森保ジャパンのアジアカップ。日本人監督、そして世代交代の次【森岡隆三×岩政大樹対談/前編】

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元日本代表センターバックでもあり、現解説者・指導者である森岡隆三氏と岩政大樹氏。森岡氏は2000年レバノン大会、岩政氏は2011年カタール大会に出場し、ともにアジア王者となった経験を持つ。ここでは自身の経験を振り返りつつ、この大会への期待と見どころを語ってもらった。【構成:Goal編集部】

■日本人監督就任の意味

――ロシア・ワールドカップ後、日本人である森保監督が就任されました。まずは、この決定に関する率直な印象を教えてください。

森岡: 西野監督から森保監督へのバトンタッチはうれしかったですね。ずっと日本人らしさやジャパン・ウェイということが議論されてきた中で、どのタイミングで日本人監督に託されるんだろうと思ってきました。岡田武史監督は2度W杯の指揮を執り、南アではベスト16に導きましたが、後任は外国人監督でした。

それ自体は全く悪いことではないのですが、今日、Jリーグの中でも結果を出している日本人指導者が増えてきています。例えばガンバ大阪で三冠を成し遂げた長谷川健太監督(現FC東京監督)がいて、森保監督も広島で3度リーグ優勝されました。しかもお二人とも選手経験も豊富。そういう方々が代表監督になるということは、いわば全指導者にとって一つの目標になるのではと思っていました。

岩政: 僕もやっと舵を切ったんだなと思いました。岡田監督は緊急事態で最初から指名されたわけでもなかったですし。そういう面では大きく風向きが変わる出来事になるんだろうなと感じましたね。例えば森岡さんが代表の時代はフィリップ・トルシエ監督(1998年就任)だったじゃないですか。逆に言えば当時外国人監督のメリットを感じていましたか?

森岡:日本人選手のやや引っ込み思案の部分を焚きつけるのがうまかったですね。選手たちが内に持っている反骨心みたいなもの、ピッチ上でもっと自分を出せ! みたいなところを焚きつけるんです。

そして若い選手の起用は大胆でしたね。僕が最初にA代表に呼ばれたのは23歳で、初出場は井原さん(井原正巳前アビスパ福岡監督、当時31歳)と交代して出場した、1999年3月のブラジル戦でした、が翌年の2月か3月にはもうイナ(稲本潤一)やシンジ(小野伸二)といった二十歳くらいの選手がどんどん呼ばれ、一緒にピッチに立っていた。現代表と比べてもかなり若かったと思います。トルシエ監督はU-20と五輪代表も掛け持ちしていたこと、そして実際にクオリティの高い若手が多かったことも、世代交代が円滑に行われたことは大きな特長だったと思います。

あと、代表に対するエンターテインメント性もすごく高まった。メディアとの関わり含め話題性があった。見られている意識というのは、選手の責任感を高めることにも繋がったと思います。そのほかで言えば、厳しい言葉がダイレクトに伝わってこない。あれだけ厳しいことを日本語で言われたらさすがに落ち込んだかもしれません(笑)。でも、先生と生徒というような関係でなく、対等にぶつかり合う、そんな関係は良かったんじゃないかなと思います。

――下の年代とA代表との兼任はトルシエ監督以来、今まで行われませんでしたが、ほかにメリットはあると思われますか?

森岡:先ほど話した世代交代に加え、ピッチ内での基準が共有できるんです。そのチームにしかないような「言葉」や「ルール」というものはあって、例えば ラインを上げるときに「上げろ」と言うのと、「アップ」と言うのでは、ほんのちょっとの違いですが、言葉を合わすことによってプレーも合ってくる。ボール回し一つとってもチームによっていろんなルールや良いプレーの基準があるので、練習を共有できているのといないのでは練習の質が変わってくる。

セットプレーのマーキングやゾーンの立ち位置といったものも共有できているかいないかで、試合に向けての準備は大きく変わってきますしね。今からもう18年前になりますか。まだ海外組は少ない時代でしたが、当時の代表は、アジアカップ、コンフェデ、と多くのタイトルを獲った。それは当時の日本代表が機能していたという証でもあると思います。

■大胆なメンバー選考ができた理由

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岩政:森保監督が就任され最初のメンバー発表で結構思い切って代えられました。それは森保さんがというよりも、協会を含めての方針が打ち出されていたからだという気がするんです。五輪代表監督兼任でスタートしたことも含めて、「これでやっていいよ」という流れの中、全体で動いた気がします。スタッフを見ても森保さんご自身がロシア大会のコーチでしたし、ここがスムーズに転換ができたことは、狙い通りに来ているんじゃないかと思います。

