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イングランド代表にパーマー時代が来た。先発に選ばれるべき

1年前のコール・パーマーはイングランドのフル代表デビューまでまだ1カ月を待たねばならない状態だったが、今や彼はスリー・ライオンズの現在と未来に不可欠な選手のように思われる。ガレス・サウスゲート後の時代に突入したイングランド代表はネーションズリーグでギリシャとフィンランドとの対戦が続いていくが、チェルシー最新のカリスマはリー・カーズリー暫定監督のもとで舞台のセンターに立つ準備が出来ている。

しかし、パーマーがスターになっていくにつれ、もうひとりの並外れたイングランドの選手の代表での役割が疑問視されるようになってきた。ジュード・ベリンガムが押しも押されもせぬ存在であり、パーマーが外せない存在になったなら、フィル・フォーデンの居場所はどこにあるのか。困難と崩壊の新シーズンが始まり、マンチェスター・シティ所属のフォーデンは、イングランド代表の最新の「誰を先発させるか」論争が激しくなるにつれ、自由に使える攻撃的MFのダイナモたちをバランスよく起用する責任を負うカーズリー暫定監督のもと、みずからが劣勢に立たされていることを自覚していることだろう。

パーマーとベリンガムはブカヨ・サカとともに、イングランドの攻撃を長期にわたって構築していくべき、文句なしの中心選手であることを証明してきた。それはつまり、フォーデンは代表での未来をかけて戦わなければならないかもしれないということを意味する。

  • Phil Foden Man City 2024-25Getty

    フォーデンは何に蝕まれているのか

    2024-25シーズンのこれまでのところ、フォーデンがマンチェスター・Cの試合に出ていない時間がある理由は謎である。24歳のフォーデンはプレミアリーグの4試合にしか出場しておらず、先発したのは2試合だけ、合計で167分しかプレーしていない。シーズン開幕からの3試合に出場せず、9月初旬にカーズリー暫定監督が初めてイングランド代表の指揮を執った試合にも出なかった。彼の不在の理由は何かわからない病気とされた。

    プレーをしている時のフォーデンは抑え気味のように見え、これが昨シーズン、個人としては最高のパフォーマンスをし、シーズン末の栄誉を総なめしたのと同一人物とは思えない状態である。今シーズンはまだ、チャンピオンズリーグのスロヴァン・ブラチスラヴァ戦での1得点1アシストしか記録していないのだ。

    EURO2024の代表での試合で多忙な夏を過ごした疲れが残っているのかとも思われるが、代表のチームメイトの大半がそれぞれのクラブで重要な役割に戻っているのを見ると、本当は何が起こっているのか、疑問を持たざるをえない。

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  • FodenGetty

    「どんな選手にも休養は必要」

    マンチェスター・Cのペップ・グアルディオラ監督は、おそらくは詮索から選手を守ろうとしているのだろうが、この状況についてあまり語ろうとしない。9月中旬にこう言っている。「どんな選手にも休養や休息は必要だ。フィルはここ数週間すこし苦しんでいたが、水曜の試合では後半45分をまるまるプレーした。彼は昨シーズンのペスト・プレーヤーであり、今は復活に向けて戦っている最中だ」

    つい最近、再びこのアカデミー出身選手の出場がないことを問われた監督は、さらに曖昧な言い方をした。「彼はちゃんとプレーしている。フィルに時間は必要ない。彼は賢く、素晴らしい。何の問題もない。我々にとってフィルがどれほど大事な選手か、私は知っている。そのことに何の疑問もない。先発か途中出場かは問題ではない。これだけの数の試合に出ていれば、今後も出場することになるだろう。それは確かだ」。

  • Cole Palmer England Euro 2024 finalGetty

    パーマーを先発に

    もともとマンチェスター・Cの期待の星だったパーマーも2023-24シーズンに大ブレイクを果たした選手のひとりだが、元チームメイトとは違ってチェルシーに戻っても変わらぬ活躍をしており、その調子のままイングランド代表で確実に先発している。

