J1昇格大分の頭脳。片野坂戦術を司る若き理論派コーチの指導とは?【前編】

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©Hinatsu Higurashi
全42節にわたるJ2を戦い抜きJ1昇格を果たした大分トリニータ。ここでは、片野坂知宏監督の戦術面のブレーンとして昇格に貢献した安田好隆コーチを取り上げる。チームを陰で支えた戦術的ピリオダイゼーションを礎とする若き理論派の指導手腕とは。

史上稀に見る大混戦となった2018年J2を勝ち抜き、J1自動昇格をつかんだ大分トリニータ。安定したチームマネジメントとバランス感覚に長けた采配で、監督キャリア3年目にして国内トップリーグへと上り詰めた知将・片野坂知宏の手腕は言うまでもない。その陰にはそれぞれに役割分担して指揮官を支えるコーチ陣の存在があった。今回はその中から、主に戦術面のブレーンを司る安田好隆コーチをクローズアップする。(文中敬称略)

■戦術的ピリオダイゼーションを礎とする若き理論派

「スタッフで食事に行くときも、店の情報をものすごく入念に調べるんですよ」と片野坂監督は安田のことを笑って紹介する。とにかく向学心旺盛で知識満載。安田自身も「いろんな記事を読んだり試合やトレーニングを見たり人に聞いたりして情報を入れるのが好き。友達は少ないですが、その人たちはみんな、知的な刺激を与えてくれる人ばかりです」と言う。

安田が指導者としての第一歩を踏み出したのは高3のときだ。名門・國學院久我山高サッカー部でセンターバックとしてプレーしていたが、ボールを蹴るよりも教えるほうが断然好きだったという。最後の選手権を都予選で敗退すると同時に現役を引退して学生コーチになった。

母校で後輩たちを教えた後、大学に通いながら横河武蔵野FC(現・東京武蔵野シティフットボールクラブ)でアカデミーコーチのアルバイトをし、2007年8月、メキシコへ渡る。3つのクラブで育成年代の指導にあたり、2010年にはチェトゥマルFCでトップチームのコーチとして働いた。

「メキシコでたまたま読んだ、スペイン語で書かれたポルトガルの本が面白かったので、これやってみたいなと思って」

そんなきっかけで2011年9月、今度はポルト大学スポーツ学部大学院に進学。「戦術的ピリオダイゼーション」を、創案者であるヴィトール・フラーデ教授からじきじきに学んだ。後にジョゼ・モウリーニョが取り入れたサッカーのトレーニング理論だ。

■豊富な理論の“引き出し”から咀嚼したものを落とし込む

2018-12-13-oita-yasuda

2014年、あとは卒業論文を書くだけというタイミングで東京ヴェルディからコーチ就任のオファーが届き、卒業せずに帰国。三浦泰年監督の下で指導に携わる。翌年は吉田達磨監督の誘いを受けて柏レイソルU-18で下平隆宏監督の下につき、2016年は吉田監督とともにアルビレックス新潟で戦術的ピリオダイゼーションをベースに戦った。

よく混同されるのが、オランダ人コンディショニングコーチのレイモンド・フェルハイエンが提唱するトレーニング理論「サッカーのピリオダイゼーション」だ。フラーデ教授の「戦術的ピリオダイゼーション」とは全くの別物だが、幅広く興味を示す安田はレイモンド理論の存在を知ると、その講習も受けに出向いた。現在、片野坂監督は大分のトレーニングにレイモンドの理論を取り入れている。安田が2017年に大分にやって来てからは、その講習を受けていたことが役立った。

「僕の中でつねに最上位にあるのは戦術的ピリオダイゼーションですが、いま大分ではレイモンド寄りのトレーニングをやっています。監督に合わせて出す引き出しを変えている。何にでも対応できる状態にしておくのがコーチの仕事だと思っているので」

“引き出し”は安田の知識欲のままに増殖していく。昨オフには「完全に興味で」と、ドイツの運動指導者ホルスト・ルッツが開発した「ライフ・キネティック」の公認トレーナー資格も取得。運動と脳トレを組み合わせたエクササイズで、体に負荷のかからない程度の運動にチャレンジすることにより脳がドーパミンで刺激され、普段は使われていない領域が活用されるようになるというものだ。今季からオフ明けの二部練習の午後の部は、ライフ・キネティックに充てられている。

ただ、いずれについても安田は、学んだ理論をそのままの形で実践しているわけではない。頭の中にある膨大な理論や知識は、それを落とし込む対象である目の前の選手たちに合わせた形でアウトプットされる。

「いろいろ学んできた安田が、見たもの、学んできたものを取り入れて、いまこれをやってます、という感じです。僕は自分のフィルターを通さないと、いま見ているチームに落とし込めない」

プロサッカー選手としての経験がない安田は、自身のプレーヤーとしての感覚を1ミリも信じていないという。

「ここにいる選手たちは間違いなく僕よりも上手にプレーできる。僕が彼らを助けることができるのは、プレーしやすくしてあげること。戦術的にどう戦うか。どうプレーしたらこの選手の良さが出てチームの中で生きるか、チームの良さが出て相手より優位に立てるか。そういったところにパワーを使うのが、僕の仕事なんです」

では実際にどのようにしてトレーニングを行っているのか。12月14日掲載の後編では現場レベルの話に踏み込みたい。

文=ひぐらしひなつ

■著者プロフィール
ひぐらしひなつ:サッカーライター。九州を拠点に育成年代からトップまで幅広く取材。大分トリニータのオフィシャル誌などに執筆、エルゴラッソ大分担当。新著『監督の異常な愛情』をはじめ著書『サッカーで一番大切な「あたりまえ」のこと』、『大分から世界へ 大分トリニータユースの挑戦』他。

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