■明治安田生命J3リーグ第25節
カターレ富山 1-2 栃木SC
日曜日は明治安田生命J3リーグの上位対決であるカターレ富山対栃木SCを視察。
北陸地方と言えばやはりお寿司。前回、台風の影響もあって金沢で食べられなかった悔しさは忘れていない。
試合会場の富山県総合運動公園は富山きときと空港からほど近い場所にあるが、富山市の中心部からは遠い。中心部まで行く時間はない。空港内にある寿司店は11時オープン。ふと時計を見ると10時45分。少し早いがここで食べよう。店の外には1人並んでいるだけだった。開店と同時に店に入った。

結果としては大満足。やっぱり北陸の寿司は美味い。寿司を食べて元気いっぱいになったので、スタジアムまで歩いて行くことにした。前々から歩いてみたいと思っていたのだ。
道端に数多くのコスモスが咲いている。山なみも綺麗だ。バス停にはカターレのフラッグがたなびいていて、何ともほのぼのとした光景だ。スタジアムまでは歩いても30分はかからなかった。

総合運動公園には美しい芝生の広場がある。歩くといろいろな景色が見える。そして思っていたより空港から近い。皆さんも富山空港からスタジアム行く時には、一度歩いてみてはいかがでしょうか。
試合の話に移ろう。正直、前日のFC東京対ジュビロ磐田よりも熱い試合だった。
ここまでホームの富山は勝ち点40で4位。対する栃木は勝ち点46で首位。両クラブの選手、スタッフ、そしてファン・サポーターも、J2昇格に向けてこの試合の重要性を痛いほど理解しているはずだ。だからだろう。栃木から大勢のサポーターがスタジアムに詰めかけていた。

栃木はJ1の大宮アルディージャからネイツ・ペチュニクが加入。彼のポストプレーで他の選手が生きてきている。特に2列目の西谷和希、牛之濵拓、杉本真が活性化している。西谷は益子焼きで有名な地元栃木の益子市出身。身長165センチと小柄ではあるが、ドリブルで仕掛けるスタイルは面白い。
先制点をマークした杉本は、拓殖大から栃木に加入してクラブ一筋でプレー。交代で出場した二十歳の川田拳登はアカデミーから大宮育ち。今シーズン開幕前に出場機会を求めてザスパクサツ群馬に育成型期限付き移籍したものの出番に恵まれず、8月下旬に同じ形で栃木へ再移籍。第23節のガンバ大阪U-23戦では途中出場で2得点を挙げるなど、今やスーパーサブ的存在になった。藤沼拓夢も同じく大宮育ち。川田と同じ二十歳で育成型期限付き移籍し、ここまで6試合出場で1得点を挙げている。

戦力アップの栃木か、勝って栃木との勝ち点を3差に縮めたい富山か。見どころのある攻防が繰り広げられた。
立ち上がりから激しいボールの奪い合いでどちらも一歩も引かない戦い。しかし先取点を取ったのは富山。22分、ショートコーナーから佐々木陽次がヘディングで合わせた。栃木の守備の盲点を突いてきたゴールだった。
この試合の富山はショートコーナーを多用することで、ヘディングの強いペチュニクを外へ引っ張り出すことに成功している。スロー映像を見ても分かるが、ペチュニクはフリーでニアサイドにポジションを取っており、富山がショートコーナーで短くつないだ際にボールサイドに位置する二人の選手に対応するため、外へアプローチしなければならなくなる。富山は栃木のCKの守備をよく研究したことが見事に実を結んだと言える。

栃木にとって苦しい展開だと思われたが、わずか2分後に同点ゴールを挙げた。
すぐに追いついたことで栃木はまた自信を持って戦える。一方の富山はもう少しリードした展開のまま戦いたかったはず。ペチュニクへのマークはかなり激しいが、やはり彼の加入で栃木のサッカーは格段にレベルアップしている。
後半も一進一退の展開となったが、先に動いたのは栃木。55分、得点した杉本との交代でスーパーサブ川田を投入すると、65分に栃木が追加点を奪う。
ペチュニクはアシストした菅和範にいつも左足でそのままクロスを入れてほしいと要求していているように見えたが、ゴール後のペチュニクの喜び方を見ると本当にそうだったんだろうなと納得した。

ホームの応援を背に最後まで諦めない富山だが、クロスバーにシュートが直撃するなど反撃は実らず、惜しくも敗戦を喫した。栃木は今シーズン初の4連勝。何よりも見応えのある試合だった。
本日の入場者数は4,014人。富山の森野弘樹実行委員の話によると、この日の富山は地域対抗の運動会が行われていて集客的に厳しいスケジュールだったという。もっと多くの人に見てもらいたかったと思える内容だっただけに残念だった。
アウェイの栃木サポーターは首位キープに大喜び。試合内容もそんな気持ちを倍増させたのだろう。
そういえば、昨年のJ2・J3入れ替え戦は栃木と対戦したツエーゲン金沢のホームスタジアムが改修工事中だったため、ここ富山で行われた。このスタジアムで金沢はJ2残留を決め、栃木はJ2復帰が実現ならず悔し涙を流した。だからこそ栃木サポーターの喜びもひとしおだったのだと思う。
これで明治安田生命J3リーグは残り8試合。まだまだ大きなドラマがありそうな予感がする。とはいえ、栃木にとっては大きな勝ち点3だった。
本当にいい試合を見た。だから、帰りも素晴らしい風景を見ながら歩いて空港へ行くことにした。
文=原 博実