    昨シーズン、ブルーズで25得点15アシストを記録した22歳は、すでに、これまでのプレミアリーグのわずか7試合でまさかの大量11得点に貢献しおり、その中にはウルブス戦のハットトリックのアシストもあったが、ブライトン戦では前半だけで4得点を挙げるという大記録を打ち立てた。

    サカやハリー・ケインと並んで、パーマーは今シーズン2度目のインターナショナル・ブレイクで代表の中心選手のひとりとなり、これまでのところフォーデンやベリンガムを凌いでいる。パーマーの安定性により、スリー・ライオンズの攻撃が彼を中心に形成される可能性がある。

    その安定性により、パーマーは、今はまだそうでないとしても、いずれ世界最高の選手のひとりとみなされるようになる道を進んでいる。パルマーは技が巧みであるだけでなく――楽々と様々なスキルを駆使し、ボール・コントロールやパスに優れている――試合で結果が出せる選手なのだ。チェルシーでは54試合に出場して、得点とアシストを合わせ51点に貢献している。単純にとんでもない数字である。

  • Cole Palmer Lee Carsley EnglandGetty

    イングランドの現在と未来

    報道によると、カーズリー暫定監督は、ギリシャ戦とフィンランド戦やそれ以降の試合で、2023年にU21欧州選手権をともに戦い優勝したパーマーに重要な役割を与えたいと思っているようだが、それをダメだとはとても言えないだろう。

    この2人は、1年前にパーマーが最後にU21の試合に出て以来初めて一緒に戦うこととなるのだが、それはチェルシーのカリスマが筋肉疲労のせいで暫定監督のトップチームの試合に出られないでいたからである。

    最新の代表招集についてカーズリー暫定監督はこう言った。「コールにどんなチャレンジを与えても、彼はそれを乗り越える。彼は高すぎも低すぎもしない。それはプロのサッカー選手として素晴らしい資質だ。彼の見事なプレーを見るのは素晴らしいことだ」

  • Bukayo Saka Jude Bellingham England 2024Getty/GOAL

    パズル完成に向けて

    では、こんな攻撃の配置のどこにベリンガムとサカを残すのか? パーマーは、神出鬼没の右ウイングとしてもストライカーの下にいる背番号10としても決定的なプレーをすることができる。つまり、カーズリー暫定監督の4-3-3または4-2-3-1のシステムにおけるチームメイトのポジションのひとつを占めることになるのだ。

    昨シーズン、ピッチの前の方で数多くの得点をあげたベリンガムは、今シーズン、キリアン・エンバペの加入とともにレアル・マドリーではやや深めの位置でプレーしている。得点を挙げまくっているというわけではないが、ロス・ブランコスの主力であり続けており、常に守備にもビルドアップでも攻撃にも大いに関与していて、ボルシア・ドルトムントで名を上げたボックス・トゥ・ボックスの役割も果たしている。

    このことは、今回コビー・メイヌーがカーズリー暫定監督のプランに加われなくなり、中盤のポジションが空いたことの役に立つ。暫定監督のチームは、パーマーとベリンガムの2人ともに経験を積ませるチャンスがあるのだ。さらに、このことはサカの右ウイングのポジションに影響することはなく、パーマーは背番号10の、ベリンガムは背番号8の役割を果たすことになる。

    さらに先を見れば、カーズリー暫定監督、またはサウスゲートの後を正式に受け継ぐ監督は、フォーデンとジャック・グリーリッシュがつかみそこなっている代表での左サイドのポジションに、マルチプレーヤーのサカをシフトさせるのがよいと思うかもしれない。どちらにしても、目下のところフォーデンのキャップ数41で4得点8アシストの記録は彼のような能力をもつ選手にしては非常に物足りないもので、現状のままではフォーデンは蚊帳の外のように感じられる。

  • Phil Foden Cole Palmer England 2024Getty Images

    バランスを取る

    カーズリー暫定監督はすでに、ベリンガム、フォーデン、パーマーのうちの誰かひとりは、特にこのところの体調の問題に基づいて、このステージでは招集しないことになるだろうと認めている。

