2018-12-21-tese-bochum©Getty Images

ヘディングが強くなったのは、クライファートのおかげ/鄭大世インタビュー【前編】

現役サッカー選手・監督が欧州サッカーを解説するDAZNの「EURO SOCCER FREAKS(ESF)」。今年も多くの現役選手・監督が現場目線での解説を披露している。Goalではその一人、欧州CLでバルセロナvsトッテナムを担当した清水エルパルスの鄭大世選手を直撃。解説についての考え方、ご自身の経験とサッカー観、そして清水エスパルスについて話を聞いた。ここではさまざまな話題が飛び出したインタビューを前後編に分けてお届けする。前編は、解説に向き合う姿勢と海外サッカーについて。

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■解説の中で現場からの意見が言える強み

――今回、解説のお話が来た時の第一印象は?

以下に続く

セカンドキャリアにも影響するので、しっかりしなきゃいけないなと思いました。去年初めてやってみて(マンチェスターダービーの解説を担当)自分でも手ごたえがあってツイッターでの評判も良かったですし、今年また呼んでもらえました。ありがたいなと。来年につなげたいし、引退後もこういう仕事ができたらいいなと思っているので。

――解説に向き合ううえで、何を伝えようと思いましたか?

月並みではあるんですが、現場の立場からの意見ですよね。一応プロでやっているので(笑)。ドイツ時代も大成功とはいかなかったですけど、それなりにやって。韓国でのプレーも経験して。意外とこの韓国のプレーというのがミソで、隣の国だけどまったくプレースタイルが違う。でも韓国は日本から学ぼうとしている。それも含めて現場からの意見が言えます。例えば選手のフトした行動、どういう心理がそういった行動をもたらしたのかを随所で説明できたらいいなと思います。とはいえ、バルサとかになったら異次元すぎて、僕としては一ファンとしてしか見ることができませんが(笑)。

例えばJリーグの試合を見ていても、「そうは言っているけど、選手の立場としてはこうなんだよ」と思ったり、逆に「そうそう、プレーヤーの立場としてそうだよね」というのが結構あったりすします。ファウルの仕方や、微妙な判定。サッカー経験者でなくては分からない感覚的なものがたくさんあるので、それらを言葉に表せたらと思っています。

■高校時代の憧れはクライファートだった

――今回はバルサとトッテナムのご担当ですが、普段海外サッカーはご覧になりますか?

最近はビッグゲームしか見られていないですね。Jリーグはほぼ見ていますが。でも海外サッカーは高校の時から大好きです。セリエAが強かった時代。プレミア、リーガ・エスパニョーラもですね。

――中田英寿さんがセリエAに行かれた後、90年代後半から2000年代前半ですか?

その時期ですね。ローマがスクデットを取ったときだったので。バルサもその時代が好きだったんですよ。特にクライファート(オランダ代表)がいたときです(1998年~2004年)。

オランダ代表でワールドカップでブラジル相手に決めたヘディングがあって(1998年フランス大会準決勝。オランダはPK戦で敗退)、それはもう衝撃的過ぎて。クライファートを目指してずっと練習していました。唯一高校の時に買ったユニフォームがクライファートなんです。僕、パク・チソン(元韓国代表、京都サンガを経てアイントフォーヘン、マンチェスター・ユナイテッド等で活躍)のチャリティーマッチに毎年呼んでもらうんですけど、ある年のメンバーに「クライフェルト」と書いてあって。まさかと思っていたら、本当にクライファートだったんです。

ものすごく感動しました。2~3年前ですね。僕はプロ12年目くらいだったんですけど、初めてリフティングがまともにできないぐらい緊張しました。自分から「ウォーミングアップ一緒にやろう」って行ったけど、緊張でひざがガチガチになっちゃって。その試合では2トップを組ませてもらいました。本当に最高でしたね、あの時は。

――見習うべきプレーはありましたか?

ブラジル戦の印象的なプレーで、クライファートは自分の中での金字塔になったんですよね。そこから毎日ヘディングの練習ばかりしてきて今の自分につながるんです。でも、一緒にプレーしたときに右足に落としたのに打たずに左に切り替えた。「あれ? 左利きだっけ?」みたいな。利き足さえもあまり把握していなかったという(笑)。

アヤックス時代から応援していたというわけでもないし、バルサ時代が好きだったので。とにかくその時代のバルサはめちゃくちゃすごかった。レアル・マドリ―時代が来る前。(覇権が)行ったり来たりしたじゃないですか。フィーゴがバルサからレアルにいって。ロベカル(ロベルト・カルロス)、ベッカムの時代。 いやあ、すごいですね。

――メッシ、C・ロナウドの前ですよね。では最近はどんな選手やプレーに注目していらっしゃいますか?

最近はやっぱりスアレス(バルセロナ)ですね。動きをすごく見ています。オフサイドにかからない動き出し、蹴らないで味方が持ったときに、どちらの方向に動くかとか、マイナスでもらう動きとか。入れ替わったときに相手の前に体を残したり。例えばバルサだったら、戦術的にボックスの近くで持つとサイドバックがその裏を取る。でも、スアレスはオフサイドボジションに残っているけど、相手ディフェンスは(スアレスの戻る動きに)間に合わない。ダイレクトで折り返して、そこで決める。

シュート数も圧倒的に多い。それはやはりその前の駆け引きやアイディアが豊富なのでシュートが打てる。僕も1トップタイプなので、スアレスのオフ・ザ・ボールの動きにいつも唸ります。

■プレミアでプレーするのが夢だった

――では、好きなリーグはありますか?

