インターネットがインフラとして社会に普及し、WEBが紙(新聞・雑誌)、電波(TV、ラジオ)と並ぶ主要な情報プラットフォームとなったことで、サッカーに関する情報流通のあり方は、かつて比べると劇的と言っていいほど大きく変化した。
WEBが登場する以前の時代、プレミアリーグやUEFAチャンピオンズリーグがスタートした1990年代には、日本はもちろん欧州でも、サッカーに関する情報を取材・発信するメディアは、新聞、雑誌、TV、ラジオという商業マスコミ以外、実質的には存在していなかった。
最も内容が詳しく、当時としては速報性も高かったのは『レキップ』(フランス)、『ガゼッタ・デッロ・スポルト』(イタリア)、『マルカ』、『as』(スペイン)といった日刊のスポーツ新聞で、毎日15~20面、場合によってはそれ以上をサッカーの報道に割いてきた。ドイツでは週2回刊の『キッカー』が同じ役割を果たしてきた。スポーツ新聞がない英国では『タイムス』や『ガーディアン』のような高級紙から『サン』、『デイリー・ミラー』、『デイリー・メール』などのタブロイド紙まで一般紙がスポーツ報道を担っていたが、情報量はスポーツ紙と比べると相対的に少なかった。これらに加えて、国によっては『フランス・フットボール』(フランス)、『グエリン・スポルティーボ』(イタリア)、『ドン・バロン』(スペイン)といった週刊誌、『Four Four Two』(イギリス)のような月刊誌もあり、より長いインタビューや特集、詳細な分析記事などを掲載してきた。
一方、テレビは1990年代末までチャンネルが地上波のみで、1日1~2回、長くても20~30分程度のスポーツニュースと、週末のリーグ戦開催に合わせて試合のダイジェストや討論を行う数時間のサッカー番組が報道の中心だった。90年代末から00年代初頭にかけて有料衛星TVが普及するまでは、リーグ戦や欧州カップ戦の試合中継もごく限られた形でしか行われていなかった。だが、2000年前後に有料衛星TVが欧州で普及し『Sky Sports』、『Movistar+ 』、『Canal+』などの衛星放送局がほぼすべての試合中継を行うようになると同時に、24時間スポーツニュースチャンネルが開設され、スポーツ映像の情報量は大きく増加することになる。
しかし最も大きな変化をもたらしたのは、2000年代に入って一気に進んだインターネットの世界的に普及である。これによって、商業マスコミ(新聞・雑誌・TV・ラジオ)だけがスポーツに関する情報源という旧来のメディア環境は、情報の発信源と伝達媒体の両面で大きく変化することになる。インターネットは、紙や電波とは異なり、誰にでも情報を発信できる開かれたプラットフォームである。その上に生まれた新たな情報媒体であるWEBサイト、そしてソーシャルメディアは、既存の商業マスコミだけでなく、クラブをはじめサッカーに直接関わっている当事者、さらにはアマチュアのサッカー愛好家にも情報の発信を可能にした。
新聞・雑誌・TV局という大手マスコミが、旧来の商業メディアと並行する形でオンラインニュースサイトを立ち上げ、「二本立て」の情報発信を続ける一方で、WEB上には『GOAL』や『ESPN FC』のようなワールドワイドな総合ニュースサイト、そして特定のチームや特定のテーマ(移籍情報、サッカービジネスなど)だけを取り上げる専門ニュースサイトが続々と誕生する。また、クラブやリーグ、統括団体(FIFA、UEFA)など、サッカーに関わっている当事者も公式サイトなどのWEBメディアを通じて積極的に情報を発信するようになった。
2000年代半ばからは、WordPressをはじめとするBLOGプラットフォームを通じて、個人による情報発信の環境も整い、試合の論評から戦術やプレーの分析まで、アマチュアブロガーによる質の高い情報にも簡単にアクセスできるようになった。そして2010年代に入ると、そこにさらにTwitter、Facebook、Instagramから、動画系のYoutube、Twitch、tiktokまで、様々なソーシャルメディアが広まってファンによる情報発信と情報交換も活性化され、WEB上に流通するサッカー情報はそれこそ指数関数的な勢いで増加してきている。
2023年現在のスポーツメディア状況を見ると、新聞・雑誌という旧来の商業メディアが目に見えて衰退しており、サッカー情報のプラットフォームはインターネットが完全な主流となっている。それを踏まえて、WEB上でアクセス可能な欧州のスポーツメディアをカテゴリー分けすると、以下のようになる。