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【サッカーメディア大図鑑:イタリア編】信憑性の高いメディアは?各社を徹底紹介

欧州メディア図鑑:総論を下に、欧州5大リーグの各国主要メディアを紹介。各社の報道姿勢や運営方法、信頼度などを現地在住ジャーナリストらの監修の下、『GOAL』が紹介していく。

今回は、ミランやインテル、ユヴェントス、ナポリ、ローマなど日本でも人気クラブが点在するイタリア編。現地在住ジャーナリストの片野道郎氏が監修の下、主要メディアの特色を分析する。

→スペイン編はこちら

  • La-Gazetta-Dello-SportScreenshot

    ガゼッタ・デッロ・スポルト

    ※マスコミ系ニュースサイト

    創刊1896年と欧州で最も長い歴史を誇るスポーツ新聞で、シンボルカラーであるピンク色の誌面が目印。セリエAのビッグクラブに各2~3人の番記者を貼り付ける充実した取材・編集体制を持ち、毎日40ページのうち25~30ページをサッカー関連の記事で埋めるイタリアスポーツマスコミのリーダー的存在であり続けてきた。

    インターネットの普及と紙メディアの衰退が急速に進んだこの10年あまりで、新聞そのものの販売部数は激減しているが(2011年1月:41万部→2023年1月:7万4000部。12年でマイナス82%)、デジタルメディアへのシフトはあまり進んでおらず、今なおコンテンツの充実度は新聞紙面がWEBサイトを大きく上回っている。

    WEBサイトは、ニュース記事を主体とする無料部分と、新聞誌面とも異なる独自記事を主体とする有料部分に分かれている。有料部分の購読料は月2.99ユーロ(新聞のデジタル版とセットで7.99ユーロ)。無料部分には新聞紙面と共通の記事も含まれており、そうした記事は十分な読み応えがある。比率的には他のニュースサイトと内容的に大差がない短文のニュース記事の方が多いが、セリエAのビッグクラブはもちろん「プロビンチャーレ」と呼ばれる地方の中小クラブに関しても情報量は十分ある。

    サイトのつくり自体は、記事そのものよりも広告の分量が多いひと昔前のUIデザインで、残念ながら決して読みやすいとは言えないのだが、それを差し引いても情報の充実度と信頼性という点では、イタリア語のサッカーニュースサイトの中ではやはりこの『ガゼッタ』がトップだろう。イタリアサッカーの現地情報をイタリア語で(あるいはイタリア語から日本語に翻訳して)読むためのポータルサイトとしては一番のお勧めだ。

    Gazzetta dello Sport

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  • コリエーレ・デッラ・セーラ

    ※マスコミ系ニュースサイト

    イタリアを代表する一般紙のひとつで、ミラノに本拠を置き『ガゼッタ・デッロ・スポルト』も発行しているRCSグループ(オーナーはトリノFC会長のウルバーノ・カイロ)が発行元。スポーツ報道にもそれなりに力を入れており、「北のビッグ3」を中心に、ローマ、ナポリ、フィレンツェ、ジェノバなど支局のある主要都市のクラブに番記者を置いている。

    特にミラン、インテル、ユヴェントスを担当するベテラン記者たちによる独自記事は読みごたえがあるが、そのほとんどは本丸である紙媒体(日刊紙・デジタル版あり)のみ、あるいはWEB版有料記事の扱いで、読むためにはサブスクリプションが必要だ。無料で読めるWEB版の記事は、他媒体の無料記事と変わらない通り一遍の内容がほとんどで、独自性には欠ける。

    Corriere della Sera

  • ラ・レプブリカ

    ※マスコミ系ニュースサイト

    『コリエーレ・デッラ・セーラ』と並んでイタリアを代表する一般紙のひとつで、本社はローマに置かれているが、発行元のGEDIは昨年ユヴェントスのオーナーであるアニエッリ家に買収され、第3の日刊紙『ラ・スタンパ』(本社はトリノ)と同じ傘下に入った。それ以来、同紙のアイデンティティだった中道左派寄りの論調はやや薄まっている。

