■まず大宮vs東京V、その勝者と横浜FC
25日の1回戦・大宮アルディージャvs東京ヴェルディを皮切りに、ついにJ1参入プレーオフがスタートする。
J1ライセンスを持たないFC町田ゼルビアがJ2・4位に入ったため、1回戦は5位・大宮と6位・東京Vの一戦のみとなり、勝者が2回戦で3位・横浜FCと対戦。さらにその勝者がJ1参入を懸けてJ1・16位のチームと対戦することとなる。本稿ではJ2から参加する3クラブ、そしてJ1から参加する可能性のあるクラブの状況を分析し、史上初の試みとなるカテゴリーをまたいだプレーオフの行方を展望したい。
■5位・大宮アルディージャ
ホーム開催権も獲得。2連勝で流れは良い
勝ち点71、得失点+17/直近5試合の戦績△●△〇〇
まずは1回戦の対戦カードをホームで開催する大宮。リーグ最終節ではファジアーノ岡山を相手に数的不利の中で1-0の勝利を収め、逆転でプレーオフに滑り込んだ。さらに町田が4位に入り、東京Vとアビスパ福岡が揃って引き分けたことによりホーム開催権も獲得。2連勝でリーグ戦を終えたことも含め、良い流れに乗っている。
特徴的なのは、勝利だけが必要なリーグ終盤戦で割り切った戦い方に舵を切り、攻撃ではボールを素早く前に運ぶこと、守備では前からの圧力をさらに高めることで結果につなげている点。アグレッシブな戦い方によって停滞感を打破してプレーオフに臨めることは、短期決戦において少なからずプラスだろう。
本来の戦術的には堅実なビルドアップと安定した守備がベースだが、プレーオフでは前がかりな姿勢を継続する可能性が高い。リーグ最終節では出場停止だった切り込み隊長・マテウスが戦列復帰することも大きく、アグレッシブな戦いを表現し切ることに集中して臨むことになりそうだ。
不安要素があるとすれば、現在の戦い方と引き分けでも次のラウンドに勝ち上がれる1回戦のレギュレーションの相性か。2回戦以降の勝つしかない状況との相性は悪くないだけに、1回戦での中途半端な戦いだけは禁物。チームを率いる石井正忠監督の手綱さばきに注目したい。
■6位・東京ヴェルディ
勝利必須。離脱者は多いが、チームで戦う
勝ち点71、得失点+15/直近5試合の戦績〇△●〇△
東京Vは1回戦ではアウェイ・NACK5スタジアムに乗り込むこととなる。リーグ最終節の引き分けによって6位に順位を下げたが、町田との上位決戦で先制点を奪い、ギリギリの好勝負を繰り広げた結果のドローだけに、悪いイメージはない。むしろどこが相手でも互角以上に戦えることを証明したとも言える。
1回戦の相手である大宮とは対照的に、シーズンを通して安定感を継続した流れのままプレーオフに臨むことになる。爆発力という点には欠けるかもしれないが、どんな状況でも崩れずに際どい勝負に持ち込む力は、一発勝負のトーナメント戦において重要な要素だ。勝たなければいけない試合が続くことになるが、堅実な試合運びから1点を奪い切る戦いも不得手ではない。
攻撃陣に負傷離脱者が多く、ドウグラス・ヴィエイラや藤本寛也、泉澤仁といったJ2屈指のタレントたちが欠場している中、リーグ最終節では奈良輪雄太、林陵平らの活躍によって1点と勝ち点1をもぎ取った。離脱者の多さはネガティブな要素だが、チームとしてカバーする力もある。井上潮音、渡辺皓太ら若手たちが一発勝負の舞台でさらなる輝きを放てるかも含め、プレーオフ勝ち抜きのカギは“総力戦”となりそうだ。
■3位・横浜FC
2回戦から登場。最も勢いに乗る
勝ち点76、得失点+19/直近5試合の戦績△〇〇〇〇
2回戦から登場する横浜FCは、J1参入プレーオフに進出したJ2チームの中では最も勢いに乗っていると言っていい。4連勝でレギュラーシーズンを終え、最終的な勝ち点は2位・大分トリニータと同じ『76』。得失点差によって惜しくも自動昇格は逃したが、リーグ終盤戦で大きなインパクトを残したチームだ。
もともとイバ、レアンドロ・ドミンゲスというハイレベルな外国籍選手が武器のチームだったが、イバの出場停止を受けて出場した戸島章が出色のパフォーマンスを見せて勝利に貢献し、リーグ最終節・ヴァンフォーレ甲府戦で決勝点を決めた齋藤功佑も試合ごとに存在感を増している。甲府戦で負傷交代したレアンドロ・ドミンゲスの状態は気がかりだが、タヴァレス監督の用兵次第ではピンチもチャンスに変えられるだけの選手層となった。
