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リヴァプールはイングランド史上初の4冠を達成できるのか? CL、プレミアリーグ、FAカップ…歴史的な偉業かかる
(C)Getty Images4冠は可能なのか?
そもそも4冠は可能なのか? イングランド以外にも目を向けると、過去には6冠を達成したクラブが2つある。それが2009年のバルセロナと2020年のバイエルンだ。しかし、どちらもシーズンをまたいだ“暦年”での6冠であり、シーズン中は3冠だった。
リヴァプールが目指す4冠とは、1シーズンのうちにスーパーカップなどを除いた「国内主要大会3冠+欧州制覇」の4つのタイトルだ。そもそも、この4冠を目指せるクラブは限られており、スペインやイタリア、ドイツには「リーグカップ」が存在しないため、彼らは4冠に挑戦することさえできない。2019-20シーズンには、パリ・サンジェルマンが国内3冠を達成し、チャンピオンズリーグ(CL)でも決勝に進出したがバイエルンの前に涙をのんだ。そのパリも、2020年にフランスのリーグカップを廃止されたため、今後は4冠を目指すことができない。
そう考えると不可能そうに思える4冠だが、過去に1チームだけ達成したクラブがある。それが1966-67シーズンのセルティックだ。スコットランドの名門は国内3冠を果たすと、チャンピオンズカップ決勝では過去3シーズンで2度の欧州制覇を成し遂げていたイタリアのインテルを下して4冠を達成。決戦の地となったポルトガルのリスボンになぞられ“リスボン・ライオンズ”と呼ばれることになる伝説のチームだ。
ちなみにインテルとの試合後、セルティックの控え室を祝福に訪れたのがスコットランドを代表する名将、ビル・シャンクリーだ。そして彼が当時率いていたクラブというのがリヴァプール! そして今季のCLでインテルを敗退させたチームも…。
(C)Getty Imagesイングランド勢の実績は?
イングランド勢の最高成績は「3冠」で、1998-99シーズンのマンチェスター・ユナイテッド(リーグ、FAカップ、CL)や2000-01シーズンのリヴァプールの“カップ・トレブル”(FAカップ、リーグカップ、UEFAカップ)、そして2018-19シーズンのマンチェスター・シティの国内3冠などが有名だ。
実はイングランドでは最近まで4冠を口にする者は少なかった。それもそのはずだ。62年前にリーグカップが設立されて以降、2019年にシティが達成するまで国内3冠に輝くクラブはいなかったのだ。しかしシティの国内3冠をきっかけに4冠が現実味を帯びてきており、昨季もシティが4冠に迫る勢いだった(最終的にはリーグ優勝、リーグカップ優勝、CL準優勝、FAカップ4強の2冠)。だからイングランドでは4冠への気運が高まっており、今季それを狙えるのは既にリーグカップで優勝しているリヴァプールだけなのだ!
あまり知られていないが、実はイングランドでも過去に4冠を達成したチームがある。それが2006-07シーズンのアーセナル女子チーム。彼女たちは国内3冠に加えて欧州も制して“クアドルプル(4冠)”を成し遂げた。
(C)Getty Imagesあと15試合だけ
リーグ戦は残り8試合、FAカップは2試合、CLは5試合。リヴァプールの4冠までの道のりは、この15試合だけなのだ。だが、まずは目の前の4試合に専念すべきだ。4試合といっても対戦相手は2チームだけ。CL準々決勝でのベンフィカとのホーム&アウェイ、そしてリーグ戦とFAカップ準決勝での運命のマンチェスター・シティ戦だ!
リーグ戦では4月10日に首位シティとの天王山が控えており、そこで勝てれば2ポイント差をつけて首位に浮上できる。その6日後には、再びシティと今度はFAカップ決勝のイスをかけて相まみえる。そのため4冠の夢は、今後2週間の結果次第とも言えるのだ。
だが、そんなに深く考える必要はない。単純にシーズン残り15試合を全勝すれば4冠なのだ。ちなみにリヴァプールの直近15試合の成績は、PK戦での勝利を含めて14勝1敗(唯一の敗戦はCLのインテル戦)。そう考えれば15連勝での「4冠」も決して難しくないはずだ!?
(C)Getty Images鬼門はFAカップ?