    一般紙の中ではスポーツ報道に最も力を入れてきており、ビッグクラブの番記者に加えてオピニオニストにもトップクラスのベテラン記者を揃えている。『コリエーレ・デッラ・セーラ』同様、質の高い独自記事の大半は有料記事だが、WEB版独自のコラムなど読みごたえのある無料記事もいくつかある。一般紙のスポーツ報道をひとつ押さえておきたいならこちらがお勧め。

    La Repubblica

  • コリエーレ・デッロ・スポルト

    ※マスコミ系ニュースサイト

    ミラノに本拠を置く『ガゼッタ・デッロ・スポルト』に対し、こちらはローマに本拠を置く二番手のスポーツ紙。オーソドックスな硬派路線を歩む『ガゼッタ』への対抗上、こちらはよりタブロイド的(あるいは日本のスポーツ新聞的)な大衆路線が特長。特にWEB版はそれが顕著で、クリックバイト系の記事作りが多く、論調も持ち上げる、叩くの落差が激しい。

    またピッチ外のゴシップ記事にも力を入れるなど、読者の理性よりも感情にターゲットを合わせた編集方針を取っている。それを理解した上でなら、イタリアのスポーツジャーナリズムの幅広さを知るためにもチェックしておく価値はある。

    Corriere dello sport

  • トゥットスポルト

    ※マスコミ系ニュースサイト

    トリノに本拠を置くイタリア第3のスポーツ紙で、『コリエーレ・デッロ・スポルト』と同じグルッポ・アモデイ傘下。主要2紙と差別化するため、地元トリノのユヴェントスとトリノに特化した紙面作りを特長としてきた。と言っても両チームを支持する編集方針を取っているわけではなく、むしろ両チームのサポーターに迎合する傾向が強く、そのため試合結果や内容、順位の変動に応じて論調が大きく変化する。監督や主力選手に対する支持、不支持の波も大きい。WEB版のつくりも『コリエーレ・デッロ・スポルト』同様タブロイド的だ。

    Tuttosport

  • Lega Serie A SkyGetty

    スカイ・イタリア

    ※放送系WEBサイト

    アメリカ企業コムキャストの子会社であるスカイ・グループが運営する放送局。イタリア国内におけるセリエAの放映権を持つほか、F1やMOTO GP、NBAなど様々な人気スポーツの放送を行っている。

    WEBサイトも充実しており、試合後のインタビューや現地映像を積極的に配信中。しかし、ジオブロックの関係で日本からは視聴不可能なものがほとんどである。なお、後述のジャンルカ・ディ・マルツィオによる移籍市場専門番組など、一流記者による独自視点の見解も配信。しかし、こちらも日本からは視聴できないものがほとんどだ。

    Sky Italia

  • メディアセット

    ※放送系WEBサイト

    あのミランの元名物会長シルヴィオ・ベルルスコーニが1978年に設立した「テレミラノ」を下に、1980年代にイタリア屈指の民間放送局に成長したメディアセット。ミラノとローマに3つの主要な制作センターを構えていた。

    しかし、以前まで保有していたセリエAの放映権は予算不足や『DAZN』の台頭で取得できず、看板ジャーナリストもその『DAZN』や『アマゾンプライム』に流出。2021年11月には大規模なリストラも発表し、放送局としては厳しい状況に陥っている。選手やクラブ幹部などのインタビューなども配信しているが、こちらも日本では視聴できない。

    なおWEBサイトとしては、記者の署名はなく通信社系のソース使っていることがほとんどだと予想されるが、カバーすべきことはカバーし、一部では独自視点を織り交ぜた分析記事も展開するなど機能しており、チェックして損はないかもしれない。

    SPORT MEDIASET

  • Serie A Logo DESKTOP

    レーガ・セリエA

    ※オフィシャルサイト

    セリエAを主催するリーグ団体レーガ・セリエAのオフィシャルサイト英語版。セリエA、コッパ・イタリアなど主催コンペティションの試合結果、順位表からハイライト動画や試合スタッツまで、リーグの公式サイトとして押さえるべき最低限の情報はきっちり押さえられており、基本的な情報チェックのソースとしては十分だ。

