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ブンデスリーガ日本人選手の2021-2022シーズン展望。長谷部誠&鎌田大地、原口元気&遠藤渓太、遠藤航、奥川雅也、浅野拓磨、伊藤洋輝、田中碧ら

ブンデスリーガに精通するジャーナリスト、遠藤孝輔氏がブンデスリーガでプレーする日本人の2021-2022シーズンを展望する。

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    長谷部誠(フランクフルト)

    参戦15シーズン目の節目を迎えた日本の、いや、ブンデスリーガの“生けるレジェンド”だ。同リーグ通算340試合出場はアジア人最多記録で、外国人全体では歴代7位に相当する。これを上回る現役の外国人選手はロベルト・レヴァンドフスキ(350試合)ただひとり。両雄が歴代2位のナウド(358試合)を追い抜くのは時間の問題になっている。

    30代半ばから定着していたリベロだけでなく、6番(守備的MF)でも依然としてクオリティの高いプレーを披露した昨季はチーム5位の29試合出場。トレーニングに全力で臨み、日々の健康管理も怠らないリーグ最年長選手は、今季もその年齢を感じさせない溌剌とした姿を見せてくれるはずだ。試合の流れや状況に応じた円熟の守備やパスも必見だ。

    候補に挙がっていたキャプテンには就任しなかったものの、引き続きチームを統率するリーダーの役割も求められる。新主将のセバスティアン・ローデ不在時など腕章を巻く機会も少なくないだろう。個人的には、現地メディアやチーム関係者が毎年のようにつける“例え”(「熟せば熟すほどいいワインのよう」など)も密かに楽しみにしている。

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    鎌田大地(フランクフルト)

    2020-21シーズンにリーグ3位の12アシストを記録した鎌田は、フランクフルト攻撃陣に欠かせないキーマンだ。いまやミランなどビッグクラブ行きの噂もあがる注目株であり、移籍情報サイト『transfermarkt』算出の市場価格は2500万ユーロ(約32億5000万円)に及ぶ。フランクフルトでは3500万ユーロ(約45億5000万円)のフィリップ・コスティッチ、2800万ユーロ(約36億4000万円)のDFエヴァン・エンディカに次ぐ高額査定だ。

    充実一途のその25歳が突如としてスランプに陥るとは考えにくいが、大きなポイントになるのが新戦力とのコンビネーションだ。自身とホットラインを築いていたアンドレ・シウヴァが退団し、チームの前線にはコロンビア代表のCFラファエル・ボレ、ノルウェー代表のウインガーであるイェンス・ペッター・ハウゲなどが加わった。正確なラストパスやプレースキックを武器に、彼らの良さを引き出せるか注目だ。昨季「5」だった自身の得点数を増やすためにも、新たなチームメイトたちとの相互理解を深めたい。

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    遠藤航(シュトゥットガルト)

    全6試合に先発出場した東京五輪で溜まった疲労は容易に想像できる。それでもほとんどオフを取らずに、ブンデスリーガ開幕を目前に控えるチームに合流した。コンディションの不安がどうしても付きまとうが、裏を返せば、不安らしい不安はそれくらい。ペッレグリーノ・マタラッツォ監督から新主将に任命された今季は、チームにとってこれまで以上に欠かせない存在となりそうだ。指揮官からは「重要なのはキャプテンが我々の価値観を体現し、模範としてチームを牽引できる人物であることだ。航を選んだのは、他の選手のためにも責任を負える存在だからだ」と全幅の信頼を寄せられている。

    リーグトップのデュエル勝利数を記録した昨シーズンは、累積警告で欠場の1試合を除く全33試合に出場。抜群の危機察知能力でカウンターの芽を潰せば、丁寧なショートパスで攻撃の起点にもなった。今後も役割自体は変わらないはずだが、相手からの警戒が強まるのは間違いない。その試練を乗り越え、チームを高みに導く存在となれるか。

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    原口元気(ウニオン・ベルリン)

    あのスーパーゴールを見せられたら、新天地ウニオン・ベルリンでの躍動を期待せずにはいられないだろう。7月31日のアスレティック・ビルバオ戦で途中出場すると、74分に胸トラップから右足を一閃。GKもノーチャンスの強烈弾を突き刺した。ドイツメディアに語った「もう一度、自分のクオリティを見せたい」という思いを乗せたような一撃だった。昨季のハノーファーで9ゴール7アシストを決め、多くの識者から「2部屈指のアタッカー」と評されていた原口に対する期待はさらに膨れ上がったかもしれない。

    本人にとっては2018-19シーズン以来となる1部再挑戦だ。かつて所属したヘルタ・ベルリンではサイドでの起用が多かったものの、ハノーファーではトップ下をメインに中盤センターで異彩を放った。新天地での起用法はまだはっきりしないものの、攻撃で違いを作り出す一方で、守備の仕事も精力的にこなす原口は戦術に幅をもたせるはず。エース格のマックス・クルーゼとどんなハーモニーを奏でるか楽しみだ。

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    遠藤渓太(ウニオン・ベルリン)

    怪我による出遅れを余儀なくされた加入1年目とは異なり、プレシーズンの日程を順調に消化。左サイドハーフや左ウイングでの先発出場が多かったテストマッチを経て、今季初となった公式戦のDFBポカール1回戦でメンバー入りした。1年のレンタル期間が満了し、横浜F・マリノスから完全移籍を果たした遠藤に、ウニオン・ベルリンのオリヴァー・ルーネルトSDは「意欲的で、強い決意があり、とても有能だ」と太鼓判を押す。

