい男だ。FC東京を離れた後は、タイ・プレミアリーグでもプレーしている。経験が余裕となって表情に表れているのだろう。かつて指揮を取った選手の成長を見ると本当にうれしくなる。

栃木県民の歌は若い頃を思い出させてくれた。宇都宮の餃子も食べられた。かつての教え子・茂庭の成長を知ることができた。これで気持ち良くレポートも書けるはずだ。

栃木県民の歌を歌えたことで、やはり自分の故郷は良いものだと再認識した。栃木SCはエース不在で苦しみながらも勝ち点3を取っている。頑張っぺ!栃木SC。県民の歌をもっと聴かせてほしい。そうすればJ2復帰が自ずと近づいてくるはずだ。

文=原 博実

広告