    ブンデスリーガやプレミアリーグの公式サイトと比べると、ニュースや分析などの独自コンテンツの充実度はやや低く(それでも数年前と比べると大きく改善されている)、その点では物足りなさも残るが、そちらは上記『ガゼッタ』などニュースサイトのコンテンツを参照することで十分にカバーできる。

    A代表からアンダー年代まで“アッズーリ(イタリア代表)”関連の公式情報は、イタリアサッカー連盟(FIGC)のオフィシャルサイト <figc.it/en/home/>に掲載されている。イタリア代表に関しては、後で紹介するYoutubeチャンネル『FIGC VivoAzzurro』の動画コンテンツが充実している。

    Lega Serie A

  • ウルティモ・ウオモ

    ※独立系情報サイト

    2013年に2人のライター/編集者が創刊した独立系のオンラインスポーツマガジン。短いニュース記事は一切掲載せず、戦術分析や評論など「報道」ではなく「掘り下げ」に特化した質の高い長文記事だけに的を絞って、1日数本の記事をアップするWEBオンリーのクオリティマガジンというカテゴリーをイタリアで確立し、高い評価を得ている。

    記事の内容は、試合分析や戦術論から人物やクラブのストーリー、サポーター文化、ビジネスまで様々だが、共通しているのは綿密な情報収集と考察に基づき、書き手の視点をはっきりと打ち出した読みごたえのある内容だという点。

    執筆者の大部分が、プロジャーナリストの資格を持たないアマチュアの書き手であるところもマスコミ系のメディアとは異なる。とはいえ1つひとつの記事のクオリティはきわめて高く、スポーツ新聞と比べても遜色ないどころか上回っていると言っていい。

    昨年までの5年間は衛星TV局スカイ・イタリアの傘下で無料サイトとして運営されてきたが、昨年秋に独立運営に戻り、それに伴って月5ユーロの有料メディアとなっている(一部記事は無料閲覧可)。

    L’Ultimo Uomo

  • カルチョ・エ・フィナンツァ

    ※独立系情報サイト

    イタリア語で「サッカーとファイナンス」を意味するタイトルの通り、サッカー関連のビジネス、ファイナンス、マネジメントに特化した情報だけを扱うニュースサイト。ピッチ上の情報は一切取り上げず、セリエAはもちろん欧州サッカー界全体をカバーして、経営戦略や財務分析、ビジネス動向からファイナンシャルフェアプレーなどの制度や仕組みまで、ピッチ外の話題を広く取り上げている。

    他メディア発のニュースに解説をつけた二次情報記事も多いが、独自の考察や分析によるオリジナル記事も充実しており、イタリアだけでなく欧州サッカー全体についてフットボールビジネス関連の情報を追うなら、チェックしておきたいメディアのひとつだ。

    Calcio e Finanza

  • カルチョメルカートドットコム、トゥットメルカートウェブ

    ※独立系情報サイト

    イタリアには、TV、新聞からWEBサイトまであらゆる一次情報をソースにしてのコピペやリライトで、毎日100本以上の記事を配信している、典型的な「質より量」型の移籍情報サイトが複数あるが、その代表格がこの2つ。

    どちらのサイトも同じコンセプトと戦略で運営されているため、発信している情報に大きな違いがあるわけではない。あえて言うならば、最近『ガゼッタ・デッロ・スポルト』のネットワークに加わったカルチョメルカートドットコムの方が、ベテラン記者の連載コラムなどオピニオン系の独自コンテンツが多い。

    ピーク時には数分刻みでアップされる記事の内容は当然ながら玉石混交だが、特定のチームや選手に関する直近の情報をとにかく漁ろうとする時には、情報量の多さだけで十分頼りになる。ただし内容を鵜呑みにせず、ソースを確認したり裏を取ったりする慎重さとリテラシーが読み手には求められる。

    Calciomercato.com

    Tuttomercatoweb

  • di marzio(C)Getty Images

    ジャンルカ・ディ・マルツィオ:Twitter

    ※ソーシャルメディアアカウント

    「長年培った独自の情報ネットワークによる信憑性の高い情報のみを責任を持って発信する」というポリシーを貫き、グアルディオラのバイエルン行き(2013年)など数々のスクープをものにしてきた移籍専門記者の草分け、ディ・マルツィオの個人アカウント。現在のフォロワー数は176万人。