ただ、勢いのままにリーグ終盤戦を駆け抜けてきただけに、ここに来ての1週間のブレイクが吉と出るか凶と出るか。2014シーズンのジェフユナイテッド千葉が同様のシチュエーションとなったが、決勝戦(当時はJ2チームのみでプレーオフを開催)で準決勝から勝ち上がったモンテディオ山形に敗れている。リズムや試合勘といった数字には表れない面での調整の難しさはあるだろう。
1回戦と同日の25日に川崎フロンターレとの練習試合を組んでおり、そこでどれだけ実戦に近いシミュレーションができるかは大きなポイント。現時点での勢いを考慮すれば最もJ1昇格(=J1チーム相手の勝利)の可能性が高いチームであることは確かなだけに、準備期間での調整に細心の注意を払いつつ、勝ち抜きを目指したい。
■混戦J1。16位は…まったく先の読めない状況

J1では18位・V・ファーレン長崎のJ2降格が決定し、17位に柏レイソル、J1参入プレーオフ出場圏の16位に名古屋グランパスが位置している。ただ、名古屋と同勝ち点に15位・サガン鳥栖、14位・湘南ベルマーレもおり、まったく先の読めない状況となっている。
そのさらに上のジュビロ磐田、ヴィッセル神戸、横浜F・マリノスも数字上は16位の可能性を残すが、ここでは柏から名古屋までの4チームの現状、そしてそれぞれがプレーオフに進出した場合の展望を記していきたい。
■17位・柏レイソル
監督交代後の2試合でどう変わるか
勝ち点33、得失点-12/直近5試合の戦績●〇●●●
わずかにプレーオフ進出の可能性を残す柏は、残り2試合のタイミングで加藤望前監督を解任し、岩瀬健監督にすべてを託した。出口の見えない不調に陥っていただけに、現場のトップを変える判断は致し方ないだろう。もともと質の高いタレントを揃えているチームだけに、さまざまなハードルを越えてプレーオフまでこぎ着ければ、個人能力を前面に押し出してJ2チームを押し切る戦いも視野に入ってくる。
■16位・名古屋グランパス
リーグ後半戦で引き分けゼロ。まずは失点減を
勝ち点37、得失点-8/直近5試合の戦績〇●●〇●
一度は7連勝で大きく巻き返した名古屋だが、第26節以降は2勝しか挙げられずに残留争いから抜け出せずにいる。リーグ後半戦では引き分けがゼロと勝敗がハッキリしている点は、引き分けでも残留の決定するJ1参入プレーオフ決定戦に向けては不安要素。柏と同様にプレーオフでは個人のパワーで上回ることも考えられるが、失点を抑えられなければ番狂わせを許してしまう可能性も残るだけに、失点減が残留へのカギとなりそうだ。
■15位・サガン鳥栖
金明輝監督就任後、浮上の兆し勝ち点37、得失点-6/直近5試合の戦績●●〇〇△
10月の段階でマッシモ・フィッカデンティ前監督との契約を解除し、金明輝監督が就任。就任後のリーグ戦3試合で2勝1分と浮上の兆しを見せている。リーグ最少の24得点ながら、失点もリーグ4位の『33』。J1参入プレーオフに進出することになっても、守備をベースに粘り強く戦える点は、引き分けOKのレギュレーションでは大きなアドバンテージとなる。
■14位・湘南ベルマーレ
好ゲームが多く、大崩れはしないか勝ち点37、得失点-6/直近5試合の戦績〇△●△●
JリーグYBCルヴァンカップを制した湘南だが、ここ4試合で未勝利が続く。ただ、内容的に大きく劣っているわけではなく、むしろ好ゲームが多い。鳥栖と並ぶ10分けを記録していることからも分かるように、簡単に敗戦を喫するようなチームでもない。J1参入プレーオフを戦うことになれば、J2時代から所属する選手が多く、J2チームの戦い方をよく知っている点はプラスに働く可能性が高い。
かつてないほどの大混戦からJ1参入プレーオフに進出した横浜FC、大宮、東京Vによる生き残りを懸けた戦いの先に、過去最高レベルの残留争いから1チームが“門番”として立ちはだかる今大会。歓喜と絶望が交錯するトーナメントは、25日13:00キックオフの1回戦・大宮vs東京Vからスタートする。
文=片村光博
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