    「今このシーズンにおいては、あの3人がプレーした試合数や彼らが戻る先やこれまでの経緯を考えて、彼ら全員を同時に先発させないのは正しいと言えるだろうと思っている」と、3人全員をどうフィットさせるのかと尋ねられたカーズリー暫定監督は答えた。

    「彼らは現在、ケガから復帰したばかりかどうか、とか、出場時間がそれほど多くないのかといったことについて異なる段階にいる」と、暫定監督は続けた。「大事なのは、彼ら全員がピッチに立つ時はあるということで、我々はバランスのとり方を考えなければならない」。

    もちろん、ギリシャやフィンランドと戦うネーションズリーグがすべてではなく、また別の大会のサイクルが始まるわけで、多くの実験をする余地があるわけである。

  • England v Finland - UEFA Nations League 2024/25 League B Group B2Getty Images Sport

    「創造性豊かに」

    そうした実験において、イングランドの次世代のスーパースターの3人全員を先発させるというのも「あり」かもしれない。暫定監督は、しかるべき理由があれば3人を同時に起用することもできると信じているが、それにはいくばくかの「創造性」が必要だろう。

    「確かに、彼らをチームに入れる方法にトライし、見つけるべきだろう」と、トライしてみたいことはあるかと尋ねられた暫定監督は言った。「我々は創造性豊かなプレーができる。もし彼らがちゃんとプレー出来て、全員がチームのしかるべきポジションを獲得できれば」

    「多くの監督たちが、自分のチームにどれだけ良い選手がいるかを語ってきたが、だからこそ大変なんだと言いそうになってきた」と、暫定監督は続けた。「私はそれを嬉しい悲鳴だと考えている。問題はバランスを取ることだ。時には彼らのうちの誰かが出られないときもあるだろうし、ある大会を戦うのに、すべての試合で同じ先発メンバーというのはまずありえない」

  • Phil Foden England Euro 2024Getty

    のぼり坂の戦い

    クラブの状態とは関係なく、現在のフォーデンは外から中の様子を探っているように思われる。個人的には素晴らしいシーズンだった裏で夏の大会で活躍できなかったことは、彼に長く影響を及ぼすことになるかもしれない。なにしろ彼の直接の競争相手がチャンスをつかんだのだから。

    ベリンガムはEURO2024の期間が長いことにうんざりしているように見えた一方で、自分の中で何かを呼び起こし、代表のために3度のチャンスで実力を発揮した。グループステージ開幕戦でセルビアを倒した試合では決勝点を決め、ベスト16のスロバキア戦ではスペクタクルで断末魔のバイシクル・キックで同点ゴールを決めてイングランドを炎の中から救い出し、結果的には敗れた決勝のスペイン戦でもスリー・ライオンズの同点ゴールをアシストした。

    パーマーはピッチにいる時間はひどく短かったが、同じようにチームに貢献し、特に最大級の大会向きの選手であることを示した。チェルシーの新たなカリスマはドイツでは1試合も先発しなかったが、重要な時に起用され、準決勝ではオランダのDFを切り裂いてオリー・ワトキンスの決勝点をアシストし、ベルリンで行われた決勝では、誰にも止められないシュートをゴールネットに叩きこんで同点ゴールを決めている。

    一方、フォーデンはガレス・サウスゲートによって全試合で先発イレブンに選ばれながら、同じような感動の瞬間を提供しそうな気配がまったくなく、現実主義の前監督に変化を求める声が高まった。フォーデンは、左サイドのやや外れた位置で先発し、しばしばボールを探しに行くことを強いられ、得点もアシストもないまま、個人的にはフラストレーションの溜まる大会を終えた。

    これは、イングランド代表のユニフォームを着ているときの彼には、よくある話であった。フォーデンはクラブでやっているような活躍が代表でも出来る方法を見つけなければならない。さもなければお人よしの愚か者になってしまうだろう。