    有料衛星スポーツ専門チャンネル『スカイ・イタリア』で移籍報道チームを率いながら、自身のWEBサイトでも積極的に情報を発信している。このツイッターアカウントは同サイト記事の告知が主体だが、移籍関連情報のみならず試合前後の選手コメントや裏話なども充実しており、ニュースサイトとしての有用性も高い。

    ちなみに、総論編で紹介したファブリツィオ・ロマーノは元々、ディ・マルツィオ率いるスカイ・イタリア移籍報道チームの一員だったが、そのチームが集めた情報を使って独自に行っている英語での発信が世界規模でフォロワーを集め、今や本家を大きく上回る1400万人規模のアカウントに成長したという経緯がある。

    ジャンルカ・ディ・マルツィオ @DiMarzio

  • Ibrahimovic Dybala

    ズラタン・イブラヒモヴィッチ&パウロ・ディバラ:Instagram

    ※ソーシャルメディアアカウント

    プロサッカー選手の情報発信はツイッターよりもインスタグラムがメイン。セリエAプレーヤーの中で最もフォロワー数が多いは、イブラヒモヴィッチ(ミラン・5671万人)で、それに僅差で続くのがパウロ・ディバラ(ローマ・5561万人)だ。

    というよりも、この2人を除くとフォロワー数が1000万人の大台に乗っているのはファン・クアドラード(ユヴェントス・1300万人)くらい。インテルで2トップを組むラウタロ・マルティネス(961万人)とロメル・ルカク(865万人)がそれに続いているが、この5人を除くとフェデリコ・キエーザ(ユヴェントス)のようなトップクラスでも300万人台で、ソーシャルメディア上での「インフルエンサー度」は低い。

    ズラタン・イブラヒモヴィッチ @iamzlatanibrahimovic

    パウロ・ディバラ @paulodybala

  • FIGCGetty Images

    FIGC Vivo Azzurro:Youtube

    ※動画系メディア

    イタリア代表の動向をフォローする上で欠かせないのが、オフィシャルYouTubeチャンネルであるこのVivo Azzurro。試合のハイライト動画はもちろん選手インタビューや紹介動画などのサブコンテンツも充実しており、最新動向がチェックできる。セリエAにもオフィシャルチャンネルはあるが、こちらはハイライト動画以外のコンテンツが少なく、物足りなさがある。

    FIGC Vivo Azzurro

  • Bobo tv VieriTwitch

    BoboTV:Twitch

    ※動画系メディア

    98年フランス・ワールドカップ、2002日韓・ワールドカップでイタリア代表のエースストライカーを努めた「ボボ」ことクリスティアン・ヴィエリが、インテル時代にチームメイトだったアントニオ・カッサーノ、ダニエレ・アダーニ、ニコラ・ヴェントラの3人と2020年に始めた、歯に衣着せぬサッカー談議を生配信するトークチャンネル。

    配信ペースは週2回前後で、基本は4人によるフリートークだが、月に1~2回はゲストを呼ぶことも。4人とも元選手で顔が広いこともあり、ゲストにはかつてチームメイトだった大物が登場することもしばしば。これまでにペップ・グアルディオラ、ロナウド(元ブラジル代表)、ロベルト・マンチーニ、ジャンルイジ・ブッフォン、アレッサンドロ・ネスタなどが参加している。

    ゲーム実況がメインの生配信プラットフォームであるTwitchを使っている上、フォーマットが元チームメイトとのサッカー談議という気楽なものであるところから、ゲストもリラックスして本音で喋ることが多い。暴言すれすれの過激な意見で場を盛り上げるカッサーノ、解説者としても一流で切れ味鋭い分析で場を引き締めるアダーニ、司会役として冷静に仕切るヴィエーリ、ボケ役のヴェントラと、4者4様の個性で互いに引き立て合う本音トークは好感が持てるもの。

    配信のハイライトは切り取りという形でYoutubeチャンネル『BoboTV Official』にもアップロードされている。

    BoboTV

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