森岡:メンバーの世代交代で言うと、北京世代の成長が素晴らしかったですからね。2008年の北京でしんどい思いをして発奮した本田圭佑、香川真司、岡崎慎司、長友佑都、吉田麻也といったあの世代がすさまじかったので、その下がなかなか追い越すことができなかった。「若い世代が出てこない」というより、ベテランたちが頑張ったともいえる。

岩政:それはありますよね。Jクラブも同じですから。森岡さんのエスパルスもそうでしたよね。森岡さんや齊藤俊秀さん(アジアカップ日本代表コーチ/U-21代表コーチ)たちセンターバックがずっと“粘って”いた。僕はその入れ替わりくらいでエスパルスに誘われたんですよ。 粘れば粘るほど世代交代が遅れるのは仕方がないですよね。

森岡:エスパの世代交代もズドンッと来ましたね。僕の下が一気に青山(直晃)だったから、それこそオカ(岡崎慎司)と一緒だから北京世代。そこには10歳くらいの差があるから。でも、今回堂安(律)たちがドンッと来た。中島(翔哉)、南野(拓実)、この1,5列目、2列目はすごいね。彼らの抜擢は、森保さん始めスタッフも育成をやってこられた人材が多いから、常にスタッフ間で共有ができている証拠なんだろうなと思いました。森保さんの決断はもちろんだけど、日本サッカー界としてのサイクルがうまく回り出しているのかなという気がしています。

――ロシア組と新世代の融合はここまでうまくいくと思われましたか?

岩政:そこは当然、うまくいく、いかないどちらも可能性を考えてのことだと思います。良かった部分は2列目の3人のところに、香川や乾(貴士)といったロシア組を最初に呼ばなかったところかなと思います。中途半端に少しずつ新戦力を入れても、もともと出来上がっている中に入って行くのは難しい。でも、完全に新しいチームとなったので、新世代は入りやすかったと思います。

森岡:物怖じしない世代だと感じますしね。こちらがが思っているほど、ベテランだとか若いとか選手間ではそこまでの差はないんじゃないでしょうか。ただそういう中でも「ああ、こういう人がいてくれて助かるな」という瞬間はある。

僕の場合、シドニー五輪後のアジアカップ(2000年)でレバノンに向かう前にパリでパリ・サンジェルマンと練習試合とをして確か引き分けたのかな。終わった後のロッカーで、ハットさん(服部年宏現ジュビロ磐田強化部長)がみんなを呼んで「こんなゲームじゃダメだ」と言ってくれる。名波さん(名波浩現磐田監督)もちょっとした修正やポイントを言ってくれる。

ロッカールームや練習中の、「こういうところを締めたほうがいいぞ」みたいな何気ないベテランの一言は、相当チームに大きな影響を及ぼしますから。プレーだけじゃない大人の安心感、経験値。今だと中盤だったら青山(敏弘)後ろだったら吉田、長友になるんでしょうね。そこに遠藤(航)や冨安(健洋)がいる。そういう意味で守田(英正/川崎フロンターレ)の離脱は残念です。中島もこのアジアカップで「日本代表の顔」になるかなと思っていたから残念です。

■森保監督、チーム作りの手法

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――当初は広島風の3バックになるか? などいろいろ想像されていたんですが、蓋を開けてみるとロシアからのやり方が踏襲されました。チーム作りの手法はどう見ていらっしゃいますか?

森岡:森保監督は各ポジションで二人ずつくらい競わせながらといったことをお話されていますが、3バックで考えた時にそれは結構難しいと感じます。よりポリバレントな選手を呼ばなきゃいけない。特に3バックでやろうとしたときに選手の傾向が偏り過ぎてしまう可能性がある。

それともう一つ、こちらが思っていたほど、3枚にこだわっていないのかもしれない。常にいるメンバー、戦力での最適解を探っているとは思いますね。ここまで苦い顔をしてやっている選手はほとんどいない、つまり選手たちも納得の上でやれているのが今の強味でもあります。

岩政: 3バックって中央に選手が多いので、選手も分かりやすいんですよ。森保さんもよく原理原則は変わらないとおっしゃっていますが、「このタイミングでチーム全体でここを厚くしましょう」としなくても、大事な中央が自然と厚くなっているというのは手法として分かりやすい。

でも、それが4バックでやっていてもできているんだったら、別にどちらでも構わないという考え方だと思うんです。4枚でやるとどうしても全体にまんべんなく広がってしまいがちになる。本来集めたいところに集められないタイミングが出て来るとシステムでいじって操作するというほうが分かりやすいんですけどね。勝っている負けているというよりも、もうその“現象”が起きている。別に3にしてそれを分かりやすくする必要はないという気はします。だから、そういう面での見極めもすごく冷静な方だと思います。

――自分のやり方ありき、ではなく。

岩政:それは自分のやり方がどこまでシステムなのか、現象なのかというところでしょうね。こういうシチュエーションでここに人が集まってほしいとする手法は別にシステムだけではないので。監督はその現象が起きるように描いてメンバーを置いていく。システムをいじる必要があればシステムで、というだけなんですよ。森保さんの中で描いている原理原則やサッカーはとそんなに変わっているわけではない印象です。

■アジアカップ1カ月という時間の価値

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――では、逆に弱点といったものは見えますか?