    チーム内での競争が熾烈で、常時スタメンとはいかないかもしれないが、今季のウニオンは新設のUEFAカンファレンスリーグに出場する。ブンデスリーガとのハイレベルな両立を実現するには、質の高いターンオーバーが必須だ。リーグ戦4試合のスタメンにとどまった昨シーズンより、遠藤の出番は少なからず増えるはずだ。切れ味鋭いドリブルや献身的な守備はそのままに、ゴールやアシストという目に見える結果が求められる。

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    奥川雅也(ビーレフェルト)

    堂安律やアンドレアス・フォグルサマーが退団し、攻撃力の低下が危惧されるビーレフェルトの前線にあって、大きな期待を寄せられているのが奥川だ。ブンデスリーガ公式サイトがシーズンプレビュー記事のトップにこの日本人の写真を設定したように、その注目度も決して低くない。フランク・クラマー監督からは「雅也は非常に知的かつ勤勉で、強力なプレーヤーだ。中盤からゴールの脅威を生み出せる」と評価されている。

    ザルツブルクからレンタルで加わった昨季は、ブンデスリーガ13試合に出場し、1ゴール2アシストを記録した。アタッカーの数字としては物足りなくも映るが、サイドハーフやウイング、インサイドハーフと様々なポジションをソツなくこなし、1部残留に小さくない貢献を果たした。その活躍が今夏の完全移籍につながったのは言うまでもない。

    DFBポカール1回戦では4-3-1-2のトップ下で先発出場し、正確なCKで決勝点となる4点目をアシスト。その質の高いキックやスピーディーなドリブルを武器に、ブンデスリーガでも序盤から攻撃陣を牽引するだろう。昨季の堂安が記録した5得点以上に期待だ。

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    浅野拓磨(ボーフム)

    今年5月にパルチザンとの契約を解除し、翌月にボーフム加入が決定。ブンデスリーガ参戦はハノーファーに所属した2018-19シーズン以来となる。背番号10を託された事実からも窺えるように、期待されるのは中心選手としての活躍だ。今季初の公式戦となったDFBポカール1回戦でさっそく先発出場と、昨季の2部王者に新風を吹き込んでいる。

    予算も戦力も限られるボーフムにとって、セルビアリーグで18得点を叩き出した浅野はそれこそ補強の目玉。セバスティアン・シンジーロルツSDがクラブ公式サイトを通じて「攻撃的なポジションでフレキシブルにプレーすることができる。そして得点力が高い」と紹介したとおりの姿を見せ、シーズン目標の1部残留に貢献したいところだ。

    主戦場は4-2-3-1の右ウイングが濃厚で、1トップを張るエースのジモン・ツォラー、左利きのパサーであるエルヴィス・レジベツァイとの連係が飛躍のカギになるか。縦関係を築くコスタリカ代表の右SB、クリスティアン・ガンボアとの崩しにも注目だ。

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    伊藤洋輝(シュトゥットガルト)

    ドルトムントで香川真司やレヴァンドフスキ、そしてシュトゥットガルトでは遠藤航などを発掘した敏腕SD、スヴェン・ミスリンタートの目に留まった22歳のCBが大きな驚きを提供するかもしれない。今夏にジュビロ磐田からのレンタル移籍(買い取りオプション付き)が決まった際は、4部所属のセカンドチームで場数を踏むと目されていた。だが、トップチームのプレシーズンキャンプに帯同すると、マタラッツォ監督へのアピールに成功。DFBポカール1回戦でいきなり先発デビューを飾ったのだ。

    体調不良で欠場したヴァルデマール・アントンの代役を務めた格好だが、同じ左利きのCBで、今夏に退団の可能性があるマルク=オリヴァー・ケンプフが抜けた場合は、伊藤がこのまま3バックの一角に収まってもおかしくない。少なくとも「まずはハードワークしてブンデスリーガでプレーする機会を得たい」(クラブ公式サイト)と口にした目標は早々に達成できそうだ。J2からブンデスリーガへ、シンデレラストーリーが始まる。

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    注目枠:田中碧(フォルトゥナ・デュッセルドルフ)

    2部とはいえ、東京五輪の活躍で注目を集める田中碧。川崎フロンターレからレンタル移籍(買い取りオプション付き)したドイツ2部のデュッセルドルフでは、中盤の要になる可能性を秘めている。ボールを正確に止め、しっかりと味方につなげる技術は、ポゼッションを大事にするクリスティアン・プロイサー新監督から重宝されるだろう。海外初挑戦ゆえの難しさもあるかもしれないが、欧州屈指の日本人コミュニティが存在するホームタウン、日本人の母を持つMFアペルカンプ真大や日本人スタッフが所属するクラブの環境は、適応するための追い風になりそうだ。

    新生デュッセルドルフはここまで4-1-4-1と4-4-2を採用しており、田中は中盤センターでの起用が濃厚。3もしくは2枠を巡り、まずは定位置の確保が目標となる。進境著しいアペルカンプ、副キャプテンを務めるマルセル・ゾボットカ、1部経験も豊富なレフティーのエドガル・プリプ、ポーランドU-21代表歴を持つヤクブ・ピオトロフスキとライバルは少なくないが、そうした個性豊かなタレントとの切磋琢磨がむしろ成長スピードを加速させるかもしれない。

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