Chelsea must make their move & land Dean Huijsen(C)GOAL

ディーン・ハイセン:チェルシーは争奪戦に勝つべし。方向性を見失ったブルーズにとって有意義な移籍に

ディーン・ハイセンは、今夏最も注目される(飽き飽きするほどの)移籍騒動の渦中にある。プレミアリーグでの輝かしいデビューシーズンと、比較的低額な5,000万ポンド(約94億円)のリリース条項とが相まって、ボーンマスの中盤の要であるハイセンが欧州のビッグクラブの守備陣補強リストのトップに名を連ねているのだ。

その中には、人数は多いが評価の低いバックラインの刷新を数カ月以内に進めると見こまれるチェルシーも含まれている。ブルーズは、近年繰り返し問題となっているポジションに、高品質で長期的な解決策を手に入れようと躍起なのだ。

ブルーズは、来シーズンのチャンピオンズリーグの出場権獲得に向けて大いに奮闘しているが、アーセナル、リヴァプール、レアル・マドリーなども関心を寄せるこの若きスペイン代表の獲得に関して、なぜか最有力候補に立っており、この機会を逃すわけにはいかない状況となっている。

  • Chelsea FC v Newcastle United FC - Premier LeagueGetty Images Sport

    手当てが必要なエリア

    チェルシーの守備は、エンツォ・マレスカ監督の下で明らかに改善された。昨シーズン、プレミアリーグ時代で最多のリーグ戦での失点(63)を喫したブルーズは、今シーズンはわずか40失点に抑え、守備に関してリーグ4位の記録をマークしている。

    しかし、その新たに築かれた堅固さの要因として特定のDF個人の名を挙げるのは難しい。主にチーム全体の結束力の向上と、クラブ内でのシーズン最優秀選手賞の有力候補であるモイセス・カイセドが中盤で不断の働きをしてくれたおかげなのだ。

    実際、中央の守備ラインは現在、驚くほど不安定な状態にある。ウェズレイ・フォファナのケガの問題は継続しており、頼ることはできない。フリー移籍で加入したトシン・アダラビオヨも長期的な解決策とはなり得ないし、クリスタル・パレスへのレンタルから呼び戻されたトレヴォ・チャロバーは夏に再び放出されるかもしれない状態だ。レヴィ・コルウィルも、多くの人が期待していたレベルに達するにはまだ時間がかかりそうで、ブノワ・バディアシルと、アストン・ヴィラからレンタル移籍中のアクセル・ディザジがマレスカ監督の信頼を得ていないことは明らかだ。

    このエリアの不安定さは、フォファナの不在時にマレスカ監督が様々なセンターバックの組み合わせを試行錯誤している点にも表れている。監督は、ポゼッションをベースとするスタイルに必要な守備のセンスとボールを扱う能力のバランスが取れた選手を見つけるのに苦戦している。

    夏の移籍市場の終了後に、この6人の中からフォファナとコルウィルだけが残りそうだというのが現実的なシナリオで、このポジションにおける質の高い選択肢の必要性が浮き彫りになっている。ハイセンはバックラインを強化し、安定性と持続性を提供してくれそうだが、アカデミー出身のマルク・グエイやエヴァートンのジャラッド・ブランスウェイトへの関心も考慮すると、彼が唯一の補強選手ではない可能性も高い。

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  • AFC Bournemouth v Nottingham Forest FC - Premier LeagueGetty Images Sport

    エリートとしてのポテンシャル

    ボーンマスでのプレミアリーグのデビューシーズンで活躍したハイセンは、ボールポゼッションにこだわるマレスカ監督がセンターバックに求めるすべての資質を発揮している。プレスへの耐性やパスを選択する能力に優れ、チャンスが訪れた際には自信を持ってボールを前線に運んで攻撃を推進することができる。その代表例がスペイン代表のデビュー戦でのプレーで、オランダの守備を切り裂く完璧なパスを放ち、バルセロナのラミン・ヤマルの得点をアシストした。

