先ほど、私は「その継続性の問題以外で、久保のプレーに欠けているところはほとんどない」と記した。その“ほとんど”の大部分を占めるのが、決定力だ。いや、もっと言えば、彼の継続性という問題もゴールを決めるか決めないかに依存している。
久保が昨季ラ・リーガで残した成績は5ゴール0アシスト。私がビッグクラブのスポーツダイレクターであれば、その成績と決めるべきシュートを外していく様子、試合毎の浮き沈みを確認すれば、もう獲得候補の上位には置かない。6000万ユーロを支払って獲得する24歳のEU圏外枠選手は、すぐにでも結果を出せる選手であるべきだ。
久保はソシエダで、その影響力を高める必要がある。とはいえ今季、そうするためのハードルは決して低くない。セルヒオ・フランシスコが新たに率いるソシエダは、久保をはじめとして良質な選手たちを揃えているものの、まだプレーアイデンティティーを確立できていない。新戦力も適応中の現在は、どうプレーしたいかも分からない状況だ。
しかし、だからこそ久保には、チームがどこに向かうべきかを示す羅針盤になってほしい。難局に差し掛かったチームにいるスター選手を「周囲に恵まれない」と擁護する声もあるが、個人が収める成果の言い訳を集団に求めたって何も意味はない。久保に必要なのは言い訳ではなく、その底知れぬポテンシャルを引き出すことにほかならない。久保の師であるダビド・シルバがかつてそうしたように、“肉でも魚でもない”現在のソシエダを、久保自身のフットボールで導く以外に進むべき道はないはずだ。
久保はこれから戦っていく一試合一試合で、自身が極上の選手であることを示せばいい。ソシエダやほかの選手たちの調子に振り回されず、安定感のあるプレーを見せて、チームの灯台となればいい。そうできれば来夏の彼は、間違いなく移籍市場の注目株になれる。
フットボール界は、久保建英を忘れてくれるな――私はそんな思いで、今季の彼の活躍を期待している。