リヴァプールは前述の“カップ・トレブル”以外にも3冠を達成したことがある。1983-84シーズンには「リーグ、リーグカップ、チャンピオンズカップ」の3冠に輝いたのだが、FAカップでは4回戦(32強)でブライトンに敗れて早々に4冠の夢が潰えていた。
通常、4冠を目指す上での最大の難関はチャンピオンズリーグだが、リヴァプールにとってはFAカップも同じくらい鬼門と呼べる。なぜなら、4つのタイトルのうち、最も長く優勝から遠ざかっているのが2006年以来の優勝を目指すFAカップなのだ。今季で67回目となるチャンピオンズリーグ/カップで6度の優勝を誇るリヴァプールだが、FAカップでは過去140大会で7回しか頂点に立てていない…。
そのため4月16日のFAカップ準決勝のマンチェスター・シティ戦が1つの山場になるが、FAカップでのシティ戦は現在3連勝中と相性が良い。さらに自ら「準決勝の世界記録保持者」と呼ぶように、ユルゲン・クロップ監督はドルトムント時代を含めて準決勝の敗退は1度しかないのだ! 全ての大会を含めて過去に11回も準決勝に進出し、敗退したのは2017年のリーグカップ(サウサンプトン戦)だけだ。
(C)Getty Images選手層は欧州最高!?
4冠を目指すことになると、まるでマラソンのような長期戦を戦うことになり、最終的には選手層の厚さが物をいう。その点で今季のリヴァプールは頭一つ抜け出しているだろう。とりわけ前線の選手層がずば抜けており、モハメド・サラー、サディオ・マネ、ディオゴ・ジョタの3トップに加え、1月に加入して即座にチームに馴染んだコロンビア代表のルイス・ディアスや技巧派のFWロベルト・フィルミーノ、日本代表エースの南野拓実、そして最近は出番が少ないがジョーカー的に使えるベルギー代表FWディヴォック・オリギもいる。
無論、前線だけの話ではない。今シーズンの公式戦で3試合以上に出場した選手の数を見ると、マンチェスター・シティは23名、チェルシーやレアル・マドリー、バイエルンでも25名なのに対し、リヴァプールは29名もいるのだ! 事実、直近のワトフォード戦では、W杯予選で長距離移動を強いられたマネやルイス・ディアスをベンチスタートさせ、南野拓実をベンチからも外した。そして先発起用した絶対的エースのサラーに関しても、まだ1点のリードの69分に交代させて今後の試合に備えさせながら、最終的には2-0の勝利を収めてみせた。
この選手層があれば、シーズン最後まで息切れすることなく走り抜けられるはずだ。
(C)Getty Imagesくじ運
CL準々決勝のドローは、シードや同国回避のルールがない純粋な“くじ運”だった。勝ち残った8チームはどこも強豪クラブだが、そんな中でリヴァプールは少し力が劣るとされるベンフィカを引き当てた。ベンフィカとはチャンピオンズリーグ/カップで過去4度(計8試合)ぶつかっており、そのうち2回が「準々決勝」での対戦だったが、2度ともリヴァプールが制してそのまま頂点に登り詰めているのだ(1978年、1984年)!
さらにリヴァプールはチャンピオンズリーグ/カップの「準決勝」で圧倒的な実績を誇る。準決勝進出は過去11回あり、敗退したのは2度だけで、9回も決勝まで勝ち上がっている。だから、与し易いベンフィカを下せば、仮に準決勝で優勝候補の一角であるバイエルンと対戦することになっても、ファイナルへの道筋はくっきりと見えているのだ。
(C)Getty Images運命の地
仮にプレミアリーグで逆転Vを果たし、16年ぶりにFAカップ制覇を遂げ、歴史的4冠にリーチをかけて5月28日のCL決勝を迎えたとしよう。対戦相手は4年前のファイナルで苦汁をなめさせられたレアル・マドリーかもしれないし、3年前のようにイングランド決戦になるかもしれない。いずれにしろ一筋縄ではいかない相手だが、リヴァプールには心強いデータがある。それが決勝戦の舞台なのだ。
当初、今季のファイナルはロシアのサンクトペテルブルクで開催される予定だったが、急遽フランス(スタッド・ド・フランス)に変更された。フランスで決勝戦が開催されるのはチャンピオンズカップ時代を含めて今回で6回目となる。過去5回を見てみると、なんとレアル・マドリーが3度も決勝の舞台に立っているのだ!
結果は2勝1敗。フランスでの決勝戦でレアル・マドリーに土をつけた唯一のチームというのが、1981年のリヴァプールなのだ。アラン・ケネディのゴールで白い巨人を1-0で退けて、クラブ史上3度目の欧州制覇を果たしたのである。
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