    この若者は守備の基本も怠らず、地上と空中でのデュエルで優れた能力を発揮している(195cmの体格が役に立っている)し、タックルにも躊躇なく飛び込む。ハイセンは2025年にプレミアリーグで最も多くのインターセプトを記録(32)し、90分あたりのクリア数とブロックしたシュート数でも上位にランクインしている。『WhoScored』で、今シーズンのヨーロッパ5大リーグの21歳未満のセンターバックの中で最高の評価を受けているのだ。

    ハイセンは単なる一時的な補強とはならないだろう。20歳になったばかりでブルーズの若手獲得方針に合致しており、現在と未来の守備のリーダーとなるポテンシャルを秘めている。チェルシーがフォファナを見限るかどうかは不明だが、オランダ生まれでスペイン代表のハイセンは、フランス代表のフォファナのポジションを引き継ぐか、またはその隣でプレーする準備ができている。両足を使えるため、左右どちらのセンターバックでもプレー可能なのだ。

  • AC Monza v AS Roma - Serie A TIMGetty Images Sport

    モウリーニョが認めた

    当然ながら、チェルシーのサポーターの中には、ハイセンのような若手がチェルシーのようなビッグクラブの長期的な解決策にはなると確信できない者もいるだろう。特に、ブルーズの最近の、比較的まだ評価が定まっていないのに高額で獲得してきた新戦力の成績を考えれば、なおさらだ。

    しかし、そういう人たちも、ハイセンが2024年1月にユヴェントスからローマにレンタル移籍された際に大きなチャンスを与えた人物がジョゼ・モウリーニョであるという事実に、勇気づけられるかもしれない。モウリーニョは解任される直前の時期にこの決断を下したが、チェルシーの元監督として尊敬を集めるモウリーニョは、ハイセンのDFのポテンシャルについて一切の疑いを持っていなかった。

    「彼のことは皆がよく知っている」と、モウリーニョはハイセンのデビュー前に言った。「彼はセリエAで10分間しかプレーしていない18歳の少年だが、この年齢層ではヨーロッパのサッカーで最も質の高い若手選手のひとりだ。将来、偉大なサッカー選手になるだろう」。

    「彼は自分自身に大きな自信を持っている。セリエAの経験はないが、ポテンシャルの高い選手に典型的な自信を持っているのだ」。

    ハイセンは、モウリーニョの称賛について、『ガーディアン』紙で次のように語った。「監督とは短い時間しか一緒にいなかったが、本当に素晴らしかった。監督に機会を与えてもらったことは一生忘れない。監督は私を信じてくれた。あんな偉大な人物に信じてもらえるなんて、特に若手の選手にとって非常に特別なことだ。彼の言葉は本当に特別で、選手として自信を与えてもらった」。

  • Dean Huijsen Andoni IraolaGetty

    「今や誰もが気づいている」

    ローマがハイセンの完全移籍を断念した後、ボーンマスが昨夏に当時19歳だった彼を1,300万ポンド(約24億円)で獲得したことは、今や非常に賢明な取引だったことが明らかになっている。たとえ彼が南海岸でたった1シーズンしかプレーしなかったとしても、チェリーズことボーンマスは大きな利益を得たと言えるだろう。

    ボーンマスのアンドニ・イラオラ監督にはすぐに彼の能力がわかったという。「優秀な選手は最初のトレーニングでわかるものだ」と、監督は述べた。「オーラを感じ、すぐにその選手の資質が見える。契約した時まだ19歳だったからメンタル面がどうか分からなかったが、良い選手になりそうだと感じていた」。

    「ただ、最高の相手に対してすぐにパフォーマンスを発揮できるかどうかは分からない。それがプレミアリーグで直面する現実だ。だが、彼は初日からその能力を示した。確かフォレスト戦からシーズンをスタートさせたと思うが、連続出場を重ねるにつれ、今や誰もが彼が非常に優れたセンターバックだと気づいている」

    このDFの最大の長所について、イラオラ監督は次のように述べた。

    「彼のメンタル、頭脳だと思う。彼には自信がある。どんなFWのマークをするのも恐れないし、ボールを持った時も冷静だ。自分が何をしているか理解しており、コントロールしている。時には他の選手と同じようにミスをすることもあるが、彼がする行動には常に理由がある」