僕は昔からプレミアでした。プレミアでプレーするのが夢だったんですよずっと。そこは叶わなかったんですけど。

――でも1回練習に行かれませんでしたか?

はい。ブラックバーンに練習に行きました。なんで知っているんですか? アンオフィシャルなんですけど。

――ロシアW杯の時にGoalでマイベストイレブンという企画があって、そこでテセさんがお話ししてくださっていたんですよ。

そうなんですね。一緒に練習しましたね。クロアチア代表のニコラ・カリニッチ(アトレティコ・マドリー)。ロシア大会では強制帰国させられましたが…。彼はうまかったですよ。衝撃的でした。あと環境も。

―― どういう環境だったんですか?

いやもう、ずっと雨が降っているんです。グラウンドがぐちゃぐちゃ。芝がもはや芝じゃなくて泥の上に芝がちょっと乗っかってるみたいな感じになっていて。そういった環境をまったく理解できていなくて、取り替え式スパイクを持って行っていなかったんです。固定式スパイクしか持っていなくて、ズルンズルン滑る。シュートのときも軸足が滑って子どもみたいなミスをしてしまって。ある程度はできたんですけど、やっぱりいきなり入ってやるのは難しかった。

とにかくプレミアリーグは好きでしたね。TVでやっているハイライト映像の目線が低くてゴールシーンがすごく派手に見えました。好きだったのは、ブラックバーンやダービーカウンティ、ニューカッスル…。

――イングランドのサッカースタイルは力強い。伝統のキック&ラッシュ。

ほとんどのクラブがそうですよね。CLを狙えるぐらいの上位のチームは海外から監督を招へいして、ある程度ポゼッションサッカーをやっています。でも、下位チームはそうはいかない。

――テセさんは、キック&ラッシュのほうが好きですか?

好きです、好きです。ブラックバーンに練習参加したときも楽しかったですね。蹴ってくれるし、競り合いも激しい。2メートルくらいの長身で屈強な黒人のセンターバックともやり合えてすごく楽しかった。自分がもし指導者になるんだったら、そういうふうになるんじゃないかなと思ったりもするんですよね。Jリーグで言えば、(サガン)鳥栖はもともとそういうチームだった。最前線に豊田(陽平)がいて。エスパルスはそういうチームにめちゃ弱かったんですよ。(コンサドーレ)札幌とか。

――すごく走るチーム。

はい。中盤はずっと走る。セカンドボールを拾って、バーンと前に蹴る。でも、どのクラブも「それじゃあクラブの未来がない」ってなるんですよね。

結局、監督もそれで代わる。それで札幌はミシャ(ミハイロ・ペトロヴィッチ)監督になるりました。鳥栖は(マッシモ)フィッカデンティ監督が来て、パスサッカーを試みましたが、対戦したときにあまり怖くなかった。相手がつないでビルドアップして来るときに守備をハメていけるから怖くない。逆にロングキックや飛び道具を使われてそれがハマったらすごくイヤなんですよ。

――先日、中村憲剛さんが「今年初めてショートカウンターの楽しさが分かった」っておっしゃっていて。プレスの先鋒になる。

ラキティッチ(クロアチア代表/レアル・マドリ―)みたいな感じですね。

――ボールを支配しつつプラス縦に速い攻撃でJリーグを優勝されたのも面白いなと思いました。

トレンドはどんどん変わっていますよね。ちょっと前だったらポゼッションのスペインサッカー、ティキタカだった。でも、W杯でフランスが優勝したら、またトレンドが変わってきた。面白いですよね、サッカーって。正解かない。その時代に正解だと思っていたら、4年後8年後にまったく変わっていたり。今は前に速い選手を置いて、相手が帰陣する前に攻め切る。まさに今季の川崎Fがそうでした。じつは今季のエスパルスもそうだったんですよ。

(今季の清水を語る後編に続く)

■Profile
鄭大世CHONG Tese

1984年3月2日生まれ、34歳。181cm/80kg。愛知県出身。東春朝鮮初中級学校→愛知朝鮮中高級学校→朝鮮大学校を経て2006年川崎フロンターレに加入。10年ボーフム/ブンデス2部、12年ケルン/ブンデス1部に所属。ドイツでは通算3シーズンを過ごし、2部44試合出場14得点・1部5試合出場。13年、水原三星/韓国)移籍し3シーズンを過ごす(65試合出場20得点)。15年清水に加入。J1通算166試合出場63得点、J2通算37試合出場26得点。07年に北朝鮮代表に選出され国際Aマッチ33試合出場15得点。W杯南アフリカ大会に出場。屈強なフィジカルと決定力を持つストライカー。

■EURO SECCER FREAKSはこれからも選手・監督が続々登場!

12月22日の夜は金子翔太選手が登場!
プレミアリーグ第18節アーセナルvsバーンリー

◎今後の予定
【槙野智章選手】12/23 0:00~プレミアリーグ第18節マンチェスターCvsクリスタルパレス
【林陵平選手】12/24 1:00~プレミアリーグ第18節エヴァートンvsトッテナム
【谷口彰悟選手】12/26 23:00~セリエA第18節アタランタvsユヴェントス
【曹貴裁監督】12/27 0:00~プレミアリーグ第19節リヴァプールvsニューカッスル
【中谷進之介選手】12/27 0:00~プレミアリーグ第19節レスターvsマンチェスターU

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