森岡:弱点というか、ここから先、かな。ここまでの親善試合では例えばネガティブ・トランジション(攻守の切り替え)の時に、どのエリアでも結構取り切れています。その理由は、相手が日本のサッカーに付き合ってくれたところも大きい。これが全く付き合わない相手が来ると変わってくる。ディフェンスの背後に蹴ってよーいドンされて、そこで何か事故が起きるような可能性を狙ってくる相手を前にすれば、よりエリア別にもう少し細分化して、 といった落とし込みをしなければいけない時が来るとは思う。

そういう意味でも今回のアジアカップは、初めて代表チームとして長い時間が与えられています。もちろん結果もだけど、このアジアカップでどういうふうに、特に守備の部分の整理がされていくかも期待していますね。一緒にプレーする時間が長いと、選手間でのちょっとした阿吽の呼吸みたいなものも出て来る。アジアカップの経験でチームの力はより高まってくるんじゃないかという気がしています。だからすごく楽しみです。

岩政:ケースバイケースの話はどんどん出てきますし、細かい部分を突き詰めていかなくてはいけないのですが、代表だとそんなことをする時間がないじゃないですか。10日ほど集まるだけだと一つの練習の中で細かいこと新しいことを多くは落とし込めない。でも、今回1カ月間の中でやれば、相当な数が出せる。

もちろん今までも、攻めているときには何人残しましょう、こういうカウンターがある可能性の絵を描いておきましょうくらいは言えたかも知れませんが、相手がこうなっていたらこう、といった落とし込みはなかなかできない中で試合をしてきました。それが多分アジアカップの中で見えてくるだろうとは思います。そこでやっと、森保さんの色もそうですし、今の選手たちロシア以降に加わった選手たちも含めた中での新しいやり方が少しず固まっていくんだろうなと思いますね。

森岡:今回は1カ月という時間があるので、特定の選手たちの連係、いわゆるホットライン的な関係が様々なポジションで高まり、より多くのハーモニーを生みだしそこがまたチームの強味に変わっていくことが期待されます。もう一つは、こういう長期の大会になるとジョーカー的な存在が必要になる。

伊東純也や、北川(航也)はスタートからもいけるけど、途中でああいう抜け出すタイミングとスピードと決定力を持った選手が入ってくるのはチームとしての強みになる。ジョーカー的な、大会での日替わりヒーローのような選手は、やっぱり出てきてほしい。

岩政:あと、決勝トーナメントからは1発勝負なので、いろんなプレッシャーがかかってくると思うんです。前半でポンと取れればいいけれど、取れない試合も当然出てくるでしょうし、先に相手に取られることもある。その時どういう解決策を選手たちが作っていくのか、あるいは森保さんがシステムを変えるのか。息詰まったときの解決策は未知数なので。

森岡:メンバーで言うとボランチのところのマネージメントは鍵かもしれない。守田が離脱したこともあり、所属チームでの出場機会が少なくコンディションが読めないところもあるけど、カギはやっぱり柴崎かなと思う。彼は実際どういうタイプですか?

岩政:どちらかと言うと流れを読めるタイプですね。というか読みたがるいろんなことを考えるタイプの選手なので。これまでの代表ではそういう役割じゃなかったですからね、長谷部もいましたし。でも、これからはそういうプレーをやっていこうという自覚を持っていました。それが本来の彼の良さで、僕はこれからのほうが活きる気はするんですよ。

森岡:そうすると、まさにこのメンバーの中では絶対的な存在になるね。もう一人が誰になるのか。後ろはもうベテランというか圧倒的な経験値のある吉田がいる。

岩政:確かに酒井宏樹も長友もいるから、もう1枚が冨安にしろ、三浦(弦太)にしろ、入りやすいのは入りやすいかもしれない。ただボランチの3人(青山、遠藤、柴崎)はそれぞれタイプが違うので、森保監督が狙っている通りに起用ができていけばいいですが、どこかでケガ人が出たり、流れが悪くなったときに、駒としてはどうしても足りないところがあるので。

森岡:ここで塩谷(司)を呼んだのは、勝っているときの逃げ切り3バックがあるのかなと。

岩政:僕もそれはあるんだろうなと思いました。

森岡:そのあたりも含めて、より代表としての武器が増えていくようになれば面白いですね。

【後編】「アジアカップ、ベストメンバーでどこまで行くか?本気の勝負はやはり」に続く

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