    「なにより、19歳という年齢でこのレベルでこのようなプレーができるのは、本当に滅多にないことだ」

  • Chelsea sporting directors Laurence Stewart Paul WinstanleyGetty

    過去の失敗を補う存在

    チェルシーでは、マレスカ監督や、オーナーであるトッド・ベーリーとクリアレイク・キャピタル、スポーツ・ディレクターのローレンス・スチュワートとポール・ウィンスタンリーに対する敵意が高まり、シーズンが進むにつれ、移籍市場で成功することが急務となってる。一部のファンが抗議のために街頭に繰り出す事態にもなっているのだ。

    昨夏の不可解な補強は完全に失敗だったと断言できる。高額移籍で加入したジョアン・フェリックスとレナト・ヴェイガはすでに他クラブに移籍し、ジェイドン・サンチョは期待外れ、キアナン・デューズバリー=ホールは出場機会を得られず、唯一成功と言えそうなのはペドロ・ネトだが、一貫性を欠くプレーが続いている。それなのに、クラブの首脳陣は実績のあるストライカーの獲得にまたしても失敗した。

    チェルシーは次回の移籍市場で成果を上げなければならず、6月初旬のクラブ・ワールドカップの前に獲得を目指すという噂のハイセンと契約できれば、再び忙しくなるであろう移籍市場の完璧なスタートとなり、軌道を外れたプロジェクトへの信頼を回復させるだろう。

  • DEAN HUIJSEN BOURNEMOUTH Getty Images

    激しい獲得競争

    もちろん、移籍市場が再び開いた際にチェルシーがすべてを思うままにできるとは限らないだろう。ハイセンの5,000万ポンド(約94億円)のリリース条項は獲得の好機のように見えてきた上、彼の素晴らしいシーズンはプレミアリーグと欧州のビッグクラブの注目を集めている。

    イングランドではアーセナル、リヴァプール、ニューカッスルが興味を示していると報じられており、ハイセンがアカデミー時代に入団を断ったレアル・マドリーやバイエルン・ミュンヘンも海の向こうから状況を監視しているとされる。

    ハイセンはレアル・マドリーのレジェンドであるセルヒオ・ラモスを崇拝しており、最近レアル・マドリーが関心を寄せていると尋ねられた際、次のように答えた。「分からない、なるようになるだろう。レアル・マドリーは大きなチームだ。選手は誰だって、できる限り最高レベルでプレーしたいものだよ」。

    うわべだけ見れば、チェルシーが獲得競争にひどく苦戦しているように見えるのも無理はない。とりわけ、チャンピオンズリーグの出場権を争う5チームによる過酷な最終戦が控えているから、なおさらだ。

  • Chelsea FC v AFC Bournemouth - Premier LeagueGetty Images Sport

    チェルシーは優位か

    しかし、そんな逆境をものともせず、今の早い段階でチェルシーがリードしているという報道がある。ハイセンが彼らからのオファーを「真剣に」検討しているためで、そのオファーには7年契約が含まれていると言われる。『テレグラフ』紙によると彼はチャンピオンズリーグ出場にこだわらない可能性もあるという。

    チェルシーがこのDFに長く関心を持ってきたことと、彼のエージェントとの関係が強いことが有利に働くかもしれない。スタンフォード・ブリッジで即戦力として起用される可能性も高く、これは、ほぼすべての移籍ライバルが当初から約束することはできない点である。

    レアル・マドリーは別のDFの獲得を狙っているかもしれないと言われているし、資金を他の用途に回す可能性が高いとされている。また、当のハイセンがプレミアリーグに居続けたいと思っているとの報道もある。

    いずれにせよ、チェルシーは移籍市場で早期に存在感を示す好位置に立っており、5,000万ポンド(約94億円)という金額を考慮すれば、バックラインの再建を迫られる状況下でこのチャンスを逃すわけにはいかない。即戦力としてだけでなく、ハイセンはブルーズの守備のリーダーとして数年先までチームを支える存在となる可